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MTVが教えてくれたこと

2018.12.05 公開 ツイート

第4回

「ディレクターズ・レーベル」第一弾を飾った3人の映像作家。彼らの作品にしびれない…なんて無理 横川圭希

僕は今でも映像屋なので、映像屋のプロとして「どうしたら映像を少しでも楽しんでもらえるか?」という趣旨でここでの文章を書かせてもらっているのだが、まだ映像屋で第一線と言っても過言ではない場所で仕事をしている時には、逆に音楽に関係する、映像に関係する文章がお金になるなんて考えもしなかった。

もともと、「文章を書く」という行為に関しては、とてつもないリスペクトの念があり、書くこと自体が仕事の一部になることすら「ヤバい」と感じるくらいなのだが、ここ数年、なんだか行きがかり上、政治にも詳しくなったりしていて、時折、政治に関する文章を書くよう依頼を受けてきたのだが、ことごとくお断りしていた。なぜなら、ウッカリ後世に残ってしまうような言葉を考え出すなんて、自分には無理としか思えないからなのだ。

じゃ、映像はどうなのかと言えば、映像は文章や音楽に比べ、ちょっとだけ心理的に距離感がある。これが僕だけの感覚なのか、それとも多くの人がそう感じることなのかはわからない。ただ、映像が持っている人との距離感は映像をつくる上でとても大切なことだと思っている。

でも、天才たちはちょっと違うのかもしれない。距離感もなにもない、とにかく人の視覚情報を支配してやまない、人の記憶にその体験を深く刻み続ける人が時折出現する。その中でも特にすごく大事な瞬間だったのが2003年、アメリカで発売された「ディレクターズ・レーベル」(*1)というDVDなのだが、この謂わば「90年代ミュージック・ビデオ大全」のような作品集に関わった最初の3人のディレクターは、いずれも「天才」という言葉が相応しく、それぞれが別の個性を元に、それぞれモンスター級の作品を生み出し続けた。

「ディレクターズ・レーベル」シリーズ第一弾のBoxセット。バラでも買える。

この人たちの個々の作品に触れ始めるとこの連載30回分くらいの量になってしまうので、今後も事あるごとに彼らのことは書かざるを得なくなると思うが、まずは3人の名前だけでも皆さんには覚えておいてもらいたい。スパイク・ジョーンズ(*2)、クリス・カニンガム(*3)、ミシェル・ゴンドリー(*4)の3人。前回からのつながりで言えば、この人たちが世に出るのにはやはりマドンナが深くかかわっているし、デビット・フィンチャーとの親交も確認されている。フィンチャーの「ソーシャル・ネットワーク」のファーストシーンの撮影現場にスパイク・ジョーンズが立ち会っていたくらいなので、彼らはそれはそれはリスペクトしあっているのだろうな、ということは窺える。

ということで、今回はその中でも1曲だけ紹介しておこうと思う。Björkの「It's Oh So Quiet」という作品だ。

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MTVが教えてくれたこと

1981年8月1日午前0時に「観る音楽」の文化を作り出し、熱狂を巻き起こした音楽番組MTVは始まった。CM→MV(ミュージック・ビデオ)→映画監督という流れができ、あらゆる映像技術がMVで試されて行ったあの時代を振り返る。

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横川圭希

1966年生まれ。映像作家。ギタリスト。「ベストヒットUSA」などの音楽番組やMV制作にかかわる。震災直後からは東北の被災地や福島に入り取材と記録を継続。原発事故で環境中に大量に振りまかれた放射性物質から子供たちを守る「オペレーション・コドモタチ」発起人。市民メディア「confess」で映像配信、映像制作などを行っている。twitter:@keiki22 https://www.facebook.com/ConfessTokyo

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