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2009.09.15

雨宮塔子の食事日記33

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記33

8月8日

 “ラファイエット・グルメ”(“ギャラリー・ラファイエット”というデパートの食品館)で彼がフロマージュを買ってきた。パリの我が家の近くには、MOF(フランス最優秀職人=国家認定資格)の称号を持った職人さんのいるフロマージュリーがあるのだけれど、この“ラファイエット・グルメ”のフロマージュコーナーもレベルが高く、ラファイエットに行く際には必ず買って帰る。
 数あるフロマージュの中でも特にお気に入りなのが、マリー・アレルの名前のついたカマンベール。1790年にフランス革命でイギリスへ逃亡を企てた修道僧のひとりがノルマンディの農家にかくまわれたのだけれど、その農家のおかみさんが、マリー・アレル。滞在中、その修道僧が伝授したブリの製法を改良した彼女は、カマンベールを発明した人とみなされている。
 彼女の名前を冠しているだけに、さすがに美味しい。カマンベールを買うのはなんだか平凡で損したような気分になってしまうセコイ私を変えさせた一品だ。カマンベールとは思えないトロリとしたテクスチャーとその風味の濃さに、初めて食べた瞬間は衝撃を受け、以来、人の家にお呼ばれした時の、定番のお持たせとなっている。これはすべてのフロマージュにいえることだけれど、食べる頃合いを見計らって、室温に戻しておくことがポイントだ。トロットロの状態で味わえる。
 ちなみに、このままでさんざん味わった後は、我が家では彼の“fruits des bois”(木になる赤い実のフルーツ)とアール・グレイのコンフィチュールとを合わせて食べるのが通例になっている。カシス、フランボワーズ、ブルーベリー、ブラックベリー、スグリといった赤い実のフルーツにアール・グレイの風味を利かせたコンフィチュールを、カンパーニュ(田舎パン)の上に無造作に置いた“マリー・アレル”に添えて食べるのが、もぉー、くうぅーなのです。おやつとしても、あるいは適当なデザートがない時にも、重宝します。

 今日彼が買ってきたフロマージュは、定番の“マリー・アレル”の他に3種。24カ月(熟成)もののコンテと、ブルー・デ・コース、それに癖のあるトルゥ・デュ・クリュ。ブルー・デ・コースはルエルグ地方のもので、青カビの付き方もほどよく、絶妙なバランス。幼稚園の給食でも鍛えられているせいか、6歳と4歳のうちの子供たちは、ブルーだろうが、がんがん口に入れる。さすがにトルゥ・デュ・クリュのリピートはなかったけれど。
 ちなみにトルゥ・デュ・クリュはブルゴーニュ地方、コート・ドール県を産地としていて、牛乳を原料としたウォッシュタイプのフロマージュ。表面がオレンジ色をしているのが特徴で、見かけはエポワスの小型版だ。今日のフロマージュの中では一番癖があるので、味わう順番としては、これを最後にするのがいいかも。
 赤ワインを飲みながら、こうしたフロマージュを味わい、日本からパリに帰ってきたのだと実感するのも、もう何年目に入るだろうか。いつもだと、ここにさとちゃん(彼の仕事上のパートナー。新しく建てたこちらの菓子工場の立ち上げのため、1年半以上、パリに滞在していたのだけれど、再び日本の彼の会社を手伝うため、5月の末に帰国した)もいて、どうでもいい話をしながら、一緒にフロマージュを楽しんでいたのだけれど……。そういえば、“マリー・アレル”を初めに買ってきてくれたのは、ほかならぬさとちゃんだったっけ。
 さとちゃんの次の来仏予定は、“salon du chocolat”(サロン・ドゥ・ショコラ。年に1回のチョコレートの見本市)が催される10月中旬。その時にはとりあえず、この“マリー・アレル”も一緒に迎えてくれるだろう。

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