最初は探り合いだったお二人の対話もだんだんとドライブがかかってきました。見えてくるのは、“優劣”にこだわる男性と“わかりあいたい”女性の違いばかり。果たしてこの溝を埋めることはできるのか――?  (構成:福田フクスケ 撮影:牧野智晃)

男と女でまったく違うコミュニケーションのルール

本書内にもあるネカマのお友達のエピソードにはまさに「男女の違い」を考えさせられます

ジェーン 男女の問題に話を戻すと、なぜ男性はそこまで“勝ち負け”や“優劣”にこだわるんでしょうか。私の友人で、20年前にネカマ(ネット上で男性が女性になりすますこと)をしていた男性がいるんですが、彼がネット掲示板で女性のふりをして「普通の女の子です。デートする人を探しています」と書き込むと、「俺はこんな車を持っている」「俺の知り合いがやっているレストランがある」と誘ってくる男がわらわら寄ってきたそうです。「君は何がしたいの?」と聞いてきてくれた男性はゼロ。“普通の女の子”と書いただけで、彼らはほぼ100%、相手が自分よりスペックが低くてものを知らない女性だと思い込んでいるんです。普通の女の子はデフォルトで自分よりスペックが低いと思っていると、これからはハシゴを外されまくると思うのですが……。


本書は子供が生まれ、老いを意識するようになり生まれた思想でもあるようです

 男性が誰も「君は何がしたいの?」と聞かなかった、というのは重要な指摘ですね。そもそも男性は、「自分のことをわかってほしい」という気持ちがほとんどないんですよ。男性社会では、“わかりあう”ということの価値や重要度がかなり低いんです。女性集団では、「私のことをわかって」「うん、わかるよ」というのがコミュニケーションの上位に置かれていますよね。でも、男性集団の中で「俺のことをわかってくれ」という男は、「やっかいで面倒くさい奴だ」と認定をされてしまう。おっしゃる通り、男性のコミュニケーションの上位は勝ち負けなので、ネカマの彼女に「俺はこんな車を持っているよ」と声をかけてきた男たちは、実は相手の女性ではなく、他にいるであろうライバルの男性たちと戦っている。女性は、当然置いてきぼりにされた気分になってしまいますよね。

ジェーン コミュニケーションのルールが、男女では根本的に違うんですね。

 男女の問題に限らず、一度男性間で競争が起きると、最初の目的を見失ってしまうというのは、政治や経済などあらゆる局面で起こっています。塩村都議へのやじ問題も、実はこれ。これは教育や社会的役割の差というよりも、もはや脳の構造レベルで差があるんじゃないかという気がします。多数派の男性の脳はそもそも「わかりあう」ことに価値を感じていないので、「女性社員の気持ちをわかったほうが、ビジネスで勝てるのか。じゃあわかるようにしないと」みたいにしか考えられない。

ジェーン 結局、全然わかっていない……(笑)。

 そう。だから、男性への育児啓蒙が「イクメンを表彰する」みたいな方向性に歪んでしまうのは、当然なんですよね。「俺はおむつを100回以上替えたことがある!」「俺は300回だ!」というふうに、奥さんとの関係ではなく、男性間での勝ち負けの話にしないと、男は「いい父親になる」とはなにかを理解できないからです。これは男性の基本的な行動原理のようなもので――むろん例外的なひとはいるでしょうけれども、とにかく現在の多くの男性はそうで――、なかなか変えるのは難しい。その競争意識をうまく利用しながら、もっと社会のために役立つような方向に、目標を変えてあげるしかないでしょうね。

 

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