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2014.03.11

特別企画 神永学インタビュー

「殺生伝 第二部 呪いの姫」スタート!
描きたいのは“絶望感”

神永学

「殺生伝 第二部 呪いの姫」スタート!<br />描きたいのは“絶望感”
 
イラスト 鈴木康士

「心霊探偵八雲」シリーズをはじめ、いま、若者からもっとも支持を得る作家・神永学。彼がはじめて挑戦した時代小説「殺生伝」の第二部が『パピルス』(53号)でスタートした。
物語の鍵を握るのは、人の命を吸う〈殺生石〉という呪いの石を身体に宿す少女と、彼女を助ける宿縁の五人。そして、殺生石を狙う山本勘助。神永学の頭には、いかなる構想が渦巻いているのか?


登場人物を徹底的に追い込みたい

――昨年6月の第一部『殺生伝 疾風の少年』刊行から8か月間経っての連載スタートです。第一部を書かれた時点ですでに続編の構想はできていたのでしょうか?

神永 速いテンポで続編を出すつもりでしたし、シリーズ全体の見取り図はあらかじめ作ってありました。でも、いざ書き始める段になって一旦すべて白紙にしたんですよ。この作品はもっと面白くなるはずだ、という確信があって、ぎりぎりまで考えました。意識したのは、主人公である一吾や咲弥を、徹底的に追い込もうということ。強い感情の揺れ動きを描くために、読者が「この先どうなっちゃうの!?」と心配になるくらい絶望的な状況に追いやろうと思ったんです。そのための伏線を思いついたことで、第二部全体のトーンが確定しましたね。
 

――〈殺生石〉を体に宿して生まれてきた姫君・咲弥と、彼女を守ろうと決意する少年・一吾。出会ったことで少しずつ変わりはじめた二人を、さらなるピンチが襲うわけですね。

神永 この「呪いの姫」はシリーズ全体の起承転結でいうと「承」「転」にあたる部分。主人公たちを絶望に追い込むことで、物語に緩急を生み出したかったんです。最近『ロード・オブ・ザ・リング』を観返していたんですが、あの作品に漂う悲壮感ってものすごいじゃないですか。だからこそクライマックスの盛りあがりが、何十倍にも感じられる。あれくらいの悲壮感・絶望感を出したいという思いがありました。といっても、第二部から手に取った方にも、ちゃんと分かるような物語にしなければいけない。そこは一巻完結型の「心霊探偵八雲」や「天命探偵」のシリーズとはまた違った苦労がありましたよね。
 

――「殺生伝」はこれまで現代ミステリーを書かれてきた神永さんにとって、初めての時代小説です。第一部を読んだファンの反響はいかがでしたか?

神永 とにかく多かったのが「早く続きを出して」という声。「現代ものよりも好きです」という意見もあって嬉しかったですね。ただ、時代小説ということで手に取るのをためらっている方もまだいるようです。時代小説は難しい、という先入観がどこかにあるんですね。
 

――それはもったいないですね! 魅力的なキャラクターとスリリングなストーリー展開は紛れもなく神永印。ファンなら絶対に楽しめるはずなんですが。

神永 そうなんです。ぼくは剣術道場に通っているんですが、そこの先輩たちは逆に時代小説しか読まないという。どうしてかと尋ねたら、「土方歳三の生きざまに惹かれる」「坂本龍馬が好きだ」というんですよ。つまりキャラクターの魅力なんですよね。そこで試しにぼくの現代ものを読んでもらったら、見事にはまってくれた(笑)。キャラクターが魅力的なら、いつの時代が舞台かはあまり関係がないんだな、と思いましたね。このシリーズが時代小説ファンと現代小説ファンの橋渡し役になれればいい、と思っています。
 

――では、神永さんにとって時代小説の魅力とは? 現代ものを書くときとはどんな違いがあるのでしょうか。

神永 キャラクターの感情に深く寄り添えるのが、時代小説の大きな魅力です。現代ではさまざまな制約があって描きにくい感情の動きが、時代ものだとダイレクトに描くことができる。たとえば、大切な人を殺されたとして、殺した相手を憎いと思う、仇を討ちたいと思うのは人間にとって自然な感情ですよね。しかし現代では人を殺してはいけない、という法律があって、直接その感情をぶつけることができない。警察や裁判官にその気持ちを代弁してもらうことになります。それに比べて、戦国時代はもっとシンプルなんですよ。憎い、悲しい、怖い、さまざまな気持ちがストレートに発露できる。一吾と咲弥が旅の途中で感じる孤独感や焦りも、携帯電話やメールがない時代だからこそ強くなるんですよね。
 

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