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2002.12.15

第13回 見城徹が選んだ「カッコいい男」「抱かれたい男」は……

見城 徹

第13回 見城徹が選んだ「カッコいい男」「抱かれたい男」は……

見城徹が選んだ「カッコいい男」は…… 

マッスル小野里(雑誌「Free&Easy」編集長/46歳)
選考理由:心の筋肉がいつもスウィングしている

 いま僕が一番カッコいいと思っている雑誌は、『Free & Easy』なんですよ。いつまで写真を眺めていても飽きないし、文字を読めば毎号強烈な刺激を受ける。こんなにカッコいい雑誌なんだから、編集長がカッコいいのは当たり前のことでね。雑誌というものは、どれだけ優秀な編集者がいたとしても、編集長の生き様があってはじめて息づくものだから……。小野里に会って、一年ちょっと経つのかな。ここ五、六年で一番刺激を受けた、ステキだなと思える男なんだよね。
 何よりもまず、小野里は着こなしがカッコいいんですよ。別にものすごくスタイルがいいとか、高い物を着ているわけでもない。服に着せられているんじゃなくて、彼は自分に服をフィットさせている。服を着たおしているんですよね。内面から滲み出るものがないと服って着たおせないんですよ。
 心がスウィングすると、目には見えなくても、そこに光や熱や風が起きる。そこに人は引き寄せられる。セクシーというのはそういうことだね。それがその人の魅力、その人の存在感でもある。小野里という人間はその心のスウィングが大きい。繊細だけど、したたか。貪欲だけど意地汚くない。自分のライフスタイルにはとても頑固だけれども、仕事ではちゃんとフレキシビリティがある。そんな両極をつねにスウィングできている男なんですよね。
 小野里はお世辞を言わない。でも、この男とずっといたいなとか、また会いたいなと思わせるところがある。それは彼の中のしたたかさと繊細さ、大胆さと臆病さ、強さと弱さ、ものすごく激しく動いているものとピタっと静止しているもの、そういった両極がいつもスウィングして入れ替わっているからだと思う。ジャズは、『スウィングしなけりゃ意味ないよ』という名曲があるくらいの音楽だけど、彼のなんとも言えない独特の彫りの深い顔の中に「スウィングしなけりゃ意味ないよ」と描いであるような気がする。ひとつひとつの動作とか、台詞、着こなし、振るまい、全てがスウィングしている。
 心が、筋肉質だと思うんです。心の筋肉の美しさというのは、ウエイト・トレーニングで作る肉体の美をはるかに凌ぐんだよね。心の筋肉からにじみ出る優しさというのか、彼が抱き支えて耐えているものというのかな、それが苦みばしっていてカッコいいんですよ。極上のコーヒーを飲んだような、ビター・スイートの。ビターも、スイートも振幅でしょ? 彼にはそれをひとつに抱きかかえる力があるんだよね。片方だけ抱きとめることは誰にでもできるんだけど、スウィングする両極を抱きとめて存在するというのはむずかしい。
「マッスル小野里」とはよく言ったもんでさ、もともとは筋肉質のカラダを含めてのネーミングかもしれないけれど、心の筋肉質がちゃんと成長しているから小野里は「マッスル」だと僕は思いたいね。(若い頃から小野里がつづけている)ウエイト・トレーニングっていうのは、相手がいるスポーツとはちがって、自分が苦しんだら苦しんだだけ確実にメイク・ア・フルーツするわけですよね。例えば百キロのバーベルを持ち上げている時に、もう辛いからいいやと思ったら筋繊維は太くならない。百キロが持ち上がらないというところから苦しみに苦しみ抜いて、やっと持ち上がった時、ようやく筋繊維が前より太くなっている。で、つぎの百五キロに行けるわけです。すべては自分との戦い。自分が諦めるか諦めないかで勝負が決まる。すべて自分の明日に降りかかってくる。相手はいない。自分が苦しめば苦しんだだけ結実するし、自分の求めている筋肉ができるわけですよね。彼は常に自分の心の筋肉を太くしようと努力しているのが分かるんですよ。四〇歳を過ぎても、つねに新しい刺激を求め、新しい冒険に出かけ、そして真っ向から勝負を挑み、貪欲に成長したいと願っている。いつも会うたびに新しいマッスル小野里がいるという感じだよね。成長しないヤツほどカッコ悪いものはないと僕は思っている。そういう意味でマッスル小野里は、日々の成長が相手にビビッドに伝わってくる、まさにカッコいいとしか表現しようのない男ですよ。

マッスル小野里からのコメント

「見城さんの第一印象はゴルゴ13。どんな距離からでも相手を一発で狙撃してしまう仕事師としてのスタイル、狙った獲物をかならず仕留めてミリオンセラーを出すスタイルがデューク東郷のイメージと重なっていました。そんな冷血無比なプロフェッショナルのイメージがあったのですが、実際一緒に仕事をしてみると、そういう面とは裏腹の、デューク東郷の憂鬱もすごく感じた。それまで僕の生き方としては、憂鬱を人に見せるのはやめよう、自分のなかに持たないようにしようとしていた。でも見城さんにお会いして、男はその両方を持っていて、その両方が見えるほうがチャーミングなんだなと思いました。最近は見城さんに見習ってマッスル小野里の憂鬱を時折人に見せるようにしています」

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