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2014.08.05

香山リカ×湯浅誠対談 国論が二分される時代をどう生きるか

最終回
「問題の立て方」を変えてみよう

香山 リカ/湯浅 誠

最終回<br />「問題の立て方」を変えてみよう


朝日の読者と読売の読者は対話できるのか


香山 今、湯浅さんは法政大学で教えてるんですよね。何学部なんですか。

湯浅 現代福祉学部ですけど、講義をしているのは社会問題や政治学や社会思想史だから、あまり福祉とは関係ないですね。ゼミで受け持っているのは1年生と2年生。

香山 ゼミでは何をするんですか。

湯浅 授業も含めて、基本的には、「教えない」ということをやっています。課題を出してやってもらって、それについて周りと話をして気づいてもらう、という参加型のゼミです。これは、さっき話したまちづくりの話にもからむし、今回の対談に際して、編集部から事前に提示された問題の立て方にもからみます。

香山 問題の立て方って?

湯浅 対談の前に編集部からきた質問リストの中に、「日本はアメリカのような分断社会になってしまうのか」という問いがあったんですよね。これは言い換えれば、日本が二極化しないためにはどうしたらいいのか、という問題。
 私自身がずっと、日本が二極化しないためにはどうしたらいいかという問題を立ててやってきましたけど、これからは、こうじゃない立て方に舵を切ったほうがいいんじゃないかと思っているんです。
「日本はアメリカのような分断社会になってしまうのか」ではなくて、すでに日本は分断社会になってしまったので、それをどう克服するか。「分断された社会の中でどう共通点をつくるか」というふうに問題を立てるべきだろうということです。そして共通点をつくれるようになるには何が必要なのかを考え、それを大学の授業で実践しています。

香山 そう考えるようになったのは、何かきっかけがあったんですか。

湯浅 これからはいろいろな分野で、意見の対立が深刻になるだろうと思い始めたからですね。直近では安倍さんの「集団的自衛権」ですけど、たぶん今後も国論を二分するテーマは出続けるでしょう。別の首相になったらたとえば道州制とか、あるいは混合診療とか、また違う問題がクローズアップされるはずです。なぜなら今は、「普通じゃないことをやる」と言わないと、リーダーになれない、選挙に通らないから。
 私、参与をやって初めて知ったんですが、行政の95%はそれこそ年金とか水道とか、仕組みが決まっているもので、政治家が直接に手を下して動かせる部分は5%ぐらいなんですよね。でも選挙で「私ができるのは5%です」とは言えない。
 とくに、今のように政治不信が深化した時代は、「自分が100%変える」という顔をして、人々の期待を煽らないと、選挙で勝てない。でも現実にはそんなことできないわけですから、選挙が終われば、期待は必ず失望に変わります。期待を煽っては失望されて、というパターンの繰り返しになる。しかしこれを繰り返しているうちに、どんどんタイムリミットは近づいてくる。このサイクルをいかに抜けるかというのが本当の問題なんだと思うんです。
 でも、世論を二分するような論争的なテーマをあえて立てるというモードは、今後しばらく続くでしょう。ということは、それを巡って人々の対立が深まるはずです。
まさに集団的自衛権の問題が典型的ですが、今、朝日新聞を読んでいる人と、読売新聞を読んでいる人とでは、あまり対話ができなくなっている。
 こういう世の中では、「こうならないためには、どうすればいいか」という問題意識はもう成り立たない。問題はもう起きてしまっていること、対立が生じてしまっていることを前提に、立ち位置の異なる人同士が、どう対話すればいいかを考えるほうが現実的じゃないかと思うんです。

香山 読売を読んでいる人から、朝日を読んでいる人へ呼びかける方法はある?

湯浅 自分が全体を代表していない「部分」だと認めた上で、「全体」をつくりだそうと呼びかけていくことじゃないでしょうか。それはこれから鍛えていくしかないと思います。立場の違いを役割の違いとして認め合う。まちづくりと同じで、市民活動の実践として身につけていくしかないんじゃないかな。私はこれは、70年代にリベラリズムが取り損ねた問題を受け取るための、問題の立て方じゃないかと思っています。社会全体が、そういう力をたくわえていく必要がある。

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