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2014.03.27

第10回

無限世界と不完全性定理 後編

大栗 博司

無限世界と不完全性定理 後編

今、私は嘘をついている

 $19$世紀に、無限や極限の性質が解明されてくると、数学の基礎をきちんと考え直すことが大切になった。そのときにお手本となったのは、ユークリッドの幾何学だ。ユークリッドは、「$2$点の間には直線が引ける」「すべての直角は互いに等しい」などの$5$つの規則から出発して、論理的な推論によって、図形の性質を解き明かした。このような推論の基礎となる規則のことを「公理」と呼ぶ。また、公理の集まりを公理系と呼ぶ。

 しかし、ユークリッドの幾何学には不備があった。たとえば、ユークリッドは「点とは大きさのないもののことである」と定義しているが、これは現代数学の見地からすると定義とは言えないものである。また、公理の表現にも厳密さに欠けるものがあった。そこで、ヒルベルトは、ゲッティンゲン大学で$1898$-$1899$年度の冬学期に行った講義で、ユークリッド幾何学の公理を厳密に吟味し、これをまとめた著書『幾何学基礎論』によって、より精密な公理系を完成させた。そして、「数の概念が使えるのなら」、ヒルベルトが整備した公理系には矛盾がないことを証明した。そこで次に問題になったのが、「数の世界には矛盾はないか」ということだった。

 ヒルベルトは、ユークリッド幾何学だけでなく、数の体系を含む数学全体の基礎付けをしようという、野心的なプログラムに取り組むことにした。

 当時、数の世界についても、公理に基づく構成が試みられていた。たとえば、イタリアの数学者ジュゼッペ・ペアノは自然数を定義するために$5$つの公理を考えた。自然数は$1$から始めて、その次の数を$2$、その次を$3$と呼ぶことで、次々に定義していくことができる。これを精密にしたものが、ペアノの公理だ。

 ペアノの公理のうち第$1$番から第$4$番までは自然数を$1$から順番に作っていく方法を決めたものだ。自然数の集合を定義したといってもよい。そして、自然数の集合の中で「数学的帰納法」が使えるということを、第$5$番の公理としている。前節で数学的帰納法を説明したときには、

「$1$から$k$までの自然数について等式が成り立っているとすると、$n=k+1$についても等式が成り立つ。これを繰り返せば、どんな自然数$n$についても成り立つことが証明できる」

などと、当たり前のことのように書いたが、実は数学的帰納法で証明ができるということは、公理として仮定しなければいけなかったんだ。

 自然数の公理系には矛盾はないのか。前編の序文で書いたように、ヒルベルトが$1900$年に出題した$23$の問題の第$1$問は、カントールの「連続体仮説」の証明だった。それに続く第$2$問として、ヒルベルトは、

「算術の公理系の中で、矛盾が起きないということを証明せよ」

という問題を出題した。

 ヒルベルト以前には、数学とは、自然を探求するための道具を作るものだ、と考えられてきた。これに対し、ヒルベルトは、数学の公理系それ自身を研究対象とするという数学の新しい方向を打ち出し、これを「メタ数学」と呼んだ。もちろん、メタ数学といえども何かの公理に基づいていなければいけない。

 そこで、ヒルベルトは、公理系の整合性、すなわち、その公理に基づいた推論で矛盾が起きないことを、公理系自身を使って証明することを考えた。これを数の体系について行えというのが「第$2$問題」だったんだ。


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No Name2014.5.25

一般的なゲーデルの定理の説明ですが,The consistency of the continuum hypothesis についての説明があるといいとおもいます.

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