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2009.06.15

雨宮塔子の食事日記28

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記28

5月21日

 5月はパリでも連休が多い。
 5月1日の「メーデー」の祭日が金曜日に重なり、3連休になったのを皮切りに、8日の「第二次世界大戦戦勝記念日」も金曜日で3連休になったばかり。とどめは、復活祭から40日目にあたる「キリスト昇天祭」の今日、21日の祭日。今日は木曜日だというのに、明日の金曜日も“pont”(橋の意。<休日にはさまれた平日を休みにした>連休)にしてしまうという。
 こう学校がないと、困るのは親だ。祭日も関係のない彼の仕事柄、私ひとりで子供を楽しませねばならない。そういえば来週は火曜日にも大々的なストの告知があって、学校がないんだったな。オ・ラ・ラ──。
 とはいっても、5月の中旬に入ると、フランスでは一年中で一番気候がよい時期になるので、この連休も積極的に楽しまなくては。この時期になるとパリジャンがやたらと口にする“profiter”(有効に利用する)という言葉が頭をよぎる。“profiter de soleil”お日さまを楽しもう、といった具合に。
 というわけで、連休初日の今日は、5月に入ってから2回目になるピクニック&テニス。パリはヴァンセンヌの森にある“Parc Floral”(花の公園)には21面ほどのテニスコートがあって、予約さえ取れれば1時間7.5ユーロで一面が借りられる。予約が取れなくても、テニスコート脇で待機していると、空きがあれば早いもの順でゲットできるのだ。待機といっても、テニスコート周辺の芝生でピクニックしながら待てば一石二鳥、というわけで去年から定例行事になりつつあるものなのです。そうそう、このイベント参加メンバーは前々回のブログでも書いた、ジト(宿泊所)合宿メンバーです。
 友人たちの中に究極の“晴れ女”か“晴れ男”がいるのか、昨夜の天気予報では雷雨情報すらでていたのに、起き抜けに見上げた空は、曇り空から一条の陽光が差し込んでいた。
(よっしゃ、ピクニック決行だね……) 
 ひとりごちたものの、今回はお弁当作りに焦る必要はない。この企画では、ひとりずつおにぎりやらサンドイッチやらおかずやらをなにか一品、持ち寄らねばならないのだけれど、総人数も20名近くなると、一品作るだけで、けっこうな労力を必要とする。前回は私はいろいろなキノコのマリネを作ったのだが、キノコの風味を消してしまわぬよう、マルシェで山と買い込んだキノコ類をひとつひとつ布巾で拭き上げていたら、腱鞘炎になりそうになったぜよ。
 今回は連絡メールの中に、
“(持ち寄るものが)重ならないよう、(メニューが)決まっている人は教えて下さい。ご飯類、サンドイッチ類、お菓子……”
 という文字を見つけ、いつもは返信が遅くて叱られる私が、即座に返信メールを打ってしまった。
“手前勝手ですが、お菓子でいいですかー?”
 と。お菓子、すなわちデザートも一品として数えてもらえるのなら、それに越したことはない。お父ちゃん、ごめんね。
 昨夜彼が持ち帰ってくれたものは、マドレーヌ二種とキャラメルのマカロン。それから、前回“おまけ”で持って行って好評だったシンプルなサブレビスケット。うれし──。
 でも、もう次回からは甘えられない。彼自ら腕を振るっているのかと思いきや、なんとラボ(工場)の製造部門で働いて間もない田代クンに、マドレーヌ作りは振られてしまったらしい。田代クン、仕事を増やしてしまってごめんなさい。
 これらのお菓子に、飲み物、それから紙皿に紙コップ、敷物などを持って、車のトランクに詰め込む。ラケットはいつも友人たちのを借りているから、そろそろマイラケットを買わないとな。
 途中ではっちゃん母子(ジトの幹事だった友人)を拾ってヴァンセンヌの森に着くと、集合時刻の13時から、すでに30分ほど遅れてしまっていた。
 まずいっ……。いつもの場所に着くと、半分以上のメンバーがすでに敷物を敷いて待っていた。もちろん“おあずけ”の状態で。その後、さらに30分くらい待って、あと一組を残すだけとなった時、もう待ち切れず、皆で作ってきたお弁当を広げ始めた。

 さすがは“ジト”チーム。料理にもセンスある人が多いせいか、持ち寄るものも豪華です。カラスミを自由自在に操るノリノリ(お向かいに住む関西人マダム)は、そのカラスミの他に、梅ジソや卵、鶏そぼろを散らしかけた、変り種おにぎり。まほちゃん(唯一、私より年下のバイヤーの友人)は、“Asperge sauvage”(野生のアスパラガス)を贅沢に盛り付けたちらし。
 よりちゃん(「ティー・ヤマイ」オーナー夫人)は、おばあちゃんのレシピで作ったという、自称“60年前のミートボール”、ますみさん(讃岐うどん店「国虎屋」さんオーナー夫人)は鶏の唐揚げに、チャプチェの二品。
 それから、何といっても凝っているのがパンチーム。
 料理好きのロッカー、ヒロミちゃんが用意したものは、自称“購買部のパン”。ロールパンに焼きそばを挟んだ焼きそばパンに、郷愁が漂う。でも、パン・ド・カンパーニュ(田舎パン)にマスタードを利かせたヒレカツをぶつけるあたりは、購買部どころか、表参道あたりのフレンチカフェの軽食メニューみたい。

 前回、“ハムカツサンド”が絶賛されたはっちゃんは、今回は海老バーガーとカレーパン。海老バーガーとは、ガーリックオイルで千切りにしたじゃが芋と海老をカリカリに焼き、(ガレットですね)それにパルメザンチーズを利かせて、マヨネーズ和えの千切りキャベツと共にバンズパンで挟んだもの。カレーパンは、ひき肉と玉ねぎを炒め、カレールーとケチャップで味付けをしたドライカレーに近い具をのし棒で伸ばした食パンに挟み、端をフォークで潰してくっつけてから、揚げたのだそう。脱帽です。

 これらを作るのに、今朝は何時に起きたのだろう? それなのに、きちんと集合時間に来て、佇まいも穏やかに笑っている。遅れた人を責めることなく、こんな大仕事をしたことを誇示することもなく。格好いいな、と思う。何も作っていないくせに、30分も遅れた私には、まだまだ遠い領域だけど、遊びひとつとっても、皆で楽しむためには個人の労力を惜しまない、彼女たちのような大人の女に、私もなりたいと思う。
 パリジャンの時間のルーズさも、嫌いではない。集合時間はあってないようなバラバラの到着は、それなりに気兼ねがいらない。皆もいちいち待つことはなく、思い思いに始めていればいいのだから。でも、私はやはり日本式を愛している。到着時刻を逆算して、温かいものはできるだけ温かいうちに食べさせたいと思う、見えない想いを。
 ご馳走と、そうした想いで膨れたせいか、今日はテニスの方はそうはかばかしくなく……。次回はマイラケット持参で気合いを入れます!!

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