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2014.03.26

特集 『野武士のグルメ』を味わい尽くす

大根仁×久住昌之対談
最終回 “野武士”とは自分だけの食を大事にする人

大根仁/久住昌之

大根仁×久住昌之対談<br />最終回 “野武士”とは自分だけの食を大事にする人


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食べ物に至る道中が大事

大根 ところで、普段の生活の中で、ネタ探し的にお店を探し歩くなんてことはあるんですか?

久住 締切が迫ってくると、ありますよ。「何かないかなぁ」と知らない街に出かけたりします。降りたことのない駅で降りてみたり。「ホントに何もないなぁ」というオチで帰ることもありますけど、たいていは何かある。で、これで一本できるかなと帰宅してみて、「やっぱりダメかな」ってこともある。ただ、やっぱりダメだった、という経験が足されているから、意味が無かったってことはまず無い。失敗も、別の時に必ず役立つ。

大根 失敗とは、具体的にどのような?

久住 帰って写真を見返してみたら「道中のあの路地、ぜんぜん撮ってないじゃん」と初めて気付いたり。
 みんな、食べ物のマンガだから食べ物にこだわって見てしまいがちだけど、食べているコマなんて、せいぜい5、6コマ。多くても2ページくらいですからね。むしろ、食べるまでの流れや、食べているまわりの空気のほうが重要。たとえば店内の様子や、そこに至るまでの道のりなどがちゃんと描かれていないと、おいしそうじゃないし、面白くもなんともないんですよ。

大根 背景や経緯がちゃんと見えるからこそのリアリティ、というのはわかりますね。

久住 たとえば『孤独のグルメ』だと、谷口さんには100枚、200枚なんて単位で写真を渡します。谷口さんは、それをもとにきっちり細密な店の中を表現してきます。あそこまで描かないと、読者に主人公の気持ちが伝わらないっていうんです。

 一方、『野武士のグルメ』の土山さんの場合は、渡しているのは僕のエッセイ1冊だけで、コンテも写真も渡していません。土山さんは視覚情報ゼロからあれだけの世界観をつくりあげているんですね。これまたスゴイことですよ。その構築力には毎回感心させられます。たとえば、『野武士のグルメ』に収録された『雨漏りのコの字カウンター』という話では、天井を取っ払わないと見られないような、カウンター全体を真上から見下ろすようなカットを挟んできたりして、「おぉ、スゲェ」と驚かされたりするわけです。写真には撮れませんよ。

大根 なるほど。最近、俺自身はあまり店の新規開拓ができていないんです。年をとるとだんだんテリトリーが狭まってきて、飲みに行く店とか絞られてくるじゃないですか。だいたい7、8軒をぐるぐる回っているだけになってしまった。だから余計に、新しい店を開拓しなきゃいけないな、と思ってはいるんですけどね。

 それでも、昼メシについてはいろいろチャレンジしてますよ。『野武士のグルメ』のタンメンの回(『タンメンの日』)に出てきたような町の中華屋とか、最近はどんどんなくなってしまうから、そういうお店には積極的に入ってみたり。

久住 その手の魅力的な店がどんどんなくなってしまうから、見つけたときに入っておきたいですよね。
 あと、僕の場合は仕事で地方に行くことも多いので、そこで店探しをするときは本当に楽しいですよね。ぜんぜん土地勘のない、まったく知らない路地をさまようように歩いたりするのは、地方の醍醐味ですよ。今はそれがいちばん、漫画のコヤシになっているかもしれない。

大根 そうやって店を探し歩いているときの久住さん、きっと超カッコいい顔してると思いますよ。

久住 そんなことないですよ! うろうろ歩き回りながら、ものすごく恥ずかしい顔をしていると思う。『釜石の石割桜』に登場した店を見つけたのも、さんざんうろついた果てにようやく辿り着いた感じなので。途中、キャバレーの客引きに「この先に行っても何もないよ」「あ、戻ってきた。ね、何もなかったでしょ? だから、ウチどうっすか!」な
んてイジられたりしながらね(笑)。
 

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