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2014.10.23

「ひどい家族とステキな家族のあいだ」

第1回 悲惨な話が笑えるのはナゼ

沖田 ×華/荻上 チキ

第1回 悲惨な話が笑えるのはナゼ


10月23日に「蜃気楼家族」シリーズ4巻を刊行した沖田×華さんと、沖田さんの作品を以前から愛読していたという荻上チキさん。顔合わせは2回目というお二人に、「家族って?」「家族のつながりって?」といったテーマでお話をうかがいました。サンプルはもちろん、悲惨なエピソード満載の沖田家。ひどい話なのに笑えてしまう謎にも、荻上さんが鋭く迫ります。            (構成:幻冬舎plus編集部 撮影:植一浩)

 

生きづらさ云々以前にサバイバルな沖田家と、その周辺

荻上チキ(おぎうえ・ちき) 1981年生まれ。評論家・編集者。「シノドス」編集長。

荻上 そもそも僕が沖田さんの本を読むようになったのは、友人の作家・大野更紗さんがきっかけなんです。彼女の家に僕、たまに遊びに行くんです。確か、最近買った本の話とか、おいしかったお菓子の話とか済ませて帰るとき、「この本をチキさんに貸してあげますよ」と言って、突然『ニトロちゃん みんなと違う発達障害の私』を持ってきた。当時、ほとんど絶版状態で手に入りにくかったこともあったんだけど、「貸してあげます」と一方的に押しつけられた。

 で、読んでみたらすごく面白くて、すごくひどい話だった。衝撃を受けて、これは他のも読まなきゃなと、沖田さんの単行本を全部一気に買って、読んで、あちこちで推薦して。僕はEテレで福祉をコンセプトに作っていた番組でレギュラー出演していて、僕が企画を考えるコーナーがあった。「じゃあ今回は〝当事者漫画〟という切り口で、沖田さんに会いに行きたい」という話をスタッフにして、沖田さんに取材に伺ったと。一方的なラブコールですね。

沖田×華(おきた・ばっか)1979年富山県生まれ、漫画家。高校卒業後、看護学校に通い、22歳まで看護師として病院に勤務。その後、風俗嬢(ソープ以外の全業種制覇)になって富山、金沢、名古屋で働く。


沖田
 いえ、とんでもないです、本当に。あの時ビックリしちゃった(笑)。

荻上 あちこちで書評も書いたりしていたんですけど、そのあと『ニトロちゃん』が文庫化されましたね。

沖田 そうなんですよ。今ちょうど4刷目ですかね。
 

荻上
 おお〜。

沖田
 わりに頻繁に刷ってくれるので、前よりもいろんな人に読んでもらえてるのかな、とは思います。

荻上 書評がきっかけで、文庫の帯文をご依頼いただいて、あれは本当に嬉しかったですね。やっぱり好きになった本で、自分の書いたものが少しは文庫化のお役にも立てて、なおかつ帯を書かせていただくというのは。見本が届いたとき、ニヤニヤしちゃいましたもん。

沖田 嬉しい(笑)。でもあの本、もともと単行本の刊行が2010年で、「まったく笑えない本を描いてくれ」と光文社さんに言われて描いたもので、心配だったんです。漫画は娯楽の一つだと思ってて、暇つぶしとか、気晴らしで笑えるとか得るものがあれば、描き甲斐があると思ってやってたんですけど、最初から最後まであんなイジメでグジャグジャの内容で、いいのかなあって。

荻上 そうですね。作中では、ボロボロに痛めつけられていますよね。

沖田「私が整形いっぱいしまくった話とかあるんですけど、そのほうがウケると思うんですよ」とか抵抗したんですけど、「いえ、笑いはいらないんで」と言われて。気が進まないまま結局、「あーあ、思い出したくない」とか言いながら描いてました。

荻上 エピソードのストックが過剰ですよね(笑)。といっても沖田作品の魅力は、深刻なだけの話じゃない。「社会派」とかではないし。でも逆に、ギャグの中にマジなエピソードというか、どう言葉にしたらいいかわからないような話があって、それがまた印象に残る。「笑い」っていう感情は、時に悲しみを昇華させるというか、「こんなことに遭っちゃった、ヘヘヘ」みたいな感じで、次に進むためのステップだったりするじゃないですか。でも消え去るわけではなく。読むほうもなかなか昇華し切れないようなエピソードがパーンと入ったりすると、すごく印象に残りますよね。『蜃気楼家族』でもやっぱり稀にガチなやつが入ってくる。近所のおばあちゃんが認知症になった話とか。

最新4巻。オビには「まさかお母さん殺された!? 絶対絶命の修羅場の果て!」の文字が…

沖田 そうですね。そのばあちゃんは正月にコタツで独りで死んじゃってたという。

荻上 あとは4巻の最後だと、弟と一緒に逃げた謎の男の子が、互いの幸せを願って別れよう、みたいないいセリフを弟に言う。めっちゃいいセリフなんだけど、実際には脅して乗り込んだトラック運転手のちんちんにハサミをあてながら言っている。緩急があまりにすごいなと思うんですけど。

沖田(笑)

荻上 ああいうエピソードは、読者が油断してるときにガンッと脳の中に入ってくるので、忘れ難い。
 


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