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2014.01.27

第6回

大きな数を恐れないということ 後編

大栗 博司

大きな数を恐れないということ 後編

平成26年度の日本の国家予算は96兆円と過去最高規模になりそうと言われていますが、まだまだカワイイもの。地球上の大気の総重量とか、地球が公転する軌道の長さとか、世の中にはとてつもなく大きな数が存在します。コンピュータもない時代、人はどうやってこんな大きな数を計算してきたのでしょうか? そして、幻冬舎plusが掲げる「毎日を1%ずつ新しく生きる!」がとてつもなく壮大な野望であることが、ついに判明!

 

複利計算とネイピアの数

 銀行Aの定期預金が年利$100$パーセントだったとする。ずいぶん気前のいい話だが、計算を簡単にするためにそうしておく。$1$万円を預ければ、$1$年で$2$倍の$2$万円になるということだ。ところが、隣の銀行Bでは年利$200$パーセントという破格の定期預金を始めた。銀行Bに預ければ、1年で$3$万円になる。そこで、銀行Aに相談に行くと、「半年ごとに預けなおされてはいかがでしょうか」と言われた。

 年利$100$パーセントだとすると、利率を均等に割れば半年で$50$パーセント。そこで半年ごとに預けなおすと、半年後に$1.5$倍の$1$万$5,000$円。その半年後にさらに$1.5$倍になるから、1年後には$1.5 \times 1.5=2.25$倍の$2$万$2,500$円になる。確かに$1$年間据え置きで預けるよりも得だ。このように利息が利息を生むことを複利という。

 でも、年に$2.25$倍では、$3$倍にしてくれる銀行Bに負けている。では、半年ごとではなく、$3$カ月ごとに預けなおしたらどうだろうか。年利$100$パーセントなら、$3$カ月には$25$パーセント、すなわち$1.25$倍。$3$カ月ずつ$4$回預けるのだから、$1$年後には$1.25^4 = 2.44$倍になる。さっきは$2.25$倍だったから、さらに利回りがよくなっている。

 では、据置期間をもっと短くして、何度も預けなおしたらどうだろうか。$3$倍にしてくれる銀行Bよりも、有利になるのか。

 $1$年の間に$n$回預けなおすとする。利率を均等に割って$1$回の利率が$100/n$パーセントとする、つまり、$1$回預けると$(1+ 1/n)$倍になるとすると、$n$回預けると$(1 +1/n)^n$倍になる。預ける回数を増やしていくと、どうなるか。計算してみると、この表のようになる。

据置期間 $n$ $\left( 1 + \frac{1}{n}\right)^n$
1年 1 2.00000
半年 2 2.25000
3ヶ月 4 2.44141
1ヶ月 12 2.61304
1週間 52 2.69260
1日 365 2.71457
1時間 8760 2.71813
1分 525600 2.71828
1秒 31536000 2.71828

 預け入れの回数を増やすと、複利が増えていくように見えるが、$2.71828\cdots$よりは大きくならない。どんなにがんばっても、$3$倍にしてくれる銀行Bには勝てないんだ。

 $n$を増やしていくと、$\left( 1 + \frac{1}{n}\right)^n$ はある数に近づいていく。この数は、ネイピアの対数についての本の付録の表に書かれていたので、「ネイピア数」と呼ばれることもある。$n$を大きくしていったときに、極限の数が存在することを最初に明確に認識したのは、17世紀のヤコブ・ベルヌーイだといわれている。この数に、「$e$」という記号を使ったのはオイラーだ。極限の記号$\lim$を使うと、$$ e = \lim_{n\rightarrow \infty} \left( 1 + \frac{1}{n}\right)^n, $$

と表される。

 前回、円周率$\pi$は、整数を係数とする$N$次方程式($N=1,2,3,\dots$)の解にはならないという話をした。円周率のように、整数を係数とする$N$次方程式の解にならない数のことを、「超越数」という。ネイピア数$e$も超越数で、これは1873年にフランスのシャルル・エルミートが証明している。だから、$\pi$も$e$も、定規とコンパスで作図することはできない。

 この2つの超越数の間には深い関係がある。小川洋子の小説『博士の愛した数式』でも取りあげられた「オイラーの公式」だ。$$ e^{\pi i} + 1 = 0.$$

この式については、別な機会に虚数$i$を説明してから話すことにしよう。

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