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2002.11.01

第13回

経済合理性では行動しない人々

橘 玲

経済合理性では行動しない人々

  旅行代理店に行ったカップルが、予算が足りないことに気づく。すると、アロハを着たドリフターズの加藤茶が、♪ババンババンバンバン♪と懐かしい歌を歌いだす。
 彼女と寿司屋に行ったところ、高いネタばかり注文されて「あっ!」と驚いたユースケ・サンタマリアが、ギターを弾きながら叫ぶ。
 あるいは、NHK大河ドラマの豊臣秀吉役で一世を風靡した竹中直人が、いざ出陣という時に、財布に金がないことに気づいて驚き慌てる武将を演ずる。妻役の桃井かおりが、内助の功を発揮して夫の危機を助ける。
 いまさら説明するまでもないが、これらはすべて銀行系消費者ローンのコミカルなCMである。
 この能天気なCMに対しては、各方面の“良識”ある人たちから、厳しい批判が浴びせられている。
 彼らは言う。
「他人から金を借りるということは、元本に利子をつけて期日までに返済するという厳しい責任を伴う行為である。♪ババンババンバンバン♪などと暢気に歌いながらすべきことではない。天下の大銀行が、こんな不謹慎な宣伝をするなど許されるわけがない」
 これは、反論の余地がないくらい真っ当な主張である。♪ババンババンバンバン♪の銀行は別として、それ以外の金融機関は日本国から莫大な公的資金を注入されている。寿司屋で「あっ!」と叫んだり、出陣前に財布に金がないと慌てている場合ではないのだ。彼らには、それ以前にやるべきことがいくらでもある。
 反論できない以上、こうした批判に対して、どの銀行も知らん顔を決め込むことになる。抗弁できないのなら、聞こえないふりをするしかないからだ。しかしそう遠くない将来、批判は無視できない大合唱になるだろう。
 ではなぜ銀行は、世間の顰蹙を買ってまで、能天気なCMを流し続けるのだろうか?
 彼らにしても、好きでこんなCMをつくっているわけではないはずだ。苦々しい思いでテレビを見ている銀行員を多いに違いない。
 しかし、銀行には銀行なりのやむにやまれぬ事情があるのである。

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