なにかってーと飯能市にいってしまう私とカッパ。
カッパとは、山仲間である友人の愛称です。地図が読める女・カッパは、助手席でナビをする役目なのですが、くるくるパーマをかけて頭が巨大化し、左方向の視界を妨げるという難点が。黒い塊がゆっさゆっさとよく揺れます。

私たちは、人生でペグの1本も打ったことがないのに、キャンプへの欲望が募り、テントとタープを購入してしまいました。デビューは公園で。ファミリーキャンパーに囲まれながら、説明書とYouTubeをにらみ、なんとか2人で立てることに成功。
次は自然のなかで練習しよう、というわけで、大好きな飯能市にやってきたのです。

向かうは名栗町。漢字だとほのぼのしているのに、声に出したり、ひらがなにしてしまうと急に凶暴になる地名「なぐり」。むかしむかし村にやってきた悪ダヌキをなぐって退治した、とかでしょうか。どうなんでしょうか。
この町には名栗川が流れ、川沿いにたくさんのキャンプ場があります。私たちが日帰りキャンプを予約したのは「古民家ファミリービレッジ」。

利用開始の朝9時に到着。
受付をするのは、名前のとおり古民家を改修した建物でした。養蚕業を営んでいたそうで、当時の道具も置かれています。軍手や着火剤などと一緒に、なつかしいパッケージの洗剤や石鹸、ゆたんぽ、ヒデキのブロマイドなんかも並んでいるユニークな売店。
施設内には、ウォシュレット付トイレ、シャワー、洗面台、炊事場、屋根付きバーベキュー場、バンガローなどがあり、濃い茶色で統一された外装が緑になじんで、おしゃれな雰囲気です。

私たちが利用する河原サイトは、本日貸切とのこと。オフシーズンとはいえ日曜日なのに、と不思議に思っていたのですが、話を聞いて納得しました。
この夏の豪雨で、河原の地形が大きく変わり、平らなところがほとんどなくなってしまったそうです。以前は川のそばまで車で降りられたのですが、今は駐車場から荷物を運ばなければいけません。
とはいえ、駐車場から河原はすぐ。わずかに残る平地を探し、ワゴンを借りて荷物を運びました。

空模様は、ザ・曇天。小雨もぽつぽつ。
雨をよけるためにも、まずはタープだ。付属のプラスチック製のペグでは頼りなく、石を重しにしてなんとか立てました。
テントはどうしよう。これ以上雨が降ってきたら、びしょびしょのテントを立てる自信も、上手にしまって乾かして保管する自信もありません。
テント、あっさり断念。

そこからは、おのおの、もくもくと食事の支度を。

私は炭をおこします。もくもくと。もくもくと。
若いじぶんバーベキューで炭をおこすのは男子と相場が決まっていましたが、あいにく同行しておりませんので、自分でやるしかありません。
コンロも自前。パタパタと折りたたむと書類入れのようなクリアボックスに収まる小さなコンロ。A4サイズくらいの焼き網ですが、2人ならばじゅうぶんです。

今日のメニューはカッパにおまかせ。大量の荷物をかついでいましたが、何をつくるのでしょうか。
まずとりかかったのは、燻製。カセットコンロを持参し、百均で買ったボウル2つと網一枚で簡易燻製マシンを作成。ウインナー、うずらの卵、プロセスチーズを、もくもく。

炭がいい具合になってきたところで、アルミホイルにくるんださつまいもを投入。
それからまずは景気づけにとオールフリーで乾杯し、骨つきラムをじゅじゅっと焼いて、がぶり。
あとは気ままにのんびりと、きのこのホイル焼きや、即席チーズフォンデュなどを。
チーズフォンデュは、カマンベールチーズをまるっとひとつ、うわっつらの皮?だけペロリとはがして、アルミホイルで器をつくり、火にかけます。とろとろになったら、パンや野菜をつけてぱくり。ワインが飲めないのがつらすぎる。

雨がぎりぎり降らない曇天は、私にとっては快適でした。
レーシック手術のせいか加齢のせいか太陽の光にめっきり弱くなり、晴れているとすぐに目がやられてしまうのですが、曇っていればずっと平気。いいじゃないか、曇天。

食べながらも常に何かをつくりつづけるカッパ。
今度はりんごを切って、カラメルと絡めて焼いてます。ホットケーキミックスを流し込んで、待つ。ぶどうジュースを温めて、シナモンなどのスパイスが入ったティーバックをしずめる。
できあがったのは、りんごケーキとホットワイン風の飲み物。はからずもインスタ女子のキャンプみたいなビジュアルです。なんともしゃらくさい。インスタはやってないけれど、一応ぱしゃり。老後に眺めて楽しもう。

もくもくともぐもぐしていたら、ふと視線を感じました。私たちを見ていたのは、川におりてきたタヌキでした。しゃらくさキャンプをうすら笑いにきたのでしょうか。ぷいと目をそらし、山に帰っていきました。悪ダヌキではなかったようで、なぐりあいにならず、よかったです。

すべてをたいらげ、撤収後、近くの名栗湖(有間ダム)をドライブしました。
山に囲まれる、曇天のダム。二時間ドラマで事件が起こりそうです。カヌーがぷかぷか浮いてます。気持ち良さそう、晴天ならば。

湖のすぐそばにある「さわらびの湯」へいくと、十月桜が咲いていました。10月中旬から1月初旬まで咲き、春にもまた咲くそうです。秋は、紅葉と桜のコラボレーション。
天然温泉でゆったりとあったまり、さらば名栗。

飯能でもくもくと飯を食べただけの一日でした。

*きょうの昭和* キャンプにうれしい便利な道具と、非売品のレトロな生活雑貨が混在する売店。ヒデキのハッピーブロマイドもあって感激。
*きょうのごはん* 女ふたり、炭をおこして羊の肉を焼く。炭のなかにあるアルミホイルのかたまりはサツマイモ。
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山田マチ『ひとり暮しの手帖』

これは、ひとり暮しの山田の手帖です。

実家をはなれて、およそ20年。
これまでも、きっとこれからも、ひとり暮し。
ここには、ひとり暮しのいろいろなことを書きつけます。
このなかのどれかひとつくらいは、あなたの心に届くかもしれない。
いや、ぜんぜん届かないかもしれない。
そんなふうな、
これは、ひとり暮しの山田の手帖です。