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2008.09.01

雨宮塔子の食事日記14

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記14

7月9日

 母の誕生日に小包みが届く。知人の香典返しに頂いたMデパートのギフトカタログの中から、父が選んだものらしい。日本では結婚式の引き出物ばかりか、今や香典返しの品ですら、自分で選べる時代なんですか!? 今の今まで知らなかったっす。
 パリではいわゆる“香典”のしきたりがない。先日、あるフランス人の友人のお母さまの訃報を聞き、香典を包んだのだけれど、たいそう驚かれてしまった。その驚きを伝える手紙には、それでも母の死を悼んでくれる気持ちがどんなに胸に響いたか、綿々と綴られていた。手紙はもちろん嬉しかったけれど、大切な人を亡くし、深い悲しみに沈む中、こんなに丁寧な手紙を書かせてしまったことに、むしろ心が痛んだ。

 香典は気持ちなのだから、一方通行で構わないと思うのだ。でも、特に義理固い日本人の気質上、そうはいかないのもよくわかる。そういう意味では、ギフトカタログの存在は理にかなっているのかもしれない。少なくとも、傷心のご遺族に香典返しの品選びにかけるエネルギーは費やさせずに済む。
 物珍しくて、この戴いたギフトカタログをパラパラとめくってみた。ところどころに父が貼ったとおぼしき付箋がついている。
“京都M亭のすきやきセット”
“活車海老の箱詰め”
“毛蟹とたらば蟹のフレッシュ詰合せ”
 ゲッ……。カタログには、ほかにも銘陶の食器セットや家電機器、装飾品なども載っているのに、見事に食べ物一辺倒……。私の食い意地のルーツは、この辺から来ているに違いない。
 小包みの正体は“但馬牛アミ焼用”だった。子連れでの里帰り中なので、母の誕生日に皆で連れ立って外食に出るのも難しいと思ったのだろう、但馬牛で父なりに祝おうとしたのだ。
 お肉を焼く係を買ってでる。牛肩肉やもも肉など、様々な部位がきれいに並んでいる。霜の配分も微妙に違うが、どれも繊細な入り方だ。ちなみにパリで行きつけのお肉屋さんでも、近頃和牛が陳列されるようになった。プレートにはその名も“神戸牛”とストレートに表記されている。
「これ、うまいよ、うまいよ」
 陳列ケースの前で立ち並ぶ前後の買い物客に、ついつい勧めてしまう。松阪牛、飛騨牛、そして但馬牛もこうして当たり前のようにパリジャンの前にお目見えすればいいのにな。
 但馬牛は期待通りの美味しさだった。ステーキソースも付いていたけれど、素材そのものの味を味わいたくて、マルドンの塩(お気に入りのイギリス産のクリスタルシーソルト)を少しかけるか、もしくはカマダのだし醤油をちょんちょんと落とすぐらいでいただいた。
 は──、満足。これだけの量を食べても、もたれずすっきりしているのは他にはなかなか無い。
 さて、次は何を頼んでくれるの? 遅ればせながら“お取り寄せ”にはまりそうな今日この頃です。

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