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2008.10.01

雨宮塔子の食事日記16

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記16

9月2日

 年々時差ボケがひどくなって困る。子供に昼寝をさせようと寝かしつけているうち、自分も寝入ってしまい、そのまま親子三人、夕御飯も食べずに朝までぐっすり、なんてことはザラ。先日は先日で、帰国後二日も経った頃、ようやく意を決して荷ほどきを始めたものの、まぶたの重力に負けて何もかも投げ出して寝てしまった。深夜過ぎに帰宅した彼が、玄関に広げっぱなしのスーツケースやダンボールをなにやら片付けているような物音が聞こえたけれど、からだを起こす気力がどうしても湧かなかった。一応今のところ離婚を切り出されてはいないから、彼の懐の深さに感謝しなくてはいけない。
 この時差ボケと共に夏の終わりの風物詩になっているのが、ヴァカンス帰りの友人たちからのお土産だ。中でも楽しみなのが、毎年みずから四駆を運転してイタリアに渡るノリノリ(お向かいに住む関西人マダム)からの手土産。変わった形の乾燥パスタやトスカーナの友人の畑でとれた手作りのオリーブオイルなど、旅先で回った土地ならではの品々が届く。
 今年はこうしたイタリア土産のほかに、フランス国内に入ってから立ち寄ったアヌシー(フランス南東部、アルプス山脈中の保養地)のオーベルジュで買ったというチーズが入っていたのだが、これがもう、今まで食べたチーズの中でも最高のヒットを飛ばすものだった。チーズでトムと言えばサヴォワ地方のものが有名だけれど、頂いたこの“Tomme crayeuse”(トム・クレイユーズ)は聞いたことがなかった。口当たりはまろやかで、かすかにロックフォールのような味わいもするから、原料のミルクの割合は牛乳と羊乳の半々ぐらいかもしれない。
 夜中に帰ってきた彼とさとちゃん(間もなくパリ滞在丸1年を迎える彼の仕事のパートナー。177cm、体重は100kgを超すグルメちゃん)とで、このチーズをつまみ、ワインを空けていると、パリに帰ってきた感がしみじみとする。パリの、我が家に。子供たちと私が日本に帰省しているほぼ二カ月の間、こうして男二人で毎晩酒盛りをしていたらしい。なんだか楽しそうだな。
「パワーアップしたマカロン、食べてみてよ」
 うわっ、なにこれっ!? 夫バカかもしれないけれど、彼のショコラのマカロンはただ者ではないと思う。去年はマカロンコンクールが行なわれなかったので、一昨年のジャン=ポール・エヴァンさんに次いで二位という結果の雪辱が果たせなかったけれど、今年は行くよー。
 私は何も貢献してないけどね。待ってて、ジャン=ポール。なんつって。

 ショコラのマカロンとミラベル(黄色い小さなプラム)の組み合わせ、知らない方は是非お試しを。こっくり濃厚なマカロンを食べた後、夏の終わりから秋口にかけてしか出てこないこのミラベルの果実を口に含むと、両者がこれでもかと引き立て合って、ワインとチーズ並みのマリアージュが生み出されるのです。

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