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2014.03.20

久住昌之と土山しげるのタッグに腹が減る理由

南 信長(マンガ解説者)

久住昌之と土山しげるのタッグに腹が減る理由

久住昌之が描く“食の悲喜劇”

 久住昌之と土山しげる。どちらもグルメマンガ、とりわけいわゆる「B級グルメ」の世界において巨匠と呼んでもいい作家である。しかし、その来歴は正反対と言っていいほどに違う。

 久住のデビューは1981年。作画担当の泉晴紀(現・和泉晴紀)との共作ペンネームである泉昌之の原作担当としてマンガ界に最初の一歩を記した。伝説のマニア誌「ガロ」掲載のデビュー作『夜行』は、夜行列車で旅する男が駅弁をいかに攻略するか、というだけの話をハードボイルドなタッチで描いた怪作である。

 物語冒頭、いきなりページいっぱいにドーンと描かれる幕の内弁当。雑誌サイズで見ればほぼ実物大で、インパクトは絶大だ。その弁当を前にして、カツ、サバの塩焼き、卵焼き、キンピラゴボウ、カマボコ、昆布、漬け物といったオカズをどんな順番で食べるか、オカズとごはんの配分はどうするか、主人公は熟考する。

〈我々はすでにめしとの戦いに於いて………たまご焼きとカマボコを失っている。キンピラも残り少い〉といったモノローグは、まさに戦況を語るかのよう。誰もが多少は考える食事の段取りではあるが、まあ、どうでもいいといえばどうでもいい話である。それを極限まで突き詰めたバカバカしさが、共感と忍び笑いを誘う。

「夜行」扶桑社文庫

 初単行本『かっこいいスキヤキ』のタイトルの由来ともなった『最後の晩餐』('82年)は、すき焼きの肉をめぐる攻防戦がモチーフだ。

 『夜行』同様、ドーンと見開きで描かれるすき焼き(おそらくマンガ史上最大)は、主人公の心象風景を表すと同時に、読者の視点を主人公と同化させる。本当は思う存分肉を食いたいのに、ただ肉ばかり食べるのはみっともないと考える彼は、シラタキに包んだり豆腐にはさんだりするカムフラージュ作戦で肉をゲット。無遠慮に肉ばかり食うデブには、死角に肉を隠す作戦で対抗。しかし、肉はどんどん減っていき……。

〈みんなテメーがどれだけ肉喰うかばかり考えやがって〉と心の中で叫ぶ主人公の姿は滑稽だが、よほど育ちのいい人でない限り、身につまされる部分はあるはずだ。

「最後の晩餐」扶桑社文庫

 こうした“みみっちい食の美学”や“食にまつわる悲喜劇”を大真面目に描くスタイルは、30年以上経った今も基本的に変わっていない。谷口ジロー作画の『孤独のグルメ』('94~'96年、'08年~)にしても水沢悦子作画の『花のズボラ飯』('09年~)にしてもそうだし、泉昌之名義の近作『食の軍師』('09年~)では『夜行』をセルフパロディにしたエピソードも披露している。

 久住にとって食というテーマはデビュー以来一貫したものなのだ。

『孤独のグルメ』扶桑社

 

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