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2014.06.27

第16回

空想の数 後編

大栗 博司

空想の数 後編

幾何の問題を方程式で解く

 第$12$回の「宇宙のかたちを測る 後編」では、デカルト座標を使うと、三角形の垂心定理のような幾何の問題が、連立$1$次方程式として表現することで解けるという話をした。複素数を使うと、方程式の応用がさらに拡がる。

 たった今導いた、三角関数の加法定理をもう一度よく見てみよう。

\begin{align} & ( \cos \theta_1 + i \sin \theta_1) \nonumber \\ &\times ( \cos \theta_2 + i \sin \theta_2) \nonumber \\ & = \cos (\theta_1 +\theta_2) + i \sin (\theta_1 + \theta_2) \ . \nonumber \end{align}

これは、この連載の第$5$回「大きな数を恐れないということ 前編」で話した、指数関数の「掛け算が指数の足し算になる」という性質、$$ e^{x_1} \times e^{x_2} = e^{x_1 + x_2} \ , $$

と似ている。どちらも、左辺は掛け算なのに、右辺では変数が足し算になっている。

 指数関数については、「$n$乗すると指数が$n$倍になる」という性質、つまり$n$を自然数として、$$ \left( e^x \right)^n = e^{nx} \ , $$

があることも話した。これは、「掛け算が指数の足し算になる」という性質を何度も使えば示すことができる。たとえば、

\begin{align} \left( e^x \right)^3 & = \left( e^x \times e^x\right) \times e^x \nonumber \\ & = e^{2x}\times e^x \nonumber \\ & = e^{3x} \ . \nonumber \end{align}

 ここで使っているのは、「掛け算が変数の足し算になる」という性質だけだから、三角関数の$\cos \theta + i \sin \theta$という組み合わせについても、「$n$乗すると変数が$n$倍になる」という性質が成り立つはずだ。つまり、

\begin{align} &(\cos \theta + i\sin \theta)^n \nonumber \\ &= \cos n \theta + i \sin n \theta \ . \nonumber \end{align}

これは、「ド・モアブルの公式」として知られている。

 この公式を使って、第$4$回の「基礎から考えること 後編」で話題にした正多角形の作図を考えてみよう。


図10

 複素数の極座標表示$z = r (\cos \theta + i \sin \theta)$では、$\theta$を$0$から$2\pi$にすると、$z$は、原点を中心とする半径$r$の円を描く。特に$r=1$とすれば半径$1$の円になる。この円周を、図$10$のように$3$等分すると、円に内接する正三角形が描ける。

 円の半径が$1$なら、頂点$z_1$のデカルト座標は$(1,0)$で、複素数としては$$z_1=1 \ . $$

頂点$z_2$は、これを$120$度、ラジアンで書くと$\theta=2\pi/3$だけ回転したものだから、$$z_2=\cos (2\pi/3) + i\sin(2\pi/3) \ .$$

同じように、頂点$z_3$は、複素数で表すと、$$z_3=\cos(4\pi/3) + i \sin(4\pi/3) \ , $$

となる。では、この$\cos(2\pi/3)$や$\sin(2\pi/3)$などの値はどうしたら求まるか。

 まず、ド・モアブルの公式を使うと、

\begin{align}z_2^3&=\left( \cos(2\pi/3) + i \sin(2\pi/3)\right)^3 \nonumber \\ & =\cos 2\pi + i \sin 2\pi\nonumber\\ & = 1 \ , \nonumber \end{align}

となる。この式の最後では、$\cos 2\pi = 1$、$\sin 2 \pi = 0 $となることを使った。同じようにして、

\begin{align}z_3^3 &= \left( \cos(4\pi/3) + i \sin(4\pi/3)\right)^3 \nonumber \\ &= 1 \ . \nonumber \end{align}

また、$1$は何乗しても$1$なので、$$ z_1^3=1 \ . $$

半径$1$の円に内接する正三角形の$3$つの頂点は、どれも$$ z^3 = 1 \ , $$

を満たしていることがわかる。

 この式$z^3=1$を解いてみよう。まず、$$ z^3 - 1 = (z-1) \times (z^2 + z + 1) \ , $$

と因数分解できるので、$z=1$は解のひとつで、これは$z_1$だ。残りの$2$つの解は、$z^2 + z + 1 =0$を満たすので、$2$次方程式の解の公式から、$$ z = -\frac{1}{2} \pm i \frac{\sqrt{3}}{2} \ , $$

となる。これが$z_2$と$z_3$になる。

 長さが$1$の線分が与えられているときには、定規とコンパスでこれを$2$等分できることは第$4$回「基礎から考えること 後編」で説明した。また、$\sqrt{3}$は、底辺$1$、斜辺$2$の直角三角形の高さだから、これも作図できる。だから、原点とひとつの頂点の位置$z_1=1$が決まっていると、$1/2$や$\sqrt{3}/2$が作図できるので、残りの$2$つの頂点の位置$z_2$と$z_3$も定規とコンパスで定めることができ、正三角形は作図できるんだ。

 

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