クラブにスウィングを合わせるな

 銀次郎さんは、「クラブはゴルフをするための道具なのだから、クラブにスウィングを合わせるなんてバカなことは、あっていいはずがない。当然のこととして、自分のスウィングにクラブを合わせるべきだ」と説いている。

 スウィングは、常に一定というわけではない。運動不足や加齢により筋力が低下すればヘッドスピードも落ちてくるから、それに合わせてクラブを選択するべきだろう。

 アイアンで言えば、プロが使うマッスルバックの軟鉄鍛造(なんてつたんぞう)アイアンはたしかにカッコいい。しかし芯がネック寄りで高い位置にあるから、ダウンブローに入れてヘッドをボールの下へモグらせなければ、ボールは上がってくれない。

 若くて筋力があり、練習もしているゴルファーならそれもできるが、私のように還暦を過ぎたようなゴルファーにはかなり難しいアイアンといえる。

 それよりは、低重心でスイートスポットが広い、キャビティバックのアイアンのほうがいいボールを打てる確率が高い

 練習ではマッスルバックを使ってミスをわかりやすくし、いいスウィングを確認するのもありだが、実戦では易しいクラブのほうがアベレージはいいに決まっている。

 このように、自分の年齢・筋力・体格・ハンディ(腕前)などに応じて自分のスウィングに合ったクラブを選択するべきなのは、銀次郎さんの言うとおりだと思う。

 ここで邪魔になるのが“虚栄”だと、銀次郎さんは言う。とくに、少しゴルフのうまい人にその傾向が強いようだ。

「自分はシングルハンディだからロングアイアンを使えなくてはいけない」とか、「ドライバーのロフトは少なくとも9.5度」だとか、こだわる必要のないところにこだわっている人はたしかに多い。

 しかし、自分のスウィングでいいボールを出せるクラブがいいクラブなのだ。無理してロングアイアンなど使わず、ユーティリティや9番ウッドなどを選択すれば、ゴルフはかなり楽になる。

 ドライバーにしても、10.5度や11.5度、場合によっては12度や12.5度ロフトのドライバーのほうが安定していいボールを打てることが多い。

「女子プロのほとんどが9.5度を使っているから、10.5度を使うのは男の沽券に関わる」と思うのかもしれないが、そんな虚栄は一切捨てるべきだ。

 彼女たちは、最下点を過ぎた、ややアッパー軌道でリアルロフトを増やしてインパクトする技術を持っているし、その練習もしているのだ。

 銀次郎さんほどの名手でも、還暦に近づいた晩年には12度ロフトのドライバーを使っていたそうである。

シャフトの常識・非常識

 さて、虚栄を張らないでクラブ選びをするのは肝要だが、最近の技術革新はめざましく、昔は常識だったことが、今ではそうとも言えなくなったこともある。

 たとえば、「ヘッドスピードが速い人には硬いシャフト、遅い人には軟らかいシャフトが合う」というのが、ほとんどの人が思っている常識だろう。

 では実際、ウェッジとドライバーではどちらのシャフトが硬いのだろうか?

 ヘッドスピード的には、ドライバーのほうが圧倒的に速い。しかしシャフト硬さの指標となる振動数を測ってみると、一般的なウェッジの振動数は350cpm程度。これに対し、ドライバーは250cpm程度となる(数値が大きいほうが硬い)。

 シャフトは硬いほど細かく震えるため、振動数の数値は大きくなる。すると、フルスウィングで速く振るドライバーよりも、コントロールショットでゆるく振るウェッジのほうが硬いということになる。

 アベレージゴルファーだと、ドライバーからウェッジまで同じRシャフトで揃えることが多いが、そうするとドライバーが最も軟らかいクラブセットとなるのだ。

 ここで、「すべてのクラブを同じ感覚でスウィングできるのだろうか?」という疑問が生じないだろうか。

 よく、「定年退職を機に、退職金でドライバーからアイアンまでフルセットでA社の最新モデルを買い揃え、さらにキャディバッグやボストンバッグ、ボールやウェアまでもすべてA社製で揃えた」なんて人がいる。

 意気揚々とコースでお披露目となるわけだが、「ドライバーはいいけど、ショートアイアンでダフってばかり」とか、その逆に「アイアンはいいが、ドライバーがとっちらかっちゃってダメ」というのもよくある話だ。

 不思議なことに、すべてのクラブがダメということは少なく、「短いクラブはいいが、長いクラブはダメ」か、あるいはその逆かということがほとんどだ。

 そのせいばかりではないだろうが、ゴルファーによってウッドが得意な人とアイアンが得意な人に二分されたりもする。

 その原因は、“ドライバーが一番軟らかく、ウェッジが一番硬いシャフト”のセット構成にあるのではないか? ――ということで、番手によってシャフトの硬度構成を変え、振動数を合わせる研究も一部でされているらしい。

 研究過程では、女性に軽いSX硬度シャフトのドライバーを目隠しテストで打たせている。その感想を聞くと、多くの人が「振りやすい」と答えたようだ。

自分に合ったクラブ選びを

 最近の、とくにカーボンシャフトにおける技術革新には本当に目を見張るものがある。

 以前は、X硬度のような硬いシャフトにするにはカーボン繊維のシートを厚く巻くため、どうしても80g以上の重量にならざるを得なかった。だから、プロの使うXや2Xなどのシャフトは、よほど筋力のある飛ばし屋しか使えなかったのだ。

 しかし、今では50g台や40g台の軽量シャフトでもX硬度のバリエーションを選べるようになってきた。

 ウェッジの振動数が350cpmなら、ドライバーを300~350cpmに近づけても、ドライバーの総重量は300g前後。十分振り切れる重さにできるのだ。これがいわゆるカルカタ(軽硬)シャフトで、密かにブームになっているようだ。

 このような情報を得て、私もドライバーのシャフトを(決して虚栄ではなく)60g台のX硬度に交換してみた。

 人によって異なるのかもしれないが、私が1年近く使ってきた結果感じるのは、「芯にヒットしやすく、曲がらなくなった」ということである。また、これも人によると思うが、硬いからといって振りにくいとも感じず、むしろ振りやすかった。

 実を言うと、私は若い頃からずっとS硬度のシャフトを使ってきた。しかし、加齢によってヘッドスピードも3m/sぐらいは落ちたので、還暦を機にSRにしてセットを組んだ。

 その結果、アイアンはたしかに振りやすくなり、ボールも楽に上がるようになったのだが、ドライバーやスプーンはミスヒットが多くなったように感じていた。

 当然だが、シャフトが軟らかくなると、しなりが大きくなる。ヘッドの先が下がる縦のしなりであるトゥダウンも大きくなる。また、しなりが大きいとヘッドの重さを感じやすくなり、クラブが多少重く感じられる。

 おそらく、Xシャフトにしたことで、とくにトゥダウンが小さくなって軽く感じ、振りやすくなったことでミート率が上がったのではないかと思う。

 しなりを使ったほうが飛距離が出るというのが常識だが、Xシャフトにしても変わりはなかった。むしろ曲がらない安心感からか、5ヤード程度伸びるようになったかもしれない

 ドライバーがよくてアイアンがダメな人は、アイアンシャフトのほうをドライバーの振動数に近づけ、より軟らかいものに変えることも一考である。

 銀次郎さんは著書『もっと深く、もっと楽しく。』(集英社文庫)の中で、次のように言っている。

「私の場合、ウッドはパーシモンとか、アイアンは軟鉄の鍛造であるとか、こういう点には全くこだわっていない。シャフトは何でなくてはならないとも思っていない。余りに多くのゴルファーが難しいクラブを使いすぎているように思う。クラブは道具であり、ゴルファーにとってやさしく、ボールをコントロールしやすいものであればいいのである。いたずらに難しいクラブを使ってボールを曲げていたのでは話にならないのではあるまいか。ゴルフにとって虚栄はいらない」

 PGAツアーのブライソン・デシャンボーは、“ゴルフ科学者”のニックネームを持つ。独自の理論でアイアンの長さを一定にしたりしているが、昨年のツアー後半は大活躍だった。

 自分なりの考えでクラブに工夫を加えてみるのは、とても興味深いものだ。

 ドライバーはカルカタのX、フェアウェイウッドとユーティリティはS、ミドルアイアンはSR、ショートアイアンはRというセットもありではないか――。最近は、そんな風に思っている次第である。

今回のまとめ

1. クラブにスウィングを合わせるのでなく、“自分のスウィングでいいボールが出るクラブ”がいいクラブだと考えよう

2. シャフトの硬度・ロフト角・クラブ重量などで虚栄を張らずにクラブ選択しよう

3. 「非力な人に硬いシャフト」という非常識も、「長くてヘッドスピードが速いドライバーにはアイアン並みの硬いシャフトを」と考えると非常識でもなくなる

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