宿泊先の、「ラディソンブルプラザホテル ヘルシンキ」の朝食ブュッフェが充実していて、ついつい食べ過ぎてしまう。甘過ぎないシナモンロール、香ばしいライ麦、クロワッサンはバターたっぷり。チーズは固形からクリームタイプまで豊富に揃い、豊富といえばヨーグルトもいろんな種類が並んでいる。野菜のソテーには、マッシュルームがごろごろ。サーモンやハムやたまご料理。しぼりたてのオレンジジュースも、ベリーのジュースも本当においしい。ここの朝食ブュッフェを控えめするには強~い意志が必要である。

 だがしかし、短い旅だ。ホテルの朝食が、昼食兼用になってしまうのはもったいない。今回の旅では、レストランでおいしいランチを食べようと張り切っていたのに、おなかが減らないのは大問題である。

 というわけで、強い意志で朝食を飲み物とフルーツだけにして、4日目は気になっていたレストランでランチ。

 トラムに乗ってハカニエミで下車。ランチまで時間があったので、ハカニエミマーケットをのぞいてみる。本来は赤レンガのクラシックな建物なのだが、改装中で、すぐ隣の仮設の建物の中で営業していた。

 肉や魚や総菜を売る店、カフェやスープ屋。見覚えがある。マリメッコのショップは見当たらなかった。

 ミニチュアグッズの店もあった。ミニチュアグッズを集めているというわけではないのだけれど、かわいいのでつい買ってしまう。本物そっくりの鍋やフライパン。ケーキや、観葉植物や、電話やテレビ。自宅には、すでにミニチュアのダイニグセットがあるので、それに合うものを見つけると、付け足したくなってムズムズする。ポルヴォーのおもちゃ屋では、ミニチュアのひとり掛けソファと、サイドテーブル、裁縫セットなどを購入済み。ここ、ハカニエミマーケットでは、迷いに迷って、ボルヴィックとエビアンのミニチュアと、ワインセットのミニチュアをゲット。去年もこの同じ店で、小さな小さなナイフとフォークを買ったのだった。

 ミニチュアを買うってどういうことなんだろう?

 実物にそっくりな小さなものを手に入れて喜ぶ。それって一体なんなのだ?

 わたしの場合、原稿を書くためのパソコン机の一角に、ミニチュアコーナーがある。一時間原稿を書いている間に、たぶん、15回(いや、もっとかも)くらい、そのコーナーを眺めている。おそらく、眺めながら、ほんの少し、「そこに行っている」のだと思う。ミニチュアの小さなイスに座り、ミニチュアのテーブルの上に置いてある、ミニチュアのコーヒーを飲んじゃったり。そしてまた、現実の大きな世界に戻り、パソコンのキーボードをガチャガチャ打つ。ミニチュア好きの他の人も、同じ感覚なのだろうか。語り合ったことがないからわからないが、語り合わず、知らないままでいたいような気もする。

 ハカニエミマーケットを後にして、ブュッフェレストランへと向かう。出発前に「ヘルシンキの野菜がおいしいレストラン」で検索していたらヒット。自分で見つけたつもりでいたが、よく見たら持っているガイドブックにも載っていたのだった……。ハカニエミマーケットから歩いて5分くらいの『シルヴォプレ』という店である。

 ランチは11時から。込み合う昼時を避けて一番乗り。店の中央にズラリと料理が並んでいた。30種類くらいあっただろうか。様々なサラダや煮込み料理。キヌアが入った一品もあったし、オリーブや、ピクルスなども。

「好きなのをこの皿に取って、レジで計って(重さを)もらえばいいよ!」

 お店の人が早口の英語で説明してくれた。

「OK! I see!」

 理解できたことを伝えるときは、もう、とにかくこれでいくことにした。

 大きな白い皿にちょこちょこと料理を取っていく。お客さんもちらほら入ってきて、みな迷い迷い自分の皿に盛りつけていた。皿が埋まり、レジで重さを計ってもらうと千円ちょっと。

 窓側の席に座り、窓の外を見ながら食べる。マッシュルームにバジルソースがたっぷりかかったサラダ。おいしい! カリフラワーのトマト煮込みはちょっとスパイシー。おいしい! どれもこれもおいしい!

 改めて、不思議だなぁと思う。生まれ育った場所から、こんなに遠い国。その料理をおいしいと思うこと。おいしいって、不思議だ。

 ランチのあとは、トラムで「イッタラ&アラビア・デザインセンター」に寄り、一旦、ホテルで休憩してから、デザイン博物館へ。

 夜は黄色いパスタを食べた。黄色いパスタにつづく。

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