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2014.12.01

試し読み

第三回 どうして土器に縄の模様をつけたのですか?

菅 広文

第三回 どうして土器に縄の模様をつけたのですか?

ロザンの菅広文さんが書いた『京大芸人式日本史』の進撃が止まりません! 受験生はもちろん、「日本史を学び直したい」と思っている大人の読者からも、「面白かった!」「日本史の流れがわかった!」との声が届いています。続々重版を記念して、本書から一部抜粋してお届けします! まだ読んでいない人のために、ちょこっと公開。まずは、とにかく読んでみてください!

 

 宇治原に言われたとおり、僕はタイムマシーンを大森貝塚に設定して目的地に着いた。
 宇治原に騙された。
 降りてみて思い出した。貝塚は、今で言うところのゴミ捨て場だった。自分の無知と宇治原を呪った。
 しかし、ゴミ捨て場があるということは、人が住んでいるということだ。

〝その人〟を探し始めると、目的の家はすぐに見つかった。家の前に縄が大量にあったからだ。
 この時代の特徴的な建物である竪穴式住居と呼ばれる、土を掘っただけの、若手芸人でも住まないような穴の中に入ると、毛むくじゃらの男が石を削って石器を作っていた。教科書で「磨製石器」と習った、アレだ。

 僕は毛むくじゃらの男に話しかけた。
「すみません」
 毛むくじゃらの男が振り返った。
 僕は毛むくじゃらの男に話しかけた。
「すみません。ちょっとだけいいですか?」
 男は警戒することもなく、笑顔で応えた。毛だらけの口元から口が出てきた。
「なんですか?」
 僕は用意してきた質問をその男にぶつけた。
「ちょっと聞いたんですけど」
「はい?」
「……あなたは、初めて土器に縄の模様をつけた方ですか?」
 男は満面の笑みで答えた。
「そうですよ」
 探していた人物に、簡単に巡り合えた。

 僕は率直な質問をぶつけた。
「なんで土器に縄の模様をつけようと思ったんですか?」
 縄文土器には縄の模様が施されていると教科書で習ってはいたが、《なぜ縄の模様をつけたか?》は定かではなかったので、それが知りたかったのだ。
 すると、意外な答えが返ってきた。毛むくじゃらの男がまくし立てた。
「みんなの土器と一緒になった時に、自分の土器がどれか分からなくなるんですよ。だから自分の土器がどれか区別するために縄で模様をつけたんですよ。そしたら周りのみんながそれいいじゃん! ってなって、みんな縄で模様をつけるようになってしまってね。結局、自分の土器がどれか分からなくなってしまったんですよ。はっははは」
 男は爆笑していた。
 この時代は争いごとが無いと教わったが、この男を見て、なんとなく納得出来た。

 なぜこの時代に争いごとが無かったのか? 僕は考えてみることにした。
 集団でイノシシやシカを捕まえていたからではないだろうか? イノシシやシカを一人で捕まえることは、当然ながら不可能だろう。大勢で捕まえたはずだ。だから、仲間同士の仲の良さが必要なのだ。
 実際どのようにしてイノシシやシカを捕まえたのだろうか? 落とし穴などの罠でも作ったのだろうか?
 突然、ある不安が生じた。
「僕の先祖は、宇治原の先祖が作った罠に落ちてはいないだろうか?」と心配になったのだ。
「うわあ。菅また落ちてるやん!」と、罠の上から宇治原の先祖になじられていないだろうか?
 僕の先祖が罠にかかったシカを可哀そうだからと逃がしてしまうと、「その行為は、普段ちゃんとシカが獲れてるやつがやる行為や」と宇治原の先祖から冷静に説教されてはいないだろうか?
 だんだん宇治原に腹が立ってきた。
 他にも僕の先祖に対して心配ごとが出てきた。
 動物を運ぶ時は周りに迷惑をかけていなかっただろうか? たぶん僕の先祖のことだから、イノシシやシカをみんなで運ぶ時は、「必死で運んでいますよ」の顔をしていたに違いない。そんなに力を入れてないのに。しかも、イノシシやシカを運ぶ前に、顔を水で濡らして、「汗かいていますよ」の感じも出したに決まっていた。
 しかもそれが、「菅のお得意芸」として仲間達にばれているようにも思えた。

 前脚担当の男「菅! もっと力入れろ。右脚だけ下がっている」
 菅の先祖「すみません。このイノシシ、左脚に比べて、右脚だけめちゃくちゃ重いと思うんですよ」
 前脚担当の男「そんなイノシシおらんわ。脚の重さが違うかったら、歩いたらグルグル回ることになるやろ?
それに比べて宇治原見てみ! ちゃんと左脚持っているやろ?」

 こんな会話がされていたに違いないと思った。
 宇治原の先祖は、やはり頭が良くて「イノシシを運ぶ時に、手が滑らない手袋らしきもの」を手にはめてイノシシを運んだのではないだろうか?
 またもや宇治原に腹が立ってきた。
 考えても腹が立つだけなので僕は気を取り直して、毛むくじゃらの男に話しかけた。
「でもあなたが土器に縄で模様をつけたおかげで、未来では、この時代のことを《縄文時代》と呼ぶようになるんですよ」
 男は嬉しそうに言った。
「えーそうなんですか。超すごいじゃないですか! いやあ嬉しいなあ。あ、そうだ」
 男は立ち上がり、あるものを僕に手渡した。
「よかったら、どうぞ。帰りに何か嫌なことがありませんように」
 手渡されたものを見てみると、教科書でよく見たことのあるものだった。
 土偶(人の形をしている。ただ幼稚園児が粘土でアンパンマン作ったぐらいのレベル)だ。
 この時代の人々の暮らしは、天候に左右されることが多く、呪術などのいわゆる《神頼み》をすることが多かった。土偶はその中の1つで、女性の体を象(かたど)ったと言われている。
 男は小声で僕に言った。
「これ、うちのかみさんの体なんですよ」
 僕は思った。
 やはり《かみ頼み》をしているようだ。
 僕は過去のものを現代に持ち帰ってはいけないことを伝え(本当は形が気持ち悪かっただけ)、この時代をあとにした。
 次に行くところは決まっていたし、次に会いたい人物も決まっていた。
 もう1つ決めたことがあった。
 宇治原が決めたところには行かないことにしよう。
 

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