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気持ちのいいことが、好き。「“官能”と“快楽”の回路を開くために」

2014.01.14 公開 ツイート

特集<気持ちのいいことが、好き。>

第1回 頭の中にたくさんの小部屋をつくる人生の極意 植島啓司/湯山玲子

ロマンティックラブを信じるって宗教と同じ

「不倫は義務」「愛人がいなければこの世は生きるに値しない」「セックスよりもキスが大事」などのメッセージに性愛をめぐる常識が覆されます。

植島 そうそう、官能の話です。
湯山 そうでした(笑)。
植島 官能の話をしだすと止まらなくなるんですけど、僕はこの本の中で、これからは女性が愛人を持ったり、人に官能全開で楽しんだらいいっていうことを書いてるわけです。でも、社会の風当たりは、ちょっと保守的になっていますよね。3.11もあったり、より官能、快楽への抵抗が強くなった気がするんですけどね。
湯山 そうですよね。本でも書かれていますが、家族っていう理想的な、まあヴィクトリア時代に確立したモラルですよね、女の人は貞節を持って一人の愛した男と結ばれて、できれば、その愛した男一人だけに自分の官能を開いてもらいたい。そして、ずっと愛し合うみたいなことをみんな信じてますよね。でも実際は、ほぼ崩れてるじゃないですか。なのに、そこをもう一回信じてみようって、何か変ですよね。どうしてそう思えるのかな?
私はそのロマンティックラブを信じるのはほとんど宗教だと思っています。ロマンティックラブ信者(笑)。信じる信じないは勝手なので、そういう宗教に入るって決めた人はいいと思うんだけど、それを信じるといいことがあるかといえば、そんなことはない。

矢口真理事件に見る女の怒り

植島 たとえば、矢口真里の事件とかあったじゃないですか。
湯山 ありましたねー。
植島 自分の寝室に男を連れ込むなんてって、テレビ全局が大批判でしたね。でも、自分の彼とのベッドに他の男を連れ込むなんて、最大の悦楽だろうなと思った。
湯山 私もいいなと思うんですよ(笑)。燃えただろうねって。
植島 でも、あそこまでヒステリックに批判することに、僕はちょっと抵抗感じたんですね。もしあれが、ちょっと違った、中谷美紀みたいな僕の好きな女優さんだったりしたら、表に立って、弁護してやろうと思うんですが(笑)。
湯山 私は、あれは女たちのまた別種の怒りだと思ってます。彼女はね、ママドルでメシを食っていたわけです。ママドルというのは、大衆が思うところの、いい家庭で、いい夫と一緒に、子どもがいるっていうことを演じ続けることでお金貰ってるってことですよ。だったら、それを貫いてくれよ、っていう感じ。だからね、職業違反みたいな感じでみんな怒った。
植島 でも、あのニュースは、矢口真里でなければけっこういい刺激的なニュースでしょう。
湯山 これをもし恋多き女優がやったとすると違う反応だったかもしれない。しょうがねえな、芸の肥やしだろうなっていう。でも矢口真理みたいなそこでメシを食っている人がやったから、女は許さなかったのよ。
植島 そうそう。だけど、何であんなにヒステリックになるかっていうと、やっぱり自分はできない。出会いがないか、魅力がないか、何か知らないけども、自分にはそういう旦那にウソをついてまで他の男の人とやるっていうチャンスがない。だけど、やってるやつがいるのがすごい癪に障るの。羨ましい。そういういろんな感情が絡まっていて、それで何かワーッとヒステリックになるんだろうなと思うんですよね。
湯山 そうですね。やっぱり日本は、横並びのみんな一緒の文化ですからね。インターネットの時代になって、さらに恐ろしい相互監視社会になってきましたよね。前だったら、やってしまって黙っていればいいんだけど、今は、やったことに関して絶対書かれて、それが永久に残ってしまう。だから、人から何も言われないような人生、ディスられないような人生を選びがちですよね。でも、それはイヤですよねえ。
植島 湯山さんと話してるとさ、何か僕なんか息がもつかなっていう感じ(笑)。
湯山 すみません。
植島 すごい速い平泳ぎやってる感じですよね。
湯山 わははは。早口だよね。大学の授業でもそう言われるんですけどね。「まあ、スピードラーニングだと思って、とりあえず聞いてなさい」と答えています(笑)。
植島 (笑)。
湯山 それにしても、みんな、安全安心って大好きですよね。高度資本主義社会って、絶対、安全安心に突き進むんですけれども、でも、そことうまく付き合わなきゃダメですよね。安全安心で行くんだったら、人生はずっと安全安心でしょうけど、たぶん生きてて、快感なんて一回も感じることなく死ぬんだと思う。
植島 やっぱりちょっと危険なこととか、楽しいことって、何かね、バイアスがかかったことは必要ですからね。
湯山 ほんとですよね。

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植島啓司

1947年東京生まれ。宗教人類学者。東京大学卒業。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学専攻)博士課程修了。シカゴ大学大学院に留学後、NYニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。著書に『快楽は悪か』(朝日新聞出版)、『男が女になる病気』(朝日出版社)、『賭ける魂』(講談社現代新書)、『聖地の想像力』、『偶然のチカラ』、『世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く』、『生きるチカラ』『日本の聖地ベスト100』(いずれも集英社新書)、『熊野 神と仏』(原書房、共著)、監訳『図説 聖地への旅』(原書房)など。

湯山玲子

著述家、プロデューサー。日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。自らが寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック(通称・爆クラ)」を主宰するなど多彩に活動。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッションなど、カルチャー界全般を牽引する。著書に『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『四十路越え!』(角川文庫)、『女装する女』(新潮新書)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)、『快楽上等!』(上野千鶴子さんとの共著。幻冬舎)、『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(KADOKAWA)などがある。

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