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2014.04.28

「乗り鉄」のこだわり、旅行術が学べます

佐々木 克雄

「乗り鉄」のこだわり、旅行術が学べます

『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』
杉山淳一/幻冬舎刊 ¥1,400(税別)
ご近所鉄道、懐かしのローカル線、迫力のSL列車、憧れの豪華寝台特急……。乗り鉄だけが知っている、限られた時間と予算で最高に「鉄道」を楽しむ旅を様々な角度から紹介。「鉄」でなくても、週末が待ち遠しくなる鉄道旅エッセイ。

 

みなさん旅は好きですか
どんな旅がお好みですか

 私事、仕事がら本屋さんに並んでいる本や雑誌をチェックするのが癖になっているのですが、女性誌コーナーで見かける言葉が「ファッション」「恋愛」「コスメ」そして「旅」です。
 また私事、旅が好きなものですから、女子のみなさんはどんな旅がお好みなのかと雑誌を手にとってみますと、こんな言葉が現れます。
「ショッピングもエンターテインメントも超一流のニューヨークで女を磨く」
「極上アジア旅。最高級リゾートホテルで身も心も癒されて」
 うわあ、高いんだろうなあ……という庶民的つぶやきが思わずもれてしまいます。
 だったら国内旅行はどうでしょう。
「式年遷宮が行われた伊勢神宮。日本の聖地へ出かけてみませんか」
「女子旅の一番人気は京都。寺社巡り、京グルメ、和スイーツと楽しみがいっぱい」
 東京から新幹線でサッと行けそうだけれど、頻繁にはどうかなあと。ツアーの予算を見ますと一泊二日で三~五万円くらいですね。ボーナスなど臨時収入があれば別ですが、それなりの資金が必要かと。いわんや海外旅行をや。
社会的に認知されてきた「鉄」
はたしてどのような人々か
 ええと、冒頭からネガティブな記述で申し訳ありません。でもよほどのお金と、それから時間がない限り、海外はもとより、旅行に頻繁に出かけるのは無理ではないかと思うのです。
 それでも同じ生活の繰り返しに飽き飽きし、アクセントを与えたいと思っている貴女(あなた)。今回オススメしたいのが杉山淳一著『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。』です。なにせ筋金入りの「乗り鉄」さんが書かれた、安くて楽しい旅案内なのですから……あ、引かないでください、ここからが大事なんです。
 鉄道を愛する人々が「鉄」や「鉄ちゃん」と呼ばれるようになって久しいのですが、その種類が多岐にわたっているのはご存じですか?
 写真に収める方々を「撮り鉄」。列車の音などを録音する「録り鉄」も存在します。そして鉄道に乗ることをこよなく愛するのが「乗り鉄」です。近年は女性の鉄道ファン──「鉄子」の台頭が目覚ましく、そのお一人が『負け犬の遠吠え』などのエッセイでお馴染みの酒井順子さんです。『女子と鉄道』『女流阿房列車』などを出されており、一日で東京の地下鉄全線に乗ったり、特急を使わず横浜から八代(熊本県)まで行ったりと、なかなかの「乗り鉄」ぶりを披露してくれています。
 そう、「鉄」は、女子でも当たり前なのです。

乗り鉄ならではの
鉄道旅の魅力とは

 前置きが長くなりました。あらためて著者、杉山淳一さんをご紹介しましょう。
 小学生のときに「乗り鉄」に目覚めた杉山氏は現在フリーライターとして活躍中。日本の鉄道は九割以上も踏破しておられる強者(つわ もの)です。
 何故そんなことを、と問えば「地図上で今まで乗った鉄道路線を塗りつぶしていくうちに、全部、塗りたくなっちゃったから」と軽妙な語り口で、氏は鉄道旅の魅力を語ります。
「移り変わっていく景色を見ているだけでも癒されます」「車内に目を向ければ(中略)乗客の数だけの人生模様があります」「駅はうまそうなものを探す探検の始まり」
 極上アジア旅でなくとも癒しは得られ、遠くまで足を運ばなくともグルメはある、というわけです。では「暮らしに鉄道気分をちょっとプラス」をテーマにした同書を、かいつまんで見ていきましょう。

あれこれと乗り鉄のこだわり
でも著者が訴えたいことは

 東京を中心に活動しておられるので、紹介される鉄旅は基本的に関東エリアなのですが、普段通勤通学で利用している路線でさえ、著者の手に掛かれば素敵な日帰り旅になります。
 西武鉄道の特急レッドアロー号に乗って目指すのは秩父の芝桜。私鉄では日本で二番目に長い正丸トンネル(四八一一メートル)など、こまやかな車窓解説を交えながら、現地までの案内が綴られます。そして特急料金を含めても往復二七四〇円というお手軽さ! 格安海外旅行と比べても、その十分の一以下程度の値段で行けるのですね。
 また、近年流行になっているという、全国ローカル線のイルミネーションに着目した鉄旅も紹介されているのですが、「こだわり」を感じるのは、湘南モノレールに乗って江ノ電のイルミネーションを見に行こうと誘うところです。
 東京から江ノ電なら、東海道線や横須賀線で行けるのに「敢えての湘南モノレール」。これはアップダウンの激しい丘陵地帯を懸垂型(ぶら下がっているタイプ)のモノレールが疾走するスリルを運転席のうしろから見てほしい、という乗り鉄ならではのこだわりがあるのです。さらに「夕方以降は避けよう。客室との仕切窓に光反射対策の暗幕が下りてしまう」という注意点も。ここまでこまやかな指摘も「ならでは」と言えましょう。
 日帰り以外に、ちょっと足を延ばした鉄旅もなかなか興味深いものがあります。
 JRの普通列車に限り、一日乗り放題×五回分セットという「青春18きっぷ」を使った旅の章では、夜行快速に乗って松本まで赴き、乗り換えまで時間があるので上高地方面まで行く私鉄に乗っています。私鉄の終点で上高地へ向かう多くの観光客を見送り、氏は一人だけの乗客となって松本へ戻っていくのです……これぞ「乗り鉄」。そのあと「日本三大車窓」区間にある姨捨(おば すて)駅ではスイッチバック方式の紹介。小海線の「JR線最高駅」である野辺山(の べ やま)駅では、駅でなく、「JRの最高地点」の踏切までレンタサイクルで行ってみようと誘います。
「鉄」的な素養がなくても、その旅の先々にある興味深いスポットを読んでいるうちに、なんだか自分も「鉄」なのではと錯覚してしまうかも、です。
 たとえ「鉄」でなくても、本書にはまだまだ魅力的な部分があります。そのひとつが向かう先々のグルメです。横須賀ではご当地グルメ「ネイビーバーガー」に舌鼓(した つづみ)を打ち、長野県の小布施(お ぶ せ)では名産の栗を使ったソフトクリームに魅了されます。箱根登山ケーブルカーで向かった十国峠では「わさびソフトクリーム」が待っていました。これ、ご当地でしか味わえないものです。
 でも、著者が訴えたいのは鉄旅の「目的」と言えるのではないでしょうか。たとえば海外旅行で景勝地に到達しても、天候不順でせっかくの景色がまったく見えなかった。お目当ての店が満席だったり、臨時休業だった……なんてこともあり得ます。しかし鉄旅は「鉄道を使って旅をする」こと自体が目的ですから、ほかの要素が残念だったとしても、楽しみがあるというわけです。
 というわけで、「乗り鉄」「鉄旅」について紹介しているこの本、日常を脱却するアイテムとして手にとってみる価値は十分にあります。同書を手に今週末あたりいかがですか、鉄旅。

 

『GINGER L.』 2014 SPRING 14号より

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