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2014.01.14

特集<気持ちのいいことが、好き。>

植島啓司×湯山玲子対談
「“官能”と“快楽”の回路を開くために」
第1回 頭の中にたくさんの小部屋をつくる人生の極意

湯山 玲子/植島 啓司

植島啓司×湯山玲子対談<br />「“官能”と“快楽”の回路を開くために」<br />第1回 頭の中にたくさんの小部屋をつくる人生の極意

 

あまりに官能的だった次郎の寿司

宗教人類学者の植島啓司さん。この対談は、朝日カルチャー中之島教室で植島さんの新刊『官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか』の出版を記念して行われました。

植島 湯山さんとは今日はじめてお会いするのですが、これまでお互いに会わなかったことが不思議なぐらいですよね。
湯山 共通の知り合いが多いですよね。
植島 ご存知の方も多いかもしれませんけれど、湯山さんのお父様は有名な作曲家、湯山昭さんで、皆さんの、もし娘さんとかご自身がピアノとか習っていたら……。

植島さんがいちばん会いたい人としてまず名前をあげられたのが湯山玲子さんです。本の執筆から音楽イベント、寿司パフォーマンスまでエネルギッシュに多彩に活躍中です。

湯山 絶対通ってますね。
植島 『バウムクーヘン』とかね。
湯山 『お菓子の世界』っていうピアノ曲集が有名で、まあ、それで大学に行かせていただきましたよ。重版の印税で。
植島 そうですか(笑)。
湯山 もちろんクラシックの、芸大出の人なんですけど、当時、テレビの勃興期で伴奏音楽もたくさんあったんです。冨田勲さんとかと同世代。『忍者ハットリくん』の音楽とかもつくってた。だから、その時、食えたんですよね(笑)。今は、芸大作曲科出てもなかなか食えませんけどね。いい時に作曲家になったってことです。
植島 『お菓子の世界』の何だっけ、『ポップコーン』でしたっけ。有名なやつ。耳について離れないですものね。
湯山 ありがとうございます。植島さんのバックグラウンドもお母様が踊りのお師匠さんだったんですよね。
植島 そうですね。うちは踊りをずっとやってたんで、兄弟みんな、お花の先生とか、要するに、まともな仕事に誰も就いてないんですね。
湯山 うちもそう。
植島 やっぱりラクを覚えちゃってるから(笑)。
湯山 そうそう、出発点が非常に育ちが悪いんですよ。育ちが悪いから、こういう本が書けるのかなっていう気がしますよね。

湯山さんが、日本各地の有名高級寿司店に単身突撃した、類まれなほど痛快な寿司屋をめぐる冒険譚です。

植島 たしかに。『女ひとり寿司』、あれが単行本としてはいちばん最初ですか。
湯山 そうです。
植島 素晴らしい本。お寿司屋さんに一人で突撃する。アイディアが画期的ですよね。
湯山 いまだと女の人がひとりで寿司屋に行くのも当たり前になっちゃったんですけど、あれ、書き始めたのが90年半ばぐらいですからね。
植島 もう10年以上も前。
湯山 「リトルモア」という雑誌に載せてたんですよ。いまはなくなってしまったんですけどね。その頃は、バブルの最後のあがきというか、寿司屋にまだまだ男社会っていうのがあったんです。一流企業のオヤジが出世した時に、自分の寿司屋に「こいつだ」と思う若い部下を連れて行って、その寿司屋のアティテュード、態度を教えていくっていう、男同士の美しい伝承がまだあった頃ですよね。その技の伝授の場に私がひとりで行くわけ。アウェーな感じで。みんなが、お呼びでないっていう態度でね。そのお呼びでないっていうことも受け取りながら寿司を楽しむっていう、マゾヒスティックなおもしろさがあったわけです。でも、いま、一流の寿司屋なんていうのもインターネットの食べログの時代ですから、全然ハードル低くなっちゃったんだけど、当時の男の牙城がおもしろくて書いてたのかな。
植島 冒頭が、「女はいま一人で地球上どこにでも行ける、しかし……」って(笑)。
湯山 「行けないところが一個ある。それは寿司屋だ」って。

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