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2009.12.01

雨宮塔子の食事日記38

雨宮 塔子

雨宮塔子の食事日記38

11月2日

 先週の1週間、ジト(宿泊所)へ行ってました。このブログでも書かせていただいて3度目になる、例の子連れ総勢20名以上で過ごす集団ヴァカンスのことです。
 夏休みは海外旅行に出たり、日本へ帰省したりして、皆独自に過ごすのだけれど、春の“paques”(イースター)と秋の“Toussaint”(万聖節)のそれぞれ10 日以上に及ぶヴァカンスには、どこかへ連れていけと騒ぐ子供たちをもて余してしまう私たち。フランス圏内の田舎で自然と触れ合う子供たちの笑顔を見ながら大人もゆったりと過ごすのは、お金をあまりかけずに楽しむという意味でも理にかなっているのだった。

 20名を超える人数のベッドを備えているジトはそう多くはないのだけれど、毎回同じ宿泊所というのも芸がない。初回はシャンパーニュ地方、2回目はブルゴーニュ地方ときて、今回我らがはっちゃん(パリでコーディネーターの仕事をしている日本人の友人。美容師、ネイル、着物の着付けのお免状と、手に職を複数持っている上に、流暢な英語とフランス語を話すスーパーウーマン)がネットで見つけ出してくれたのは、“Haute-Normandie”(北ノルマンディー)地方の“Calvados”(カルヴァドス県)。あのブランデーのカルバドスやりんごで有名な産地だ。

 ジドの選定、大家さんとの交渉、予算の見積もりetc……、このジト企画をまとめるまでのはっちゃんの労力は計り知れない。さらに、決断に至るまでにそれぞれの意見も尊重してくれるので、その気苦労たるや相当なものだと思う。

 

 皆もその辺はよく心得ていて、例えばノリノリ(お向かいに住む関西人マダム)などは、現地で調達できない和食材や調味料の買い出し準備班として活躍する。ところが私ときたら、ジト出発前は日本に帰国する用などもあって(ほとんど言い訳っす)、ジト企画の献身度はゼロ。せめてもの罪滅ぼしに、フレッシュなごぼうと、ノリノリに頼まれた「ウェイパー」という中華スープの素をジトでの食生活に投入するため、日本から持ち帰ったぐらいだった。

 とにかく、メールのやり取りを通して、出発前から皆の気分は盛り上がっていく。私が日本へ帰国していたのは、たかだか3泊5日なのに、パリの我が家に着いてメールを開いてみると、ジトがらみのメールが20件以上溜まっているといった具合に。
 今回初の試みは、バスを1台借り切ったこと。しかも、運転手さん付き。いつもは四駆を操るノリノリや、夫婦でフル参加のタンちゃん(「ティー・ヤマイ」デザイナー)、そしてマニュアル好きの私がマイカーを出し、さらに他のメンバーがレンタカーを借りて、車数台で連なっていくのだけれど、今回はノリノリと私の車の調子がそろってよくないこともあり、敏腕コーディネーターのはっちゃんが時折仕事でアテンドするバスを手配してくれたのだ。

 バスといっても、それはロケなどでありがちなバンをちょっぴり大き目にしたもの。荷物を収める余裕はあまりないので、各自なるべく荷物をコンパクトにした。それから、和食材などはあらかじめ用意しておいても、1週間もの滞在となれば現地での食材調達は必須。バスは現地へ着いて私たちを降ろすと、そのままパリへ戻ってしまい、後は帰る日の朝に迎えに来てくれるだけなので、やはり車が1台は必要だ。現地でレンタカーという手もあったけれど、そこはフレンチブルドック連れのタンちゃんが車を出してくれることで解決した。往復のガソリン代などは後で皆で割ることにする。

 かくして、18人の大人・子供+ゴールデンレトリバーのイケムを乗せたバスと、タンちゃん、よりちゃん夫妻+フレンチブルドックのさんちゃんを乗せた乗用車は一路、ノルマンディーへと向かったのだった。自分の運転は荒目(?)のくせに、バス酔いしやすいというノリノリが運転手さんの横の助手席に陣取り、勝手にマイクを握ったりして、狭い車中は大盛り上がりだった。

 ノルマンディーというと、クロード・ルルーシュの映画『男と女』に見るように、雨模様か、よくても暗い曇り空が広がっているイメージだったけれど、1週間の滞在中、結局雨は一度も降らなかった。それどころか、ポカポカと暖かい快晴に恵まれることも多く、ランチはテラスにテーブルを出して、陽差しを楽しみながら食べたりした。

 ジトも3回目を数えると、色々と学習成果が出てくる。例えば毎回の食事。今までは、あると便利そうな食材などを買っておいて、皆で適当にやっていたのだけれど、そうするとどうしても無駄が出る。今回は毎食の献立てをあらかじめ大まかに決めておき、基本はその献立てに必要なものだけを買い足すようにした。
 食事当番をどう回すかも効率が大事だ。例えば私はホタテやイカをたっぷり使ったエスニックなシーフードカレーを作ろうとしていたのだけれど、それならマルシェの開かれる日の夜に食当にしてもらえば、マルシェで買いたての新鮮な魚介類を使える、というように。

 何か作りたい得意料理がある人は、そのメニューを申し出て、そこから献立てチーフ(?)のノリノリがそれに合う前菜やら、朝やお昼のごはんのバランスを考え出す。お菓子作りを得意とする人は、率先してデザートを作る。ますみさん(讃岐うどん「国虎屋」オーナー夫人)のチーズケーキやみちこちゃん(マレで“depot-vente”<ブランド古着委託販売>のお店を営んでいる友人)のチョコレートケーキは、今や仲間内の定番のケーキになっているのだけれど、今回は新たに3人のお菓子名人が加算された。

 ひとりはご当地名産のりんごで“焼きりんご”を作ったタンちゃん。シナモンパウダー少々と黒砂糖、それにここがポイントらしいのだが、“demi-sel”(無塩じゃなくて有塩)のバターを用いた焼きりんごは、それはそれは美味しかった。こちらのりんごは小ぶりとはいえ、一袋に20個ほど入ったりんごが、、2ユーロほどで買えてしまうのだ。以来、この袋詰めのりんごは、買い出しに行くたびにゲットしてくる食材になった。みちこちゃんもパイシートを用いて二度ほどアップルパイを作ってくれたし、かごに盛っておけば、遊び疲れた子供たちが手を伸ばして、そのまま丸ごとかぶりついていく。

 暖炉やテラスを完備した巨大な一軒家と、3LDKの別棟を合わせて借り切っていたのだけれど、そのテラスから見渡す緑が絶景だった。牛が草を食んでいる周辺と、湖の近くには、栗がたくさん落ちていて、私の息子などは毎日嬉々としてそれを拾っていた。かなりの量があって、家で作る栗ごはん用に、それぞれが手土産にできるぐらいあった。その栗を、夜は暖炉の上に置いたフライパンで炒って、焼き栗にして食べた。ほっこりして甘く、美味しい。無類の栗好きのみどりちゃん(ベジタリアンの友人)は、なんとそれをピュレにして、スポンジケーキまで焼いてモンブランを作ってしまった。こういう思いがけないデザートも嬉しい。

 ジト企画を実現させるまでを、ひとりで奮闘してくれたはっちゃんには、キッチンでの仕事は休んでもらおうとしていたのだけれど、ハロウィン用にマルシェに並んだかぼちゃを見ているうちに思いたったのだろうか、かぼちゃのプリンを作ってくれた。はっちゃんといえば、ピクニックで披露してくれるハムカツサンドなどの凝り性ぶりが印象的なのだけれど、このかぼちゃのプリンも絶品で、あらためて彼女の幅広さを思った。

 ジト生活の楽しみは、いつも愉快な仲間たちが、より皆で楽しむために、自分の労力を惜しみなく、だけどさりげなく持ち寄るところにあると思う。もちろん、お互いもっと勝手気ままに過ごすこともありだけれど、この大人の気遣いのよさは、触れるたびに愛おしくなる。自分のメニューこそ出さないけれど、毎回キッチンに立って地味なアシストに回る人、皆でできるワークアウトのDVDを持ち込んでくれた人、参加者の中で一番幼い私の子供たちがぐずると、あやしたり、散歩に連れ出してくれた人。そうした光景は、秋の紅葉が色づき始めたこの開かれた景色と共に、いつまでも私の中に残るだろう。

 最終日の夜は、恒例のラクレットをした。ラクレット用の鉄板は、いつもたんちゃんとよりちゃんが持ってきてくれる。鉄板の上にふかしておいたじゃが芋を始めとする野菜類を置き、各自で溶かしたラクレット用のフロマージュや、クミン入りのフロマージュをかけて、アツアツをいただく。

 

 テーブルを囲む子供たちは、それぞれ持ち込んだ思い思いの仮装をしている。仮装のために、美容師でもあったはっちゃんに髪を巻いてもらい、美容&エステチーフのひろみちゃん(ロックな格好いい友人)に化粧をほどこしてもらった“petites filles”(小さな女の子たち)はそれだけでご満悦。12~13歳の女の子たちは、仮装ひとつ取ってもバリエーション豊かで、個性的で、大人たちからも賞賛を浴びていた。男の子だって負けてはいない。ハーフのマテオなどはジャニーズ系のような髪型にしてもらって、えらく気に入っていたし、4歳の私の息子も、ひろみちゃんにキースのようなメイクをしてもらってイキがっていた。

 子供たちが楽しげな様子を眺めているのは何より嬉しいけれど、そうした光景を見つめる私たち自身も、大人の楽しみ方を徐々に心得てきたように思う。買い出しや、散歩以外にはほとんど外に出ないで、炊事に振り回されてはいるけれど、合間に皆でやるワークアウトで、ノリノリの、どう贔屓目に見てもリズム感のない動きに、腹をかかえて笑ったり、お昼の後のお茶のひとときにくつろいだり、また深夜にワイングラスを片手に暖炉を囲んで取りとめのない会話を楽しむことが、今ではかけがえのない時になっている。
 毎回、ジト合宿の後には、“反省会”と称して集まるのが常なのだが、今回は反省するタネがないと皆が口を揃えるぐらい、楽しくかつ、経済的にも低予算で済んだ一週間だった。最後に、参考までにその1週間の献立てをご紹介しようと思う。

おまけ…それでも残った食材や調味料は、希望者でジャンケンをして勝った人が持ち帰ります。これがけっこうな争奪戦となり、盛り上がるのです!!

“paques”のaはアクサンシルコンフレスクです。
“depot”のeはアクサンテギュ、oはアクサンシルコンフレスクです。 

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