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2009.11.15

雨宮塔子の食事日記37

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記37

10月13日

 パン好きの私に朗報が!! 久しぶりに美味しいパン屋さんの新たなアドレスが増えたのだ。
 先日、パリから車で2時間ほどの所に位置するペルシュという地方に行ってきた。ペルシュロン種の馬を産することでも有名な“campagne”(田舎)だ。
 ここに広大な土地を買って、野花の栽培にあきたらず、牛や馬なども飼っているフローリストのカールの家を訪ねたのだけれど、お昼時に訪れることになるので、向こうの気を遣わせないように、サンドイッチなどを買っていこう、ということになった。

 家の近くに美味しいパン屋さんがあるから、出発前に適当に見繕って買っておくと言ってくれたのは、フラワーデコレーターのじゅんちゃん。夫の店のフラワーコーディネイトをしてくれているじゅんちゃんには、素敵な花屋さんを教えてもらったり、子供たちの面倒さえ見てもらったことがある。私が足を向けては寝られない人のひとりなのだけれど、今回カールの家を訪れる好機を得たのも、ひとえにじゅんちゃんがカールの友人だったから。カールが昔の農家を買い取って、自分でリフォームしているという話を聞いて、「見てみたい」と目を輝かせた私のために、その場でカールに連絡を取って、約束を取りつけてくれたのだ。
 そんなじゅんちゃんに、結局お昼の調達までさせてしまうことになってしまった。が、そのじゅんちゃんセレクトのサンドイッチの美味しいこと!! この美味しさを事前に知っていたら、じゅんちゃんがこのお店に寄ってサンドイッチを買ってくるという申し出を、悪いからと遠慮の言葉すら口にしえなかったと思う。じゅんちゃん、ホントにいいの? 買ってきてくれるっ? と、口から泡を飛ばさんばかりに頼んでいただろう。
 サンドイッチは大まかに言って三種類あった。生ハムやサーモンを挟み込んだバゲットサンド、“sandwich suedois”(スウェーデンのサンドイッチ)、そしてハンバーガーのような形をしたサンドイッチ。
 ハンバーガーではない、バーガー系のサンドイッチというのは、ここパリでは他に見かけたことがない。“Bagnat”という商品名のそれは、バンズパンというよりは“pain au lait”(ミルクパン)のようなしっとりとした食感の生地をしている。この生地の上にさらにフロマージュをのせて、オーブンで焼いたのだろうか、フロマージュにほんのりついた焼き色がなんとも食欲をそそる。
 具材は“jambon paysan”(田舎風ハム)、エメンタールチーズ、それに“huile provencale”(プロヴァンス風オイル)で絡めたレタス、といったところ。ハンバーガーよりヘルシーだけど、優しくもしっかりとした味がする。
「自分でも簡単に調達できそうな具材なんだけど、なによりパンが美味しいんだよねぇ」
 しみじみとじゅんちゃんが言う。なんでもこのパン屋さん“La Fournee d’Augustine”のバゲット・トラディスィオン(昔ながらのバゲット)は、2004年度のパリのバゲットコンクールで1位を獲得しているという。
 そのバゲット・トラディスィオンを用いたバゲットサンドも絶品だった。生ハムにピクルス、あるいはフロマージュといったシンプルな組み合わせがいい。バゲットも気泡の大きさがこれまた好みのもちもちな生地だ。
 また、ピタパンのようなパンを用いた“Sandwich suedois”は、パリでも比較的よく目にするサンドイッチ。パン屋さんはもちろん、学生街のサンドイッチを売るスタンドでも、定番のひとつになっている。なんかパサパサしていそうで、実は自分から進んでこのサンドイッチを買ったことはなかったのだけれど……。
 カマンベールらしきフロマージュと田舎風パテとレタスといった具を、ピタパン(?)2枚ずつでそれぞれ挟んである。カマンベールサンド、パテサンドと分けて食べる手もあるが、一応全体のハーモニーを確認するべく、大口を開ける。この中では一番重めな具だけれど、このサンドイッチすらヘルシーな印象を与えるところがすごい。大きいけれど、パテの肉汁かなにかがうっすら染み出ているのか、ジューシーで食べやすかった。

 サンドイッチで軽く済ますはずのお昼が、あれもこれもと食べ較べているうちに満腹に。この店はタルト類も評判だからと、デザート用にミラベルのタルトも買ってきてくれたじゅんちゃん、泣けてきます。カールが淹れてくれたカフェと共に、これも美味しくいただきました。

 

 実はあれ以来、このパン屋さんに個人的に三度は足を運んでいる私。けっして近くはないのだけれど、あの味を確かめたくて、ついつい……。バゲットサンドだけでも10種類ほどあるのに、その具材や組み合わせが日によって微妙に違うから、何度行っても堪能しきれないのだ。
 14区にあるお店に通っていたのだけれど、いつ行っても“Bagnat”に会えないので、思い余って店員さんに聞いてみたところ、店舗によって品揃えも微妙に違うので、他の店にはあるかもしれない、と各店舗のアドレスを記載したカルト(名刺)をくれた。そこにはなんと、7店舗もの展開が……。
 というわけで、今日は17区の店の方へも足を伸ばしてみました。じゅんちゃんが先日買ってきてくれたのはこの17区の店だから、今度こそ絶対ありつけるだろうと。
 ところが、なかったんですね──。
「あれ? ない!? じゃあ今日は(厨房が)たまたま作らなかったんだわ」
 がーん。もうこのパン屋さん、気まぐれすぎるってば。
“La Fournee d’Augustine”を巡る旅は、まだまだ続きそうです。

“suedois”の“e”はアクサンテギュ、“provencale”の“c”はセディーユ、“Fournee”の最初の“e”はアクサンテギュ、“souedois”のeはアクサンテギュです。

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