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上野千鶴子×國分功一郎対談「上野先生、民主主義はお好きですか?」

2014.02.07 公開 ツイート

最終回

政治参加の正しい方法って何ですか? 上野千鶴子/國分功一郎

前回の記事:「民主主義イコール多数決」ではない
 

◆バイト先で秘密保護法の話題を切り出すにはどうすればいい?

上野 話もけっこう弾んできたんですが、いくらか時間の余裕があるようですので、ここで皆さん方からご発言、ご意見、場外乱闘など、ご自由にご参加いただきたいと思います。

トーク終了後はサイン会。サインをしながら気軽に言葉を交わしてくださるお二人。会場が閉まるギリギリまで、読者の列が途切れませんでした。

女性 私は秘密保護法案をはじめ政治的なことに関心があるんですが、周りにはそういう人があまりいないんです。たとえばバイト先では、お子さんのいる40代中心のパートの人たち10人ぐらいと一緒にお昼を食べるんですが、そういう話題を出すことにはやっぱりためらいがあります。首相官邸前の集会やデモに行けば、そういう話ができる人がいるけれど、その輪をもっと広めるために、政治に関心のない人にどう伝えればいいのか。政治的な話を嫌う国で、それを違和感なく話題にする方法について、何かいいアイデアがあったら教えていただきたいと思います。

國分 どうだろう。自分がどういうふうに実践してるか、今思い出そうとしているんですが、上野さん、何かパッと思いつくことがありますか。

上野 今のご質問のような苦労を、上野はしたことがないので、理解できません(笑)。ご飯食いながら、「自民党、ひどくない?」と言えばいいんじゃない?

國分 いや、そう言うと離れていってしまう人の心もあるんですよ。

上野 そうなの?(会場、笑)。私ね、自分の周りにさ、自民党に投票した人がいないから、「自民党のどこがいいの?」と聞けないの(会場、笑)。

國分 僕は自民党の支持者の友だちもいますよ。

上野 あら、そう? 私の周りには全然いないの。寄ってこないのよ。だから困っちゃうのよね。

國分 寄ってこないでしょうね、そりゃ(笑)。思い出しましたが、僕が心がけているのは、堅い話とそうでもない話を織り交ぜることですね。それはツイッターでもけっこう意識している。

上野 ご飯食べながらおしゃべりしてるときにさ、「あそこでこういうセールやってるの、なかなかいいよね。ところで自民党ひどくない?」って言うのはまずい?(会場、笑)。嫌われる? ほんとに引かれるの?

國分 いや、今の言い方だったらいいかなと思いました(会場、笑)。

上野 だって女子会ってこういうものなんです。男の子たちがどんな話をするのかわからないけど、コスメやバーゲンの話をしながら、ついでに特定秘密保護法とか、杉並区の待機児童問題の話も一緒にやっちゃう。要するに形而上から形而下まで全部しゃべっちゃうのが、女子会トークのとってもいいところなんだけど、男の子って違うのかしら?

國分 いや、うちのゼミも同じですよ(笑)。だけど、僕は今の方のお気持ちはよくわかります。伝え方を間違えると、仲間外れは大げさだとしても、引かれたりとか、なんとなく距離をとられてしまうことはあるでしょう。だから、多少テクニックは必要になってくると思います。

 でもそういった関心をお持ちになって、どうやったら話ができるかなってお考えになるのは、とても大切なことだと思うんです。僕は「自分も何かしたいけれど、いったい何をしたらいいんでしょう?」と尋ねられると、いつも、「まず隣の人に話してください」って言うんですよ。話すって素晴らしい政治活動なんですね。話を聞いた人が、自分でも考えてくれるようになるわけですから。だから上野さんのように「自民党ひどくない?」と言わないで、「今、秘密保護法とかなんとか言ってるよね」と切り出すとか、専門用語を使わないとか、そういうところに気をつけるといいのではないでしょうか。

上野 「ひどくない?」というのは、エモーショナルなレスポンスなんです。感情は大事ですよ~。

國分 はい(笑)。エモーショナルであるのは大切ですね。僕のゼミの飲み会にほかのゼミの子が来ると、「國分ゼミは飲みながらこんな難しい話をしているんですか」って驚くんです。で、同じ会で、下ネタも話してることに驚く(笑)。

上野 やっぱり、形而上から形而下まで落差を同時に生きるっていう、これが大事。どちらか一方はまずいですね。

國分 それは非常に大事だと思いますね。あんまり参考にならなかった気もしますけど(笑)、とにかくそれは大切なことだと思いますので、頑張ってください。

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上野千鶴子

社会学者・立命館大学特別招聘教授・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。『上野千鶴子が文学を社会学する』、『差異の政治学』、『おひとりさまの老後』、『女ぎらい』、『不惑のフェミニズム』、『ケアの社会学』、『女たちのサバイバル作戦』、『上野千鶴子の選憲論』、『発情装置 新版』、『上野千鶴子のサバイバル語録』など著書多数。

國分功一郎

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に『スピノザの方法』(みすず書房)、『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社、第2回紀伊國屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)、『来るべき民主主義』(幻冬舎新書)、『近代政治哲学』(ちくま新書)、『中動態の世界』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『原子力時代における哲学』(晶文社)、『はじめてのスピノザ』(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ『マルクスと息子たち』(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』(ちくま学芸文庫)など。

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