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2002.10.15

2002年10月15日 だらしなマンション購入記 第13回

藤田 香織

2002年10月15日 だらしなマンション購入記 第13回

<お客様は神様、ではありません ―鍵引渡し>

 自転車置き場の不運に泣き、屋上でカーカー鳴きわめくカラスにムカツキ、最内覧会を終えたさらに2週間後。いよいよ鍵の引渡し日がやってきた。
 事前に送られてきた書類によると、鍵の引渡しは9月某日、朝10時から14時。本社会議室にてとのこと。
 今の家から自転車で10分の距離にある「だらマン」の鍵を受け取るために、雨の中、バスに乗り、電車に乗って都心の「本社」まで行かなければいけないこの矛盾。どうせなら現地でやれっちゅーねん! そうすれば引渡し後、みんな掃除やちょっとした買物もできるだろうに。じゃなければせめて郵送か手渡しか選ばせて欲しい。できれば、現地、本社、郵送の3つから選ばせてくれるぐらいのことをしてもいいのに、と思う。鍵の引渡しなんて、1軒に何十分もかかるものでもないし(実際には2分もかからなかった)、それほど手間のかかることじゃない気がするんだけどなぁ。しかも引渡しはこの日1日限り、4時間のみ、ときたもんだ。会社員だったらこのためだけに休むかサボるしかないわけだ。
 金消会にしろ内覧会(うちは土日だったけど)にしろ、オプション会にしろ、どうもマンション売買って、デベロッパーやゼネコンや銀行の都合が優先されている気がしてならん。いまどき数百円の買物だって家まで届けてくれるのに、数千万の買物の最後の最後に、客がわざわざ足を運ばせることを何とも思わないのが凄い。ちょっと気を利かせてくれれば、随分評判だって違ってくるだろうにな、と思うんだけど。
 月末で仕事に追われまくっていた私は、この日も結局ギリギリに駆け込み。引渡し会場の「本社会議室」には、すでに誰も購入者はいない状態で、受付けに行った瞬間「***号室のフジタ様ですね?」と言われる。受付けの姉さんに特別見覚えはなく、「なんでわかんねん!?」と思ったら、手元のチェックシートに蛍光ペンでガンガン線が引かれている中、我***号室だけがくっきり白く残っているのが見えてしまった。ちょっと驚いて
「あのー、みなさんもう引き取り済まされたんですか?」と訊ねてみたら、ニッコリ笑って「そうですね、ほとんどのみなさんが午前中にいらっしゃいました」と言われる。ガーン……、みんな気合入ってるのね……。くだらない文句をタラタラ言ってるのは私だけってことか!? ショック!

 さて。この日受け取った鍵は合計6本。もらった瞬間は「え? 6本も渡されて一体どうしろと?」と思ったものの、考えてみたら家族構成別に鍵の本数が違うなんてことはあるはずもなく、全て2LDK以上のファミリー物件であることを考えると予備を含めて6本というのは妥当なのか、と思い直す。
 これでいよいよ「だらマン」は正真正銘私のモノになってしまった。この6本の鍵と引き換えにこれから始まる35年ローン!! もちろんこの仕事をあと35年も続けられるはずはなく、どう考えたって繰り上げ返済をしなければいけないのは明白。果たして無事に払いきることはできるのか――正直言って全然自信なんてないっす。
 でもまぁ、なんとかなるさと思い、なんとかするしかないわけで、そう思うと6本の鍵はずしりと心に重く、父さん、ぼくはやはり強い人間ではないようで……と降り始めた雨の中、一人北の国からモードで帰宅する。あぁ複雑。

<あぁ住民十色>

「しかしいくら人間顔じゃないとはいえ、福●の後に純くんを愛せるものなのだろうか」
 と内田由紀の勇気(なのか?)について考えつつ、チャリチャリとだらマンに向かったのは鍵の引渡しから数日後の10月某日。
 引渡し後の最初の土日で、半数近くの家が早くも入居すると聞いていたので、その様子を見たいという気持ちが半分、渡された鍵をとりあえず使ってみたいという好奇心が半分。
 悲しい自転車置き場(前回のだらマン参照)に、きっちりチャリを入れ、わざわざ地下に降りてまずは駐車場を確かめてみる。地下の駐車場は上段・下段の機械式がメインで、通常は上段が平置きと同じ状態になっていて、下段に入る車は出入りのたびに上段の車をリフトで上げて、下のリフトに自分の車を出し入れする、という形式。免許もなく、車もない私が来客用に借りたのは当然値段の安い下段。日常的には使わなくても、誰かが来たら、リフトの上げ下ろしは私がやらなきゃいけないわけで、その練習をしようと思ったのだ。
 番号を確認しつつ、これから使う(いや正確には私は使わないけど)駐車場を確認。そこには当然、自分の上段になる車がとまってた。確かにとまっていた。とまっていたけど、その車は一目見ただけでなんだか「普通ではない」車だった。
 あのー、私、何しろ車に全然詳しくないので、よくわかんないんですけどね、低いんっすよ、車体が。どう見ても! これっていわゆるシャコタン? なんかね、あといろいろ装飾系も華美なんっすよ、どう見ても。いやさ、私もね、30過ぎた大人ですしね、プチヒキコモリ系だしね、他人の趣味をとやかく言うのはどうかとも思うんすよ。マジで。
 で、でもっ! なぜによりにもよってオレの駐車場の上にシャコタン!? ハッ、これってシャコタン族(そんなものがいるのかは不明)に対する差別か!? いや後で車に詳しい友人に聞いたらシャコタン(どうでもいいけど車高短と書くらしい)はお金もかかるし、一部ではカッチョイイとされていることもあるらしい。うーむうむうむ……。
 車の改造(なのかなー)好きな人がこの世に多いのは知っていた。戸梶圭太の「湾岸リベンジャー」も読んだよ。でもさ、正直こんな近くで初めて見たよ、シャコタン車……。
 けどまぁ、ね、私が乗るわけじゃないし。
 集合住宅に住むってことは相互理解が必要だし。
 シャコタンの何が悪いのかって聞かれても、単なる好みの問題だし。
 そう、別に何がイケナイわけでもないしね……と、なんとか自分に言い聞かせ、どうにかこうにか気を取り直して地下からエレベーターに乗り込む。が、ついてないことにすぐに1階で止まってしまった。ちっ。軽く心の中で舌打ちするが、同じマンションの住民同士、こんなことでイラついてはいかんと素早く思い直し、軽く微笑んでドアが開くのを待つ。と、若いお母さんと金髪の3歳ぐらいの息子が「パパー早くー!」とエントランス方向に叫びつつ乗ってきた。
 いやー、私は自分が自分で思っていた以上に保守的な人間なんだということにこのとき気付きました。だってもう、すぐさま「オイオイ、子供金髪かよ……」と思っちゃったのである。しかも「金髪は顔見てやれよ」なんてことも考えちゃったのである。
 しかしまだ子供の金髪なんてかわいいもんだった。
 エレベータを止めること10秒後、駆け込んできた「パパ」は、上部分が黒で下部分が金髪の錆びた「プリン頭」だったのだ。 ぐわーっ! ま、まさかマンション買ってしまったせいで、髪の毛を染める金さえなくなったわけではないだろうなー。
 しかもそのプリン家族は、乗ったと思ったら「2」のボタンを押したのだ。
 ……父さん、人は見かけじゃないって本当でしょうか。うわーんっ!

引越しカウントダウン お掃除日記
9月某日。もう片付けようもないほどとっちらかっている「だらマン」。とにかくこれをどうにかしないことには、引越し業者の見積もりにも来てもらえない!でもどうにかする気力が沸いてこず、ひたすら放置プレイを続ける。 ↓
10月某日。10月20日に退去すると伝えた翌週、突然大家が何の予告もなしに次に入りたいという店子候補を連れてやって来る。恐ろしいことに突然来た挙句「中を見せてあげてくれ」と言われ、そんなことはできるはずもないので頑なに玄関先で断わり続ける。「散らかってますから」「いえ、間取りだけでも」「いや、引越し準備で足の踏み場もないんです」「それはわかってるから気にしないで」……あんたが気にしなくても私が気になるんだっちゅーねんっ!いよいよやばいと思い、夜中に漫画雑誌を捨てる。この間も捨てたばかりな気がするのに、なぜかこんなにまだ家にはあり、うんざりして泣く。 ↓
10月10日。当初10月11日に引越しを予定していたのに、まったく部屋が片付かず、しょうがないので1週間伸ばすことに。とはいえ、もうそれ以上はどうにもできないので、10日前になりようやく掃除に着手する。軍手にマスク、眼鏡姿で掃除&片付け開始。とりあえず片手にゴミ袋を抱え、ひたすら紙系のゴミを捨てていく。すんごいホコリでたちまちマスクをしていてもたちまち目と喉がカユカユになる。アレルギー検査でホコリは6段階で3だったのにー!こんな中で暮らしていた自分に恐れ入る。 ↓
10月某日、ひたすら積み重なる「燃えるゴミ」袋たち。ゲラゲラゲラの山山山。気が狂いそうになりつつ片付けている途中、夕方のニュースでまたしてもイヤーな特集をしていた。テーマは「片付けられない女の引越し」。……「我が家はこれほどではない!」と自分に言い訳するが、他人から見れば目クソ鼻クソ、同じ穴のムジナであるに違いない。いやでも全然違うんだよ、ほんとっ! ↓
はーい、本日のゴミ山完成です。しかしこれをゴミ捨て場に運ぶのがまた大変! ↓
10月某日。ムフ―! やりました!ゴーーール!どうでしょう、我ながら惚れ惚れする美しさ。やればできる! でももう絶対やらないっ!いやーしかしこの部屋にテーブルがあったこと、忘れてたよ長年……。 しかしこの繰り返しがまだ寝室&リビング&台所と残っているのだった。なむー。 

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