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2014.03.19

特集 『野武士のグルメ』を味わい尽くす

大根仁×久住昌之対談
第1回 「食」は、あれこれ悩む姿がおもしろい

大根仁/久住昌之

大根仁×久住昌之対談<br />第1回 「食」は、あれこれ悩む姿がおもしろい


苦労して考えた末に生まれた「リタイヤした男性」

原作者の久住昌之さん。大根仁さんときちんとお話するのははじめて
 

久住 今日はよろしくお願いします。大根さんとは、以前飲み屋で偶然お会いして、軽く挨拶した程度でしたよね。

大根 こうしてちゃんとお話をするのは初めてですね。だから、この対談がとても楽しみでした。昔から久住作品のファンだったので。実は前々から「『孤独のグルメ』を映像化する際には、ぜひ自分が監督したい!」と公言していたんですよ。

久住 おぉ、そうだったんですか。嬉しいなぁ。

大根 ただ、結果的には実現できなかったんですけどね(苦笑)。僕はマンガや小説を映像化する、いわゆる原作モノの作品を手がけることが多いのですが、せっかく映像化するのであれば、独自の世界観とか、動く画だからこその表現をしてみたいんです。
 だけど、谷口ジローさんの画の存在感は本当に強烈で、読めば読むほど、どう頑張っても谷口さんの画にはかなわないという結論にいたり、諦めました。いろいろアイディアはあったんですよ。主人公の井之頭五郎は昔の風間杜夫みたいな感じ、とか。

久住 「昔の」ってのがいいね(笑)。そうそう、僕は個人的に『新さん』を映像化するなら、ぜひ大根さんに監督をしてもらいたいんですよ。本当にお任せで、どうぞ好きなように表現してください、と。

映像ディレクターの大根仁さん。久住さんは『新さん』の映像化はぜひ大根さんとアピール

大根 え、ホントですか!? いや、機会をいただけるなら、ぜひに。でも、久住さん関連の作品は「やりたいなぁ」と思っていると、先に他の方に手を付けられてしまうことが多いんですよね。

久住 それで、今回は『漫画版 野武士のグルメ』の話を中心に進めていければと思っているのですが、この作品はとにかく、土山しげるさんの画が本当にいい。僕は、自分の原作で描いてもらう場合、基本的にはお任せで好きに描いてもらうんです。その人が楽しんで描いてくれたほうが、絶対に仕上がりもよくなるし。

大根 なるほど。



久住 ただ第1話(『九月の焼きそビール』)あたりは、かなり僕の原作を意識してくださった仕上がりでしたよね。それで「もっと土山さん流にやってもらって構いませんよ」と話しているうちに、だんだん調子が出てきた感じで。どんどん面白くなっていきましたから。

大根 話数が進むにつれて、どんどん画の風合いが変わってくるな、と感じました。1話あたりだと、何となく谷口ジロー的な雰囲気が残っている印象で。でも、どんどん土山しげるテイストが出てきて、ますます面白くなっていった。
 『孤独のグルメ』も『野武士のグルメ』もぞれぞれ魅力的なんですけど、自分の年令的なこともあるのか、『野武士のグルメ』を読んだときのシックリ感が、すごく心地いいんですよ。それに『孤独のグルメ』の井之頭五郎は、なんだかんだ言ってモテるタイプだから、モテない男としては、どこか嫉妬してしまうところがある。その点、『野武士のグルメ』の主人公・香住武は、しっかり枯れた定年後のオジさん。それがまた魅力的なんです。

久住 『野武士のグルメ』は、僕が書いた同タイトルの食エッセイ集(晋遊舎刊)が原作。香住武は、マンガ版オリジナルの主人公なんです。さらに付け加えると、『孤独のグルメ』の最初の単行本と、その文庫版(どちらも扶桑社刊)に掲載されていた『釜石の石割桜』という短編が『野武士のグルメ』のそもそものルーツになっています。『孤独のグルメ』に掲載された文章ではあるけど、より僕に寄せた感じで書かれた作品なんです。

 

 エッセイ版『野武士のグルメ』は、いわば僕のひとり語りで全編が描かれているので、土山さんは主人公をどう描くか、ちょっと悩まれたみたいです。僕を主人公としてそのまま出してしまうと、そのキャラクターに縛られてマンガ版ならでは自由度がなくなってしまう、と。それで、いろいろ苦労して考えた末に「最近リタイアしたばかりで、時間を持てあましている60代の男を主人公にするなんてどうですか?」と発案してくれたんです。「それ、いいですね!」と僕も大賛成しました。
 

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