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2002.05.01

2002年5月1日 だらしなマンション購入記 第3回

藤田 香織

2002年5月1日 だらしなマンション購入記 第3回

◎迷い道 <衝撃の連続・モデルルーム巡り>

★Bマンション
 埼玉県W市
 営団地下鉄・東武東上線N駅
 バス6分。大江戸線H駅徒歩20分。

 3700万のマンションを蕎麦屋の帰りに衝動買いした数日後、私は購入したマンションの隣駅に建築中のBマンション・モデルルームにいた。
 そして口をあんぐり開けていた。凄い! 凄すぎる! この活気は一体なに!?
何フロアにも分かれたモデルルームは、活気に溢れていてまさに大盛況。どこかのバーゲン会場でもこんなに混んでないだろう、というほど人が溢れていて、しかもその日が初日だったにもかかわらず、既に壁の部屋割りボードは“お申込み済み”マークのバラで7割以上がうまっていた。とにかくもう、凄まじい熱気。不況ってなに? リストラってなに? こんなにマンション買いたい人がいるなんて、どういうこと!?
 何ともいえないドキドキした気持ちで、モデルルームのドアを開ける。
 もちろん、この時点で私は既に他の物件の購入契約をしていたので、来場している人とはドキドキの意味が違う。
私はこのBマンションがヘボい物件であることを祈ってるわけだ。「あー、やっぱり私が買ったAマンションの方が良いじゃん! えへへ」と思いたいわけである。
 が、しかし。既にもうこの活気が私に嫌な予感を抱かせていた。総戸数は30戸ほどしか違わないのに、来場者の数はざっと150倍! いや、1日トータルの来場者数はそれ以上に違いない。これだけ人気があるということは事前情報で「いいかも!」と判断した人がそれだけいる、ということに他ならない。
 案の定、Bモデルルームには私が契約したAマンションにはない、ステキー! な設備がずらずらそろっていた。

 まず玄関が違う。こちらBマンションはプライベート感ある全戸専用ポーチ付き。共用廊下から、玄関のドアまでの間に空間があり、ドアを開けた瞬間に、廊下を通ってる人から部屋の中見られちゃった!なんてことがないように配慮されている。私のように、世間話が苦手な半引きこもりな人間にとっては、隣人とタイミング良く(悪く?)顔を合わせてしまう心配が減る、というマイナス思考なメリットもある。
広い玄関を入ると正面にはシューズインクローゼット。扉を開けると中は相当広く、半面は下から上まで整理棚付き。ゴルフバック(ゴルフしないけど)だろうと、スキー板(持ってないけど)だろうと、子供の自転車(子供いないけど)だろうと邪魔くさいものは何でもブチ込める! 廊下を進むと浴室に窓! 二つの洋室の間はスライド扉にも変更可。クローゼットももちろんデカイ。
 そしてリビングに足を踏み入れて、ビックリ。窓がデカイ!! 明るい! 開放感が全然違う! 天井高2.3メートルの逆梁工法ハイサッシュの魅力を目の当たりにして、クラクラしていると、足元は床暖房でじんわり暖かい。しかもマンションにつきものの小梁を減らしたアウトフレーム工法でお部屋すっきり。だからリビングの面積もAマンションに比べて、図面上は若干狭いにもかかわらず、感じとしては広く見える。
 手元の資料を見ると、加えて駐車場は(免許持ってないけど)自走式で全戸分確保されている上、料金¥500だし、エレベーターは3戸に1基だし、両面バルコニーだし、バルコニーの置く行きも広い。モデルルームオープン初日だというのに、別室では管理説明会も開催されている。施工も販売もAマンションより大手だ。駅からはこちらも遠いが、それでも最寄駅は「東京都」。

 ……面白くない。っていうか「うおーっ!! マジかよっ!?」という心の叫びが身体中を駆け巡る。
 いやいや、でもまぁ、これだけ良ければお値段も相当いいにちがいない。いくらいいマンションでも、手の届かない値段じゃ意味ないし。と、心を落ち着かせながら手渡された価格表を見れば、なんと! これでもAマンションとほぼ同値段! むしろ下層階なら安いぐらいじゃないか! なんてこったい……。
 華やいだ雰囲気のモデルルームを一人肩を落として後にする私。
 いやでも「ファミリー向き」な物件て、私みたいな人間には住みにくいし。
 子供のプレイルームや敷地内公園なんて、一生使わないかもしれないのに管理費払うのバカらしいし。
 施工会社は確かに大手だけど、なにかと危ない噂を耳にするし。
 内装も豪華だったけど、オプションマークがたくさん貼ってあったし。
 よくよく考えてみると、やっぱり大したことないかも。そう、マンションは箱なんだから! なるべく装飾華美じゃない方がいいのよ――と、無理矢理自分を納得させようとするものの、どうにも心がおさまらない。
 こうなったら仕方がない。気が済むまでモデル・ルームを見に行こうじゃないか!

★Cマンション
 東京都練馬区
 西武池袋線(地下鉄有楽町線直通)O駅
 徒歩12分

 日ごろ“行動力”などというものから非常に縁遠い生活をしているくせに、Bマンションでのショックは思いのほか大きく、翌日私はさっそくCマンションの販売事務所へ向かった。ここは現在のだらしな館から徒歩15分ほどの場所にあり、販売事務所も駅までのバス通り沿いにあった。
 現在のだらしな館がある場所は練馬区で、一応東京23区内である。いくらだらしな館の1本先の道はもう埼玉だとはいえ、住所的には東京都。Cマンションはだらしな館よりも、かなり駅に近く、最寄駅から徒歩12~13分と思われる。モデルルームは1ヶ月ほど前にオープンしていた記憶はあるが、なにしろ腐っても(練馬区民のみなさま失礼!)東京都なのだから、私の予算にはもうまったく届かないか、届くようなら占有面積が狭いかどちらかだろうと予想していた。
 それでも、昨日のBマンションで、思った以上に今マンションの設備や仕様というのは、そりゃもう凄まじく進化しているのだ、ということを思い知らされたので、後学のためにのそのそと出かける。今回も交通手段はチャリである。
 これまたアポなし、時刻は日曜の午後3時。
 販売会場内は、ほどほどに人がいる状況で、相談用に置かれたテーブルは7割ほどうまっていた。昨日と違って、こちらは物件の場所がらか比較的客側の年齢層が高め。あぁこりゃ値段が高いのかな、と瞬間的に思う。
 受付をすませ、各種チラシやパンフレットの置かれたテーブルで待っていると「お客様、はじめまして」と営業担当の女性が登場した。推定45歳。人のことをとやかく言えたぎりではないが、キャリア系女性、というよりおばちゃん、である。特徴としてはちょっと驚くほど歯が黄色い。今時珍しいヤニ色だ!
「まずはこちらのアンケートに記入して頂けますか?」と用紙を差し出されたので、お決まりの職業だとか年収だとか家族構成だとか実家は持ち家かとか現在の家賃はいくらか、という質問に適当に答えていく。
 私としては、モデルルームの室内と価格表を見せて貰えればいいのだが、何事にもそれなりの手続きというのは必要なので仕方がない。それにもうこれで3回目なので、さすがに悩むこともなくスムーズに記入終了。
 物件概要の説明の前に「まずはモデルルームを見ていただきましょうか」ということになり(ラッキー!)、おばちゃんに誘導されて2階へ。
 どこの販売センターでも同じようなものだけど、その途中に周辺情報やら、構造図やら、ドアや壁やフローリングのセレクトやら、オプション見本やら、あらゆる物が展示説明されている。改めて周辺地図を見ると、前出のA&Bとは違って、このマンションは周囲の環境に恵まれている。大型スーパー徒歩1分、区立体育館・図書館徒歩5分、郵便局・コンビニ徒歩2分。都心方面へのバス停徒歩1分。見渡す限りスーパーどころかコンビニもなかったAマンションとは大違い。やっぱり買物も便利にこしたことはないよなぁと、弱気になる。
 ここはモデルルームは1タイプのみ。階段を上がりきると、すぐ目の前にモデルルームがあった。
 玄関部分は、ここも門扉付き専用ポーチあり。それもかなりスペースが広い。さらに共用廊下側の窓の防犯用格子は、ありがちな縦の柵みたいなものではなく、横板が回転するようになっている回転ルーバー。しかも色はシルバーだ! 共用廊下側の窓の格子が黒や茶色の縦柵だと、どうも「檻」という感じがして嫌だなぁと思っていたので、これは私的にはかなりの高ポイント。さっそく中に入ってみる。全体的な内装の印象は、派手じゃないけどいい物使ってる、という印象。
 もちろん床暖房、洗面所は曇り止めヒーター内蔵の三面鏡。キッチンのシンク下やレンジ下部分は、ありがちな観音開きではなく、スライド式収納になっている! これは便利だー!
 これまで見た限り、最近のマンションでは、テレビ付きオートロックやフルオートバス、浴室乾燥機、使い放題高速インターネット対応、テンプルキーなどは標準設備のようである。
 4LDK86平米、東南角部屋、これでお値段4千万弱。でも、やっぱり100平米を2軒見てしまった後では、86平米といえども狭いなぁという印象が拭いきれない。
 しかしよくよく考えてみれば、別に子供がいるわけでもなし、先のことを考えても、3LDKあれば十分なのだ。大体、私が小学生の頃まで我が家は3LDK、約70平米の社宅に家族4人で暮らしていたではないか! にもかかわらず86平米を狭い、と思うなんて、最初に見てしまった部屋があまりに広すぎたせいで、感覚がおかしくなっているとしか思えない!
 でも、書庫兼仕事部屋はそれなりに広さ必要なので、リビング以外に8畳以上の洋室は欲しい。となると、既に間取り変更ができないこの物件ではちょっと使い難いし……と、まるで「現在購入物件検討中」な気分で考えこむ。どうもモデルルームを見ていると、購入すべき物件かどうか、という目になってしまうのだが、現実はそうじゃないのだ!
 嫌なことに、Bマンションの仕様にうちのめされ、このCマンションを見て、私は数日前までのはしゃいだ気分がすっかりしぼみかけていた。「マンション買っちゃった! ワーイ!」という気分が早くも「マンション買っちゃった! ヤバーイ……」という気分に変わりつつあることを認めないわけにはいかない。
「最初は経験がなくてわからなかったけど、その後何人かと付き合ってみたら、初恋の相手は実はそれほど大した男じゃなかったことに気付いてしまった」という感じだ。
 迷いを払拭するどころか、ここへ来て、更なる迷宮に足を踏み入れてしまった。
 なんだかますます気が重くなり、とりあえずおばちゃんに「ゆっくり考えてみます」と返事をし、お土産のワインを貰ってこの日は帰宅。
 それから私はますます、男、じゃなくて、マンション研究に熱を入れたのでありました。

左:ヤニおばちゃん担当Cマンション。 右:恐怖の営業E田担当Dマンション

★Dマンション
 東京都練馬区
 西武池袋線(地下鉄有楽町線直通)O駅
 バス15分。バス停徒歩2分。

 さて。まったくもって知識ゼロ状態から、あれこれ情報を集めること2週間。大金がかかっていることもあり、さすがに多少は知識がついてきた。
 一般的に、マンション購入で大事なことは、立地と管理と言われている(らしい)。一戸建てと異なり、マンションは利便性が命。駅から近い、都心から近いことが人気物件の条件とされている。次には管理と設備。最近は300戸、400戸という大規模マンションも流行りで、フィットネスルームや親兄弟友人を泊める共用ゲストルーム、ホテルばりのフロントサービスのあるマンションも少なくない。情報誌を見ると、共用ジャグジー、露天風呂、託児所のある物件、長期修繕計画はもちろん、毎日の管理も有人365日24時間管理という物件もかなりある。
 専有の設備・仕様としては駐車場は機械式より自走式。床スラブは最低200ミリ。結露防止もかねて、できればペアガラス。天井高は220センチ以上、窓はやっぱり逆梁ハイサッシュ。咽を痛めない床暖房もあるにこしたことはない。
 しかしこんな知識をつけたところで、今更マンションを解約することが可能なのかどうか、このとき私はまったくわかっていなかった。なんとなく「頭金入れるまでは平気?」と漠然と思っていたのだ。つまりこのときの気持ちとしては、もし他にいい物件があったら乗り換えちゃおうかなー、ぐらいに気持ちが変わってきていた。
 そんな前向きなのか後ろ向きなのかよくわからない気分でいた11月中旬。だらしな館に新築マンションのチラシが投げ込まれた。見ると、ここから徒歩10分の場所に、Dハウスが全30戸ほどの低層マンションを建てると書いてある。一般販売に先駆けて、近隣住人にモデルルームを公開するらしい。これはぜひ見に行かなければ!
 がぜん前向きになった私は、珍しくきっちりアポイントを入れ、Dハウスの販売センターへ出かけた。
 しかし、ここで出会った営業マンE田氏に、その後思いがけない恐怖体験をさせられることになるのだった。キャーッ!!

<続く(たぶん)>

★次号予告
……いつまでたっても予告どおりに進まないので、予告中止。 

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