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2014.03.07

第5回

ポエム蔓延社会はアリか? ナシか?

水無田 気流

ポエム蔓延社会はアリか? ナシか?

 

詩集は売れずとも、ポエムで溢れる日本

 今さらだが、私は(一応)詩人である。

  詩人でもある水無田さん。
  中原中也賞受賞作

 もっとも、職業詩人として成り立っているのかどうかは、正直よく分からない。しかも詩の業界でもかなりハードコアかつストイックな現代詩というジャンルの末席を濁している。現代詩手帖賞をいただいてデビューし、第1詩集『音速平和』で中原中也賞を、続く第2詩集『Z境』(※「ぜっきょう」と読みます)で晩翠賞をいただいた。詩人としては、かなり恵まれているとは思っている。

 というのも、今日本で純粋に詩だけで食べている詩人、というのはなかなかいないからだ。詩集というのはめったに売れないし、そもそもその詩集だってそう出せるものでもない。多くの詩人は、大学で文学を教えたり、あるいは詩だけではなく小説や評論を書いたり、といった収入のほうが、詩の原稿料よりよほど多いはずだ。かく言う私も、詩人としてというよりは、社会評論のジャンルでの原稿や講演依頼のほうがずっと多い。

 だが、最近妙な現象に気がついた。今日本社会は、いわゆる「ポエム」であふれているのである……。毎日チラシに入っているマンションの広告や、テレビで流されるキャッチコピーも何やらポエムだ。いったいなぜだ。詩集は売れないのに、売るためのポエムはこんなに多いのだろう。蛇足ながら、詩は「ポエトリー」であり、私は「ポエット」である。「水無田さんって、ポエマーなんですか?」とよく訊かれるのだが、そのたびに悲しくなるので、ここに記しておく。嗚呼……。

詩集はちっとも売れないけれど、売れることばは詩に似たことば
 売りことばなのに売らないふりして、無駄な抒情をかもしだす
 わたしが詩集をだしたって ポエムのように読まれないけど
 ポエムなことばは あふれているよ
 詩集と、ポエムと、それからわたし
 みんなちがって、みんないい……のか!?

 実はこのお題、先日TBSラジオ番組「Life」の「超絶!ポエム化社会」(*1)でも討議した 。なかなか説明しきれなかった点もあったので、本コラムは捕捉の意味でも書いておこうと思った次第である。ちなみにこれを考察するきっかけとなったのは、小田嶋隆さんの著書『ポエムに万歳!』(新潮社)である。

 同書は、ポエム化する日本社会についての機知に富んだ考察にあふれており、私の駄文を読む以上にぜひ一読いただきたいのだが、その中に、こうあった。「ポエムは、詩ではない」と。「散文でもない。手紙でも声明文でも記事文でもルポルタージュでもない」。それは、書き手が「何かを書こうとして、その『何か』になりきれなかったところのものだ」。だから、「書き手が冷静さを失っていたり、逆に、本当の気持ちを隠そうとしてまわりくどい書き方をしていたりすると、そこにポエムが現出する」と。その典型例として、青年誌の水着グラビアページにつけられた文面があげられている(pp.16-17.)。

 なるほど、直視するのが気恥ずかしかったりごまかしたりするために、過剰な抒情性を煙幕のように張り巡らせる言葉。それが「ポエム」の正体なのかもしれない。

 そういえば、昔かなりブラック気味な専門学校でアルバイトをしていたとき、いきなり大幅時給カットとなり、人事担当者から意味不明な抒情的言葉の説明になっていない説明があったのを思い出した。「これは報酬を下げるということのように思われるかもしれませんが、それでみなさんの仕事の価値が下がるというわけではないんです」とか、「これを機に、みなさんのやる気をお出しいただくことが大切なんです」とか、「みなさまが何から主たる生活の糧を得られているのかは存じませんが、それは当社ではないことをお祈りします」とか、「今後のみなさんの生活を、心から応援しています」とか……。

*1  TBSラジオ「Life」のこの模様は、ポッドキャストでもダウンロードできます。 http://www.tbsradio.jp/life/index.html

 

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