「同じ無限でも〈大きい無限〉と〈小さい無限〉がある」なんて聞いたら、アタマがグルグルしてきませんか? 「〈1=0.99999……〉という式は正しい」なんて言われて、信じられますか? 有限の脳細胞を持って有限の時間を生きる有限な私たちが、「無限」を尋ねて旅を続けたら、そこはなんとも摩訶不思議な、めくるめく世界が広がっていました……。

 

  米国のロックバンド「イーグルス」が$1976$年に発表したアルバム『ホテル・カリフォルニア』のタイトル曲は、南カリフォルニアの架空のホテルを舞台にしている。砂漠のハイウェーの運転に疲れてホテルに立ち寄った主人公が、入り口に立っていた女性に案内され廊下に向かうと、奥から声が聞こえてきた。

「ホテル・カリフォルニアにようこそ。…… ホテル・カリフォルニアには、部屋がたっぷりあります。年中いつでも部屋があります。」


* * *
 

支配人(以下 支)「ホテル・カリフォルニアにようこそ。私は支配人のダーフィット・ヒルベルトです。当ホテルでは、年中いつでも部屋があります。なにしろ、部屋の数が無限なのですから。ほら、廊下の先をごらんください。部屋に番号が振ってあるでしょう。$1$、$2$、$3$、… と。これが、どこまでも続いているんです。お客様、お疲れのようですね。早速、客室係に部屋を用意させます。」

客室係(以下 係)「支配人、そんな安請け合いをしちゃだめですよ。今日は満室なんです。もうお客様は泊められません。」

支「心配することはない。館内アナウンスのマイクを貸しなさい。」

〈お休みのところ申し訳ありません。皆さん、ご自分の部屋の次の番号の部屋にお移りください。$1$号室の方は、$2$号室に、$2$号室の方は、$3$号室に移動してください。〉

係「$1$号室が空室になりました。」

支「そこに、今いらしたお客様に、入っていただきなさい。ホテル・カリフォルニアは、年中いつでも部屋があるというのが売りなんだ。」


* * *
 

係「観光バスが$1$台来ました。自然数トラベルというマークがついています。」

支「お客様が何人いらっしゃるか、数えてみなさい。」

係「$1$、$2$、$3$、…。いつまでも続いています。どうやらお客様は、自然数全部のようで、無限にいらっしゃいます。ホテルは満室です。$1$人や$2$人ならともかく、無限のお客様なんて、泊められません。」

支「あわてることはない。さて、また館内アナウンスだ。」

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