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2002.10.15

第12回

世の中はリベートで動いている

橘 玲

世の中はリベートで動いている

「存在するものはすべて合理的である」と言ったのは、ヘーゲルだったろうか。
 この洞察は、金融詐欺にも当てはまる。
 無知な投資家を騙す犯罪者と、善良で哀れな被害者がいるのではない。騙される側にも、合理的な理由があるのである。
 その格好の例が、数年前に世間を騒がせたプリンストン債事件だ。

 つい最近、関係者の一人が一審で懲役3年の実刑判決を宣告されたことが報道されたが、すでに記憶が薄れている人も多いと思うので、簡単に事件を振り返っておく。
 90年代半ばあたりから、マーティン・アームストロングという人懐っこい笑顔の“天才”アナリスト兼ファンドマネージャーが日本の経済メディアに頻繁に顔を出すようになった。
 アームストロングは米プリンストン経済研究所(といっても、自分で設立した個人研究所)の所長であり、紀元前1700年のメソポタミア文明に遡る相場データを分析し、スーパーコンピュータを駆使してはるか未来の株式・債券・為替・商品市場まで完璧に予測したと豪語して、バブル崩壊で自信を失った大手金融機関のトレーダー、ディーラーや、多額の損失を抱えた個人投資家の間でカリスマ的な人気を博した。今は誰も口をぬぐって知らん顔を決め込んでいるが、当時、プリンストン経済研究所から毎日発行されるアナリスト・レポートを神のお告げのように崇めていたトレーダー、ディーラーは数知れない。
 アームストロングはニューヨークダウが3000ドルだった93年に「ダウ1万ドル」を予測し、また日本のバブル崩壊後は「日経平均1万円割れ」の可能性を指摘した。どちらも最初は狂人扱いで誰も相手にしなかったが、その予言が現実のものになるにしたがって徐々に信者が増え、ニューヨーク株価が1万ドルを目指して上昇し、逆に日経平均が1万4000円台まで暴落した1998年あたりから“カリスマ”の名は不動のものになった。株式専門紙や相場雑誌、テレビなどに頻繁に登場し、似非評論家たちがありがたがって彼のお告げを触れ回ったのもこの頃だ。その中にはいまだに現役で、したり顔で日本経済を憂えている輩も多い。
 ところがその後の調査によれば、大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメントが破綻した98年秋のロシア危機でアームストロングも大きな損失を抱え、欧米の投資家からの相次ぐ解約請求で彼の運営するファンドは資金繰りに窮していたという。
 そこでアームストロングは、日本での人気を利用してひと儲けしようと企み、自分が運営するファンドを企業や機関投資家に売りつけることを画策する。それが「プリンストン債」だ。

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