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2014.05.17

「国境なき医師団」を描いた戦闘なき戦争の狂気
エマニュエル・ギベール『フォトグラフ』

中条 省平

「国境なき医師団」を描いた戦闘なき戦争の狂気<br />エマニュエル・ギベール『フォトグラフ』<br />

 前作『アランの戦争』が読み巧者たち軒並みの高評価

 フランスのマンガ家、エマニュエル・ギベールの『フォトグラフ』の日本版が刊行されました(大西愛子訳、小学館集英社プロダクション)。超大判オールカラーのハードカバー豪華本で、値段も5832円とちょっと高価ですが、これはマンガファン必見の力作です。

 エマニュエル・ギベールについては、すでに2011年に『アランの戦争』という作品が翻訳されており(野田謙介訳、国書刊行会)、この日本初紹介となった作品は、マンガの読み巧者によって高く評価されました。

 例えば、「フリースタイル」誌(2012年冬号)の特集「THE BEST MANGA 2012 このマンガを読め!」のベストテンでは、次のような方々が『アランの戦争』を選んでいます(雑誌掲載順)。

 夏目房之介(2位に選出)「白黒だが、絵も素晴らしく、実在の人物の人生が切なく描かれるドキュメンタリー」

 ササキバラ・ゴウ(2位に選出)
 漫棚通信(2位に選出)「日本の読者は、題材、描写、技法、すべてに驚きました。マンガの世界は広い」

 ヤマダトモコ(2位に選出)「あまりに淡々とした戦争体験がいい」

 藤本由香里(2位に選出)「『人生』と『人との出会い』の意味が沁みこむように伝わってくる」

 全員が2位というのは単なる偶然ですが、夏目、ササキバラ、ヤマダ、藤本の4氏は、1位に挙げた作品と同じ評点を『アランの戦争』に付けているので、ほとんどベストワンと同様の高い評価をあたえたともいえます。

 こうした熱い推薦を知って、私も遅ればせながら『アランの戦争』を読んでみて、びっくりしました。

 ちょっと類例がない作風で、戦争を題材にしているけれども、ほとんど戦闘場面が登場しませんし、「実在の人物」を描く「ドキュメンタリー」なのですが、どこか夢のように茫洋とした感じがあります。

 絵はモノクロではなく、水墨のような濃淡のあるセピアを主調としているので、夢のような絵の感覚はいっそう印象深く定着されています。また、その語り口、まったく無駄のない「描写」を積みかさねる「技法」は、「あまりに淡々とし」ていて、アート的、あるいは実験的といってもいい感覚を喚起するのですが、それにもかかわらず、リアルな「人生」、「人との出会い」のかけがえのなさが「沁みこむように伝わって」きます。

 

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