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2014.09.06

第7回

おじいちゃんのチャレンジ

松本キック

おじいちゃんのチャレンジ

『アイス・バケツ・チャレンジ』なるものが、この夏、世界を席巻した。このコラムが掲載される頃にはすでに終息しているかもしれない。最近の話題の賞味期限を考えると、「あぁ、そんなことあったな」
と、すでに古い記憶になってしまっている可能性も高い。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)の認知度向上を目的としたチャリティー活動。『氷水を頭からかぶる』『100ドルをALS協会に寄付する』『氷水をかぶり寄付する』の、いづれかを選択し実行。それを動画に撮り、24時間以内にSNSにアップする。そして同時に、次にチャレンジしてほしい3人を指名する。指名された者は、先の3択から1つの行動を選び、次にチャレンジしてもらいたい3人を指名する。この繰り返し。

 賛否両論、いろんな価値観が交錯している。
 ALSの認知に役立ち、当事者やその家族の希望につながればいいと思う。が、完全に否定している人はいないものの、違和感を持つ人は少なくない。ボクもその1人だ。
ボクが引っ掛かっている点は2か所。

 1点は100ドルという金額を決められた寄付金。日本円にして約1万円。寄付としてはけっこうな額だ。コンビニの寄付箱に1万円札が入っていることはまずない。街中で声を張り上げる募金活動の学生にも、出したところで1000円程度。ほとんどが身の丈にあったワンコインが現実だろう。

 もっと正直に言うなら、1万円はボクにとって大きな出費となる。いい歳した大人がそれくらい出せよ。仰る通りかもしれないが、「いいよ、それくらい」と、ポンと差しだせるセレブならいくらでもやっている。

 あくまで目安だとは思うが、寄付の額を決められているのはやっぱりおかしなことだ。大切なのは人の想いである。

 違和感を覚えたもう1点は、24時間以内に行動しろということ。こちらも強制性はないものの、ボクにとっては信用性を欠いてしまうルールになる。言い方は悪いが、こんな風に聞こえてならない。
「このチャレンジは良いことだから、とりあえず急いで氷水をかぶって寄付をしてくれ。そして急いでみんなに広めるんだ」

 24時間じゃ、ALSに正しく触れることすらできない。自分自身、何ができるのかを知る時間すらないし、どんな協力を必要としているのか、当事者の声を聞くことすらできない。
 ボクはしいたけが好きじゃないが、誕生日に「しいたけは栄養もあるし香りも良い。これを松本キックに皆で贈ろう」と、山ほどしいたけを贈られても迷惑なだけだ。
当事者が何を必要としているのか。そこが抜け落ちてしまっている。なんとなくかわいそう。なんとなく大変そう。なんとなく障がい者。とりあえず寄付しておこう。この論法こそ、もっとも理解を妨げる原因となってしまう。

 だからと言って、ボクは批判的な感情を持っていない。偉そうに言わしてもらうなら、である。先に気になる点を言わせてもらっただけで、良い点も多く感じている。
 ボクの相方ハウス加賀谷は、精神障害者だ。『統合失調症』の当事者だ。とは言っても、統合失調症もまだまだ認知度が低い。認知してもらうことの重要さはよく分かっている。
 一過性で終わってしまうのではと危惧する人がいるが、いいんじゃないの一過性。にわか寄付で大いに結構。多くの人がチャレンジしていなければ、多額の寄付金が集まることはなかったし、何よりもALSを知る人自体が少なかった。ニュースやドラマで取り上げても一過性なのに批判はない。このチャレンジだけ批判されることはない。

 難病は数多くあるのに、支援がALSに偏ってしまうんじゃないか。偏ってもいいと思う。ALS=難病、その難病という言葉が認知されれば、他にはどんな難病があるのかと興味を持つ人が出てくる。全員じゃなくても何人かは。今回はたまたまALSにスポットがあたっただけのこと。全体の底上げになれば得をした、そう考えた方が妥当ではないだろうか。

 良くも悪くもブームである。元々は、一般人が地道にやっていた募金活動。募金先も自由に決めることができていた。それがいつしかセレブの間に広まり、ゲーム感が増し火がついたのだろう。また、一般人に回帰するのもいいのではないだろうか。

 

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