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2008.08.01

雨宮塔子の食事日記13

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記13

6月30日

 今日は明日に控えた日本への里帰りを前に、お土産の調達日に充てている。同じ年頃の子供を持つ友人たちへの子供服や、結婚した友人へのお祝いのプレゼントは、すでに用意しているけれど、食料品のお土産はやはり帰国日前日に回らなければ。里帰りしてすぐに顔を合わせられるとも限らない人たちに、できるだけフレッシュなものを味わってもらいたいから。
 幼稚園の年中さんにあたる娘を幼稚園に送り届けると、その足でモンパルナスにある“Pascal Beilleuaire”(パスカル・ベイユエール)へ向かう。なにせ朝も8時30分から営業しているのだ。ここはフロマージュのお店なのだけれど、たいていのチーズ屋さんが朝早くから店を開けているのかといえば、そうではなくて、ここは例外的な方。“Dome”(ドーム)という魚介類で有名なレストランと、併設の魚屋さんが隣接しているので、その河岸からの搬入時間に合わせてパスカルさんも店の暖簾を掲げていると読んでいる。まったく根拠はないけれど……。
 とにかく、このチーズ屋さんのバターが美味しい。キャラメルの風味がするので勝手に“キャラメルバター”と呼ばせてもらっているそれを、前回の帰国時には、テレビ番組で紹介させてもらった。日本テレビの木梨憲武さんの番組、「未来創造堂」でだ。
 事前に知らせていたわけでもないのに、友人Mは偶然にもその番組を見ていたらしい。食べ物好きが相手だと、いきおいお土産選びも燃えるけれど、特に彼女は学生時代にフランスに留学していたこともあるので、フランスの食材にも一家言持っているのだ。私が番組で紹介したバター数種類もすべて暗記していた。
「日本ではいまや○○のバターさえないのよ」
 乳製品好きの彼女には、いまの日本の乳製品市場の状況はおそらく耐えられないのだろう。Mちゃん、このキャラメルバターを持ち帰ってやるけんねー。
 このキャラメルバターはなにせ賞味期限が短い。木梨さんの番組への出演の際も、私がフランスから飛行機で持ち帰ろうとも思ったのだが、帰国してから番組収録時まで間があったので、それでは賞味期限が切れてしまうということで、パリ在住のコーディネーターさんから空輸してもらうことになり、バター本体の値段より、40倍はする空輸代諸々の方が物議をかもしたのだった。
 賞味期限の一番長いものを選ぼう……。棚の奥までまさぐるも、そこに陳列されたキャラメルバターは一律7月13日までだった。たぶん、賞味期限は2週間なのだろう。昨日はお店の定休日だったので、いまここにあるのはすべて卸したてのものに違いない。
“BARATTE”と呼ばれる木樽の中で、機械でなく、手でこねて作られるこのバター、キャラメルの風味はこの木樽の香りが移ったものだ。昔ながらの製法にこだわり続けているので賞味期限も短いのだろう。無塩、有塩と2種類あるけれど、私は有塩が好き。キャラメルのほのかに甘い風味が、“Noirmoutier”の塩の花によって引き締まるから。
「“スーピッドゥ”にして下さい」
 真空包装のことをこちらでは“emballage sous vide”と言う。

“un emballage sous vide,s’il vous plait”といえば、大抵のチーズ屋さんでお土産用に真空包装にしてくれるので、一度お試しあれ。ちなみにパスカルさんのところはひとつからでも真空包装にしてくれます。
 時計の針が十四時を回ったのを確認して、今度はマドレーヌ界隈に車を飛ばす。行き先はバスク地方の食材店、“PIERRE OTEIZA”。
 本当は、キャラメルバターを調達した足で向かいたかったのだけれど、一応店に連絡をしてみたら、注文しておいた品は届いてはいるものの、まだ荷ほどきをしていないとのことで、14時頃来店するように言われたのだ。
 バスク地方の地豚を専門に扱うこのお店の“MAGRET DE CANARD FOURRE AU BLOC DE FOIRGRAS”を指名買いするようになって早1年が過ぎた。以前、このブログにも登場した“TSU TSU”というブティックを経営するヒロミちゃんの家で、バスクのフォアグラを食べたノリノリ(お向かいに住む関西人マダム)から「無茶苦茶美味しかった」と聞かされたのが、きっかけと言えばきっかけ。
 バスク地方に本店を構える“PIERRE OTEIZA”がパリにも支店を持っていることを調べ上げ、足を向けてみたところ、たまたま試食することができた、このフォアグラの塊を詰め込んだカモの胸肉にノックアウトされたのだ。これぞフレンチ!! それ以来、フレンチとワインに通じる友人へのちょっとラグジュアリーなお土産としても揺るぎない定番の地位におさまっている。
 息子を託児所に預けることのできた先週のとある午後、店に顔を出してみたら30日には新しいものが入荷するとのことで、迷わず注文し、今日出直す運びとなったのだった。賞味期限は製造年月日から1カ月。これなら帰国してからもお土産渡しに焦ることはない。すでに真空包装されているから、先に調達したバターと一緒に、空港へ向かう直前に冷蔵庫から取り出して、保冷バッグに詰め込み、そのバッグごとスーツケースの中に収めればいい。
 おっと、ほの辛甘いジュレの瓶を買うのも忘れずに。そのまま薄く輪切りにしたフォアグラ&カモにこのespeletteの唐辛子ベースのジュレがまたなんとも言えず合うのだ。フォアグラには玉ねぎを甘く煮詰めたものや、プルーンやいちじくといった果実の糖分が好相性なのは周知の事実だけれど、そういった甘みに、かすかな辛みが加わっても美味なのを知ったのは、実はこのジュレに出合ってから。家ではこのジュレが余ると、フォアグラ以外にも軽くトーストしたパンにつけたりして楽しんでいます。

 輪切りと言えば、パッケージには“6mmの輪切りに”と表示されているけれど、私的には3mmぐらいが好み。 供する頃にはお皿の上でうっすらフォアグラの脂肪分が溶け出したカモ&フォアグラの旨味が、ほのかな酸味と甘み、辛味が“三味一体”となった絶妙なジュレと合わさって、陶酔の世界へと誘ってくれる。

 

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