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2014.06.12

第15回

空想の数 前編

大栗 博司

空想の数 前編

 古代ギリシャで生まれた三角関数。17世紀にスコットランドで開発された指数関数。生まれも育ちも全く違う2つの関数には、実は深いつながりがありました。両者をとりもったのが、2乗すると負の数になる「虚数」。古代ギリシャ人が思いついたものの、1000年以上も「胡散臭い数」と見なされていた虚数が、ここで歴史に名を残す、きわめて重要な役割を果たしたのです――という、数奇なドラマをたった1行で表しているのが、「オイラーの公式」。さあ、かくも美しくも深遠な「オイラーの公式」への旅の始まりです。

 

 君が保育園に入るときに、園長先生からいただいたアドバイスのひとつに「空想の友達(imaginary friend)」の話があった。$2$歳から$7$歳ぐらいの子供は想像上の友達を持つことがある。たとえば、夜中に、子供ひとりしかいないはずの部屋から、楽しそうな話し声が聞こえてくることがある。また、

子供:「ソフィーちゃんが、意地悪なことを言うの」

親:「ソフィーちゃんって、だれのこと?」

子供:「私の部屋の戸だなの中にすんでいるのよ」

という会話になることがあるが、心配しなくてもいい。空想の友人と会話をすることは、子供の心理的な成長に役立つのだという。$7$歳までの子供の$7$割近くが空想の友達を持っているという米国での調査もある。

 空想の友達が子供の成長に役立つように、空想の数も数学の発展に重要だった。いわゆる「虚数」だ。日本語で虚数というと何やら神秘的な数のような印象を受けるが、英語では“imaginary number”と呼ばれ、つまり人間が空想(imagine)した数という意味だ。

 空想の友達は、子供が小学校に上がる頃には消えてしまう。現実の友達との遊びに忙しくしていて、ふと思い出して戸だなを開けてみると、もういなくなっていたということが多いようだ。

これに対し、空想の数は、数学が発展するに連れてどんどん現実味を増してきた。現在では、数学のほとんどすべての分野で活躍している。

 虚数が現れる有名な式として、このような数式がある。$$ e^{i\pi} +1 = 0\ . $$

この式には、ネイピア数$e$、円周率$\pi$、どんな数を掛けてもその数になるので「掛け算の単位」と呼ばれる$1$、どんな数を足してもその数になるので「足し算の単位」と呼ばれる$0$、そして今回の主役である「虚数の単位」$i$が一堂に会している。小川洋子の『博士の愛した数式』で、未亡人とお手伝いさんのわだかまりを解くのも、博士のメモ用紙に書かれていたこの公式だった。次回の後編では、この数式が成り立つ理由とその意義についても話すことにしよう。

 

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