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2014.10.16

鮮やかな絵とともに展開する
壮大なドラマ

北上 次郎

鮮やかな絵とともに展開する<br />壮大なドラマ

『ギフテッド』山田宗樹
小社刊/定価1700円(税別)

 それにしても『百年法』はすごかった。原爆が六発投下されて終戦を迎えたもう一つの日本を舞台に、アメリカ発の新技術が導入され不老不死社会が実現した時代を描く長編で、読み始めたらやめられない超面白小説だった。のちに日本推理作家協会賞を受賞したこの小説については今さら紹介するまでもないが、もう少しだけ書いておくと、不老不死社会が実現すると新しい血が社会に入ってこないという問題があるので、新陳代謝を促すために百年後には死ななければならないという制限法が出来る。それが百年法で、それを拒否するとアメリカ、中国、韓国では死刑。では日本ではどうなるかというわけで、その百年が迫ってきた二〇四八年から始まったのが『百年法』であった。この設定だけでも面白いが、ここから物語をどう転がしていくかという展開がなによりも素晴らしかった。『百年法』の素晴らしさを語る場ではないのでこれ以上は控えるが、その『百年法』から二年、ついに新作の登場だ。いや、その間に『いよう!』(いい装丁だった)が出ているから、あれからずっと山田宗樹の作品がなかったわけではないが、『百年法』のような小説をまた読みたいではないか。そういう読者はすぐさま本書を手に取られたい。さあ、お待ちかね、『ギフテッド』だ。

 事の発端は、アメリカで十三歳の少年の腎臓に奇妙な腫瘍が見つかったこと。摘出して分析するとこれまでの悪性腫瘍でも良性腫瘍でもなく、何らかの機能を有している可能性があるとの仮説を立てて、その病院の医師が「機能性腫瘍」と名付けて医学誌に発表する。さらに別の研究グループは「機能性腫瘍とは、人類が新たに獲得した未知の臓器にほかならず、人類が飛躍的進化の時期に入りつつある証拠である」との説を立てる。そして機能性腫瘍を有する子どもにギフテッドという名称が使われ、そのギフテッドを保護育成する制度が各国で導入されるのが次の段階で、ギフテッドが集められた日本の小学校の話からこの物語が始まっていく。

 いや、実際の始まりは、法定検査でギフテッドと認定された小学六年の達川颯斗が普通の小学校に通っているところから始まっていると書かなければならない。達川颯斗はそこで化け物扱いされ(超能力で地震を起こした「奇跡のギフテッド」というのが彼に付けられた異名だ)、ギフテッド児童を集める学校に転校してくるのだ。クラスメイトは、向日伸、村山直美、坂井タケル、上岡和人、辰巳龍。ここから始まるのはちょっと変わった全寮制の学園の日々だ。

 ギフテッドには超能力があると言い張るのは村山直美(名前は女性みたいだが、小学生にしては骨太で筋肉が発達している大柄の男の子)で、それを証明するために寮の屋上から飛び下りてしまう。空を飛べるはずだと彼は言うのだが、そのまま地上に落下して骨折。「飛べると思ったんだけどなあ」と村山少年は半泣きになる。

 そのときに「よくあの程度の怪我で済んだと思わないか」と言いだすのが坂井タケルで、もしかすると飛ぶことは出来なくても落下のスピードを遅くすることは出来たんじゃないかと、坂井は言う。で、みんなで念じてスプーンを曲げてみようと言いだすのだが、スプーンはまったく曲がらない。そういう学園の日々が第一部の第一章と二章で語られるが、ここに、達川颯斗が普通の小学校に通っていたころの同級生佐藤あずさの視点が幾度も挿入されることに留意。しかもそれは二十年後だ。佐藤あずさの二重にロックしたアパートの部屋に、突然達川颯斗は現れる。どこから彼は現れたのか。鍵のかかった部屋に、鍵も開けずに、どうして達川颯斗は出現したのか。最初は夢だと彼女は思う。しかし颯斗は言う。「これは夢じゃない。現実なんだ」。「仲間がいたんだ」とも言う。いったい何のことなのか、新聞社に勤め、社会部記者として働き、それで体を壊していまは文化部で働いている三十二歳の佐藤あずさには、小学校時代の同級生が二十年の時を超え、部屋の中に突然出現してきたことが理解できない─。

 紹介するのはここまでにしておこう。この奇妙で、不思議な導入部からどういう物語が始まっていくかは読んでのお楽しみにしておきたい。いやあ、面白いぞ。『百年法』がそうであったように、今回もまた、年数が時々飛んでそれが物語に奥行きを作っていること、壮大なドラマが鮮やかな絵とともに展開すること─と書くにとどめておく。そしてもう一つ、ラスト近くの颯斗の言葉だ。

「いまの人類が誕生したのは二十万年前のアフリカ大陸で、六万年前にそこから外に出たそうだ。たった数百人から数千人の規模で。その彼らが、世代を重ねながら世界中に広がり、各地で文明を築き上げた」

 この「出アフリカ」のひびきが、読み終えてもずっと残り続ける。 

 

『ポンツーン』2014年10月号より

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