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2002.11.01

第11回 チキンハート・インタビュー

見城 徹

第11回 チキンハート・インタビュー

 FE(『Free&Easy』) いま出版界のなかで、見城徹ほどパワフルで敵なしの男はいないと言われていますが……。

見城 僕は、人一倍不安や恐怖を感じるタイプなんですよ。しょっちゅう後ろ髪を引かれているし、小石にもつまずく。何をやるにもウジウジ悩んだりクヨクヨする男なんです。7、8年前にトム・クルーズの仕事や私生活に密着して書かれた記事を雑誌で読んだことがあるんだけど、彼はいつもちょっとしたことでたじろぐんだそうです。例えば明日ベッドシーンがある。ものすごく憂欝で落ち込む。ロケ現場でもずっと無口で。でもいよいよ本番の時間が近づいてくると自分を吹っ切ったように、「ロッケンロ―ル!!」と叫んで現場に入っていくんだって。その気持ちがすごくよくわかるんだよね。以来、僕も一歩踏み出すときにはいつも心の中て「ロッケンロ―ル!!」って叫んでますよ(笑)。

FE でも、普段はそう見られないように工夫しているんじゃないですか?

見城 そんなことないよ。いつもミエミエに悩んで、最後は紙一重で前に行くというだけだから。

FE 幻冬舎という会社を作って以来、史上最速でミリオンセラーを6作も連発したり、3年目にいきなり12億円をはたいて62作の文庫本を送り出したり、郷ひろみの『ダディ』を常識外の初版50万部からスタートしたり……。どうして見城さんは毎回壁を突破できるんですか?

見城 そうしなければ何も始まらないと思うからじゃないかな。人は現状維持が一番楽なんですよ。でもそれでいたら満たされない自分がいる。寂しい自分がいるんですよ。だから、苦しくても、一歩前へ出る。

FE それができる人は世の中に3パーセントくらいしかいないんじゃないかと思いますよ。その他大勢はアクセルを踏めないまま、やがて死んでいく。でも見城さんは、彼らの琴線もわかるから出す本が売れるわけですよね。

見城 その二重性は持っていないとね……。密やかに生きて密やかに死んでいく、誠実に生きて誠実に死んでいく、無口に生きて無口に死んでいく……。そこには重い生の営みがある。そこをすごくよくわかっていながら、自分はポーンと一歩踏み出す。突破する。そうしなければ生きて行けない。危険なものを見つけてそこへ行く。危険な道のランクがABCDとあれば、ウジウジ悩んだ末にAへ行く。それができない局面では、どこも突破しないでEを選ぶのかもしれない。AかEか。どちらにしてもミドルはない。その相矛盾する両方の振幅があって初めてマスを包摂できるんじゃないかと思いますよ。

FE 『大河の一滴』が文庫・単行本あわせて270万部を突破した理由もそこですか?

見城 人は必ず病気になるし、生まれたからには必ず老いる。肉親だろうと友人だろうと人は裏切る……。仕事はうまくいかない、恋は成就しない。それを前提として生き始めようじゃないかというのが『大河の一滴』の根本に流れているものなんです。黙々と生きて黙々と死んでいった人たちはみな、それを静かに受け入れるんです。僕にとって尊敬すべき人たちというのは、そういう人たちなんですよ。人生の価値というのは、総理大臣だろうと田舎で黙々と生きた人だろうとみな同じだと思うんですよね。最終的に人はひとりで死んでいく。それはすべての人間に対して平等じゃないですか。その時、笑って死ねるかどうか。それ以外は全部プロセスに過ぎない。自分の人生が成功か失敗か、死ぬ瞬間、自分自身が決めるわけです。その瞬間のために僕は今、戦っている。

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