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2014.08.17

生誕60周年のゴジラ論変容

中条 省平

生誕60周年のゴジラ論変容

 今年2014年は「ゴジラ生誕60周年」ということで、映画、DVD、本など、さまざまなメディアを通じてゴジラブームが演出されています。マンガの分野でも、『ゴジラ 漫画コレクション 1954-58』(小学館クリエイティブ)という「激レア」な編集本が出版されました。中身は、阿部和助の『科学冒険絵ものがたり ゴジラ』、杉浦茂のマンガ『ゴジラ』と『大あばれゴジラ』、そして、藤田茂のマンガ『ゴジラ』『続・ゴジラ アンギラスの逆襲』という5作からなっています。

 このうち、杉浦茂の2作は、日本でゴジラブームが起こった1954~5年に描かれたもので、ブームに便乗した企画といえるものです。しかし、中身のほうは、映画『ゴジラ』のキャラクター造形などどこ吹く風、いつに変わらぬ杉浦ワールド全開となっています。そもそも、なんでよりにもよって杉浦茂先生のところに「ゴジラもの」のマンガの依頼が行ったのか解せないところなのですが、本書巻末の金田益実の解説によれば、当時から、ゴジラを子供にも親しめる可愛いキャラクターにしたいという意向が映画製作会社の東宝にもあったようで、そんな事情から、そのころ子供たちに大人気だったマンガ家・杉浦茂に企画が回ったらしいのです。

 じっさい、ゴジラは1962年の『キングコング対ゴジラ』から映画に連続出演するようになり、徐々にユーモラスな善玉へと変化していきます。そして、ついには1965年の『怪獣大戦争』で、赤塚不二夫『おそ松くん』の人気キャラ・イヤミの得意ポーズの「シェー」を決めてみせるところまで行ってしまうのです。

 そんなゴジラの変貌を杉浦茂はとっくに見越していたということでしょうか? そういえば、杉浦先生の作品には、水爆実験が誕生させたゴジラと張りあうことのできるトンデモないキャラクターがありました。「ピカーッドドーン」と叫んで暴れまわる原爆怪獣(妖怪?)です。いまやこのマンガ的センスは「封印もの」でしょうが。

『ゴジラ 漫画コレクション』に話を戻しますと、藤田茂のマンガは2作とも東宝映画『ゴジラ』と第2作『ゴジラの逆襲』の物語のかなり忠実なマンガ化です。このマンガが描かれたのは1958年で、オリジナル映画はもう映画館でほとんど見られなくなっていた時代のことです。そのうえ、次にゴジラが登場する『キングコング対ゴジラ』まで4年もの空白があるのです。それゆえ、マンガ版でオリジナル映画『ゴジラ』と『ゴジラの逆襲』のストーリーを知りたいという読者の需要があったのでしょう。

 さて、『ゴジラ 漫画コレクション』のなかで「ゴジラ史」的観点から見ていちばん興味深いのは、巻頭に収録された阿部和助の絵物語『ゴジラ』です。これは、東宝のオリジナル映画よりも早い日本で最初の(ということは世界最初の)「ゴジラもの」の作品なのです。

 なぜそういう奇妙なことが起こったのかというと、東宝は1954年7月に映画『ゴジラ』の製作を正式に発表し、全社あげての宣伝活動に入っていました。そのため、同年11月3日の映画公開に先立って、少年雑誌「おもしろブック」で映画宣伝のためにこの絵物語版『ゴジラ』がふた月にわたって掲載されたのです。これは小説家・香山滋が書いた映画原作(オリジナルはシナリオ風ストーリーだったという)を基にしています。

 

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