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2014.09.12

中国転勤を命じられたら、どうします? 企業の中国進出に転機、赴任嫌がる社員が急増

渋谷 和宏

中国転勤を命じられたら、どうします? 企業の中国進出に転機、赴任嫌がる社員が急増

 読者の皆さんに質問させていただきたい。もし突然、中国への転勤を命じられたらどうされるだろうか。チャンスだととらえて喜んで赴任するか、嫌だなと思いつつも社命には従わざるを得ないと泣く泣く同意するか、それとも拒否するか──。
 実は今、中国に在住する日本人駐在員の数が急激に減り始めているのだ。
 上海の日本総領事館の集計では、上海に住む日本人の数は2013年10月1日時点で約4万7700人と、前年同期の約5万7400人から一気に9700人も減少したという。率にすると2割近い落ち込みだ。
 上海は日本人が多く住む都市として知られ、2011年には在住日本人数がニューヨークを抜き、ロサンゼルスに次いで世界第2位となった。それが一転して大幅な減少である。日本総領事館によれば前年を下回ったのは統計を取り始めた1994年以来、初めてだという。
 上海だけではない。中国全体で見ても2013年10月1日時点での日本人数は13万5000人と、前年同期に比べて約1万5000人、率にして10.2%減少した。(8月18日付のチャイナデイリー=中国官営の英字紙)。
 理由は日本人駐在員とその家族の帰国だ。この背景には駐在員を置くコストの削減や中国人を幹部に登用する経営の現地化もあるが、理由はそれだけでない。「中国には行きたくない」と赴任を拒んだり、「早く日本に帰りたい」と予定より前倒しの帰任を希望したりする社員が急増しており、企業はそうした声を無視できなくなっているのだ。
 なぜここにきて中国赴任を嫌がる社員が増えているのだろうか。日本企業はそれに対してどんな手を打っているのか。そして社員の変化は日本企業の戦略にどんな影響を及ぼすだろうか。

 中国に長く駐在し、現地での日本企業の動向に詳しいあるジャーナリストは言う。

「もともと日本人にとって中国に駐在して働く苦労は並大抵ではありませんでした。日本とは生活習慣も商習慣も違うし、生活環境も劣ります。精神的に追い込まれ、うつ病になってしまう人が私のまわりにもいました。しかし、それでも最近の状況に比べれば、まだましだったのかもしれません」

 彼は、駐在員たちが変わり始めたのは、微小粒子状物質PM2.5を主な原因とする大気汚染の実態が報じられるようになってからだという。

「アメリカの研究者らによる国際調査団が昨年、『北京を含む中国北部の人たちの平均寿命は大気汚染の影響で中国南部に比べ5.5年も短い』とする論文を米科学アカデミー発行の機関誌に発表しました。PM2.5がぜんそくや肺がんなど呼吸器に深刻な影響を及ぼすというのです。さらに中国のアメリカ大使館が中国に住むアメリカ人たちに『PM2.5による大気汚染が深刻なレベルに達しているので外出を控えるように』と警告を出したりもしました。日本人駐在員が健康に危機感を抱くのは当然ですよね。そうでなくても北京や上海では晴れている日もスモッグで空が見えなかったりしますから」

 大気汚染に加え、いつまた湧き起こるかわからない反日デモへの不安や独占禁止法による締め付け強化も中国赴任への抵抗感をいっそう強めているという。
 この結果、「ある電子部品メーカーでは5人いた駐在員を3人にした」「別の外食チェーンでは駐在員を予定より早く帰任させ、補充しなかった」といった事例が頻発するようになったのだ。社命には逆らえず赴任を受け入れた社員にしても、家族の健康を慮り、単身赴任を選ぶ人が増えている。
 今年、家族を日本に帰らせ、本人も早期の帰任を希望する電子部品メーカーの駐在員は言う。

「中国赴任は2回目です。前回、7年前に上海に赴いた時は、デフレで閉塞感を拭えない日本に比べ、経済活動がどんどん拡大していく活力を感じられて、大変だったけれどやりがいがありました。今回はとにかく健康が心配です。それに日本が以前よりもいくらか元気を取り戻していますよね。前回よりもはるかに帰りたい気持ちが強いです」

 付け加えれば、社員が中国赴任を嫌がる動きは欧米企業にも出てきている。フィンランドの大手電機メーカー、ノキアは今年、通信機器などの開発に携わる社員を募集したが、採用した17人全員が北京赴任を拒否し、うち15人がPM2.5による大気汚染を理由に挙げた。また在中米商工会議所(中国にあるアメリカの商工会議所)が中国に進出しているアメリカの企業にアンケートを行ったところ、「大気汚染で幹部を中国に招くのが困難になった」との回答が48%に達した。

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