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2014.09.19

コーヒーが世界的な不作で高嶺の花になる! 背景には温暖化、遺伝子解析に期待がかかるが

渋谷 和宏

コーヒーが世界的な不作で高嶺の花になる! 背景には温暖化、遺伝子解析に期待がかかるが

 海外を旅すると日本の飲食店で出されるコーヒーはつくづく美味しいと思う。喫茶店でもコンビニでもハズレはほとんどない。それだけ日本人はコーヒーへの思い入れが強いのだろうと思ったりもするのだが、実はそのコーヒーに今、重大な異変が生じている。
 天候不順と病害によってコーヒー豆が世界的な不作に陥っているのだ。とりわけジャマイカ産の高級ブランドであるブルーマウンテンは深刻で、このままだと2014年度の生産量は430トンと昨年度から半減、ピークだった2007年度の5分の1にまで落ち込むと見られている。
 これを受けて、コーヒーなどの飲料大手のUCC上島珈琲は9月1日出荷分からブルーマウンテンを使った家庭用コーヒー製品の値上げに踏み切ると発表した。対象はレギュラーコーヒーの「アロマリッチ ブルーマウンテンブレンド」や、インスタントコーヒーの「ザ・ブレンド ブルーマウンテンブレンド」など7品目で、値上げ幅は平均40パーセントだ。UCC上島珈琲は今後、喫茶店やレストランなどに向けた業務用の卸価格についてもブルーマウンテンを使ったコーヒー製品の値上げを検討しているという。(8月31日付の東京新聞朝刊など)
 背景にあるのは温暖化だ。猛暑や干ばつがコーヒーの木(コーヒーノキと記す場合も多い)を弱らせ、気温の上昇が病害をまん延させてしまったと専門家たちは指摘する。
 今後、影響はどのように広がり、コーヒー豆の価格はどこまで跳ね上がるのだろうか。そして僕たちには温暖化からコーヒーの木を守る方法があるのだろうか──。

 実はUCC上島珈琲の値上げに対して「値上げしても売れる分があるだけまだいい」と打ち明ける業界関係者は少なくない。UCC上島珈琲はジャマイカに直営の農園を所有し、ブルーマウンテンの扱い額では最大手だ。一方、現地に農園を持たない他社にはすでに調達が難しくなっており、コーヒー大手のキーコーヒーはこの秋からブルーマウンテンを使ったブレンドコーヒーの販売を一部休止すると発表した。コーヒーと輸入食品の販売店カルディコーヒーファームを全国に展開するキャメル珈琲もすでに春からブルーマウンテンブレンドの販売を休止している。
 ブルーマウンテンは日本国内では“ブルマン神話”と言っていいほどの人気があり、世界の消費量の8~9割を日本が占める売れ筋ブランドだが、まさにない袖は振れない状況なのだ。
 深刻な不作に陥っているのはブルーマウンテンだけではない。ブラジル、コロンビア、モカ、ガテマラなど、僕たちに身近なブランドは軒並み収量の減少に見舞われている。コーヒーの木の代表的な種類であるアラビカ種が今、世界的な危機にさらされているからだ。
 ここでコーヒーの木について簡単におさらいすると、コーヒー豆が採れるコーヒーの木にはアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の3つがある。
 アラビカ種は環境変化に敏感で天候不順や病害に弱いが、香りや風味が最も豊かで世界1位の流通量を誇る。僕たちが専門店などで購入するブルーマウンテンやキリマンジャロ、ブラジルなどのコーヒー豆・レギュラーコーヒーはほとんどがアラビカ種だ。
 対するロブスタ種は香りや風味には劣るものの天候不順や病害に強く、インスタントコーヒーの主原料に使われる。
 3つ目のリベリカ種はアラビカ種よりも香りや風味が劣り病害にも弱いため、世界的に生産が廃れ、今では主に研究用に使われているのにすぎない。このためアラビカ種とロブスタ種で日本の流通量の100パーセント、世界の流通量の99パーセントを占めている。
 このアラビカ種が猛暑や干ばつに加え、さび病あるいは赤さび病と呼ばれる病害に苦しめられているのだ。とりわけ世界最大の生産地ブラジルでの被害が大きい。
 さび病はカビの一種が引き起こす病変で、菌が葉をおおい、光合成をできなくさせ、コーヒーの木をまるごと枯らしてしまう。温暖化で気温が上昇し、さび病が広がったと見られている。
 付け加えれば、さび病はかつて19世紀のスリランカを襲い、当時の主要な産業だったコーヒー農園をほぼ全滅させてしまった。コーヒーを諦めたスリランカの農園主たちは紅茶に生産を切り替え、やがて同国が紅茶の一大産地に育っていった。
 猛暑とさび病によって、ブラジルでのアラビカ種の生産は減少の一途をたどっている。2014年度(14年7月~15年6月)の生産量は4950万袋(1袋は60キログラム)と前年を10%下回る見通しだ。
 これに伴って国際的な取引価格も上昇しており、アラビカ種の指標となるニューヨークのコーヒー先物価格はこの夏、1ポンド200セント強と今年1月から80パーセントも上昇した。このままだと2倍の価格にまで跳ね上がるのも時間の問題だ。

 では今後、僕たちが飲むコーヒーの値段はどこまで上がるのか。すでに価格が上昇したブルーマウンテンとは違い、ブラジルやコロンビア、モカ、ガテマラなど他のアラビカ種のブランドについてはまだ半年分ほどの在庫が日本国内にあるため、すぐに値上がりする恐れはないという。しかし当たり前だが在庫は無尽蔵ではない。それらが減るのにしたがって価格上昇圧力は強まっていく。
 加えて温暖化は長期的な気候変動だ。「コーヒー豆の不作は今後も続く」と警鐘を鳴らす専門家は少なくない。近い将来、あらゆるアラビカ種のブランドが高騰する可能性は否定できない。そうでなくても中国やASEAN(東南アジア諸国連合)など、新興国や途上国の成長に伴い、世界的にレギュラーコーヒーの消費量は増えており、コーヒー豆の値段は上がり気味だった。
 そうなったらコンビニやファストフード、コーヒー専門店で美味しくて値ごろ感のあるコーヒーを飲む楽しみは失われてしまう。企業の側にとっても来店客の減少につながりかねないゆゆしい事態だ。何か打つ手はないのだろうか。

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