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2002.08.01

第8回

デジタルコンテンツの運命

橘 玲

デジタルコンテンツの運命

 香港の下町・深水捗Sham Shui Poの駅前に、コンピュータショップ高登電脳中心Golden Computer Centreがある。この地下1階は巨大なコピーソフト市場で、いまや香港有数の観光名所だ。中国のWTO加盟を控えて香港のコピーソフト業界も一時期下火になったが、ここにきて再び活況を取り戻してきた。現地の人間に聞くと、「不況できれいごとなど言ってられなくなった」ということだが、それで警察の取締りまで甘くなるから不思議だ。「共存共栄だから、業者が倒産しないようにやっている」ということらしい。
 たしかに香港の不況は日本以上に深刻で、失業率は8%近くに達している。レストランに予約を入れて、行ってみたら潰れていた、ということも珍しくないらしい。物乞いの姿もずいぶん増えた。
 不況の原因もはっきりしている。中国への返還で隣接する広東省との行き来が自由化されたため、安い労働力を求めて製造業が流出してしまったからだ。中国本土は人件費も土地代も香港の10分の1以下で、競争すること自体が無意味な水準である。言葉も文化も同じだから、日本企業と違って、香港資本の広東省進出にはなんの問題もない。衣類・食料品からセックスの値段までなんでも安いから、週末には九廣鉄道KCRに乗って、香港人が大挙して深_Shen Zhenに押しかける。
 経済活性化の唯一の方策は為替レートの切り下げだが、香港ドルは米ドルにも人民元にも固定レートでペッグされているので身動きがとれない。自慢のショッピングも、デフレ下の日本から見れば割高になってしまった。この夏のバーゲンシーズンに合わせて日本からやってきた観光客も、同じものがずっと安く日本で買えることを知ってがっかりしていたようだ。そのため、掻き入れ時にもかかわらず、ブランドショップはどこも閑古鳥が鳴いている。
 製造業が広東省に流出すれば、香港に残るのは観光と金融だけだ。しかしその観光業も、香港ドルを少なくとも20%は切り下げなければ、衰退する一方だろう。

 その中で、いまや香港の貴重な観光資源として脚光を浴びるのがコピーソフトである。香港や中国はもとより、安いソフトを求めて世界じゅうからコンピュータおたくが“聖地”高登電脳中心に押し寄せてくる。そのあまりの人気に、香港当局も著作権保護の旗を捨て去ってしまったようだ。
 では、コピーソフトはどのくらい安いのだろうか? 具体的に検証してみよう。

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