スーパーの袋の口を開けない季節がやってきた。

冬季のJJ(熟女)はパサパサに乾いているため、指先にハアッと息を吹きかけて、スーパーの袋の口を開く。「マッチ売りの熟女」のような仕草だが、JJならうまいことマッチを売りさばいて一儲けしそうだ。

そんなたくましいJJも寒い日々は気分が沈みがちなので、なるべく屋内に引きこもってダラダラ過ごすようにしている。冬将軍にやられて、死にたくなったりすると困るからだ。

少し前に実の父が自殺した。その件については「毒親の送り方」シリーズとしてコラムに書いたが、PVが大変よかったので「お父さん、自殺の記事がバズりましたよ」と仏壇に報告している。

うちは母もアル中と拒食症で早死にしたうえ、実は母の弟も自殺している。中二の大好きな「呪われた一族」とかじゃないだろうが(左腕が疼いたりもしてないし)メンをこじらせやすい家系なのだろう。
なので私はメンの健康を最優先に、自分に甘く生きている。

死ぬ前の父は「商売ができないのがつらい」「もう一度商売をしたい」と話していたそうだ。生粋の仕事人間だった父は、商売がうまくいかなくなったことで人生に絶望したのだろう。

そんな親父殿の死に様を見て「仕事を生きがいにすると人生詰むな」と再認識した。

定年退職して抜け殻になるおじいさんの姿はメディアでもよく報じられている。一方、ひとり暮らしの高齢男性の調査で「自分は今幸せだ」と答えた人々に共通するのは「会社であまり出世してないこと」なんだとか。
滅私奉公で働いてこなかったぶん、仕事以外の趣味や人間関係が充実しているのだろう。

父も仕事以外の趣味や人間関係は皆無だった。一方、我が夫は「明日にでも会社を辞めて、カッパを探しにいきたい」と言っている。
多趣味な彼はやりたいことが多すぎるため、不老不死になりたいそうだ。だったらカッパより人魚の肉や石仮面を探しにいった方がいいんじゃないか。

夫に「キミは私が死んでも楽しく生きていけそうだね」と言うと「妻に先立たれて空っぽになる人とか、意味がわからない」との答えで、頼もしい限りである。死にがちな一族出身ゆえに、夫のような人物に惹かれたのかもしれない。

父死亡の一報を受けた際「なぜ父は自殺したのかな…」とエモく呟く私に、夫は「1985年に政府がプラザ合意に同意したせいだろう」との見解を示した。「それで日本は円高になってバブル景気が起こり、やがて崩壊した。お父さんはその煽りを食らったんだろう」と。

たしかにバブル時代の父はイケドンで働いていた。その頃、TVではこんなCMソングが流れていた。

「24時間戦えますか!ビジネスマーン!ビジネスマーン!ジャパニーズ・ビジネスマーン!」

当時の牛若丸三郎太たちが、現在の抜け殻ジジイたちなのかもしれない。

20代のガールズに「かつての日本ではこんなCMが人気だったのじゃよ」と昔話をすると「めっちゃブラックですね」「こういう発想が働く人たちを苦しめるんですよ」「お前が24時間戦ってる間に誰が家のことをするんだ?と聞きたいです」との感想で「おっしゃる通りじゃのう」と頷いた。

若い人たちが「24時間戦うなんて冗談じゃねえ」とキッパリ言えるようになってよかった。と寿いでいた矢先、広告会社時代の元上司(50代男性)がフェイスブックにこんな投稿をしていた。

「この1年間で仕事に関わる知識や技術の向上のため、本で勉強したりセミナーに参加したりした人の割合はなんとたったの33.1%、という調査に衝撃を受けた。この国の働く人たちは学ばない。そんな状況に甘んじていては…うんぬんかんぬん」という文章を読んで「めっちゃ老人ぽいな」と感じた。

やりたきゃテメーが勝手にやれよという話を「仕事のために学ばないのはいかがなものか」と苦言を呈して、「オフの時間も仕事のために努力せよ」と説教する。この多様性の時代に、働く人たちは仕事人間であるべきと押しつける。

そりゃそんだけ仕事仕事言うてたら、仕事でつまづくと死んでしまうだろうよ、と思った次第である。

私が出会う若い人たちは多趣味でプライベートが充実している。観たいコンテンツや行きたいイベントが多すぎて、時間もお金も足りないと声をそろえる。
「大好きな趣味のために働いてる」「オタ活に金がかかるから条件のいい会社に転職した」といった話もよく聞く。

そもそもオフの時間まで仕事に使ったら、いつストレスを発散するんだ?という話である。

かくいう私も、かつては広告会社で洗脳されていた。「仕事のために心臓を捧げよ」という会社で、営業目標を外すたびに「何の成果も得られませんでしたぁぁぁぁッッッ!!」とギャン泣きする日々だった。メンがヘラって当然である。

結局27歳の時に心療内科で診断書をもらい、しばらく休職した後に退職した。あの時、さっさと辞めてよかった。無理して続けていたら、左腕が疼いて呪われた一族らしいエンドを飾ったかもしれない。

退職して15年たつが、いまだに当時の悪夢を見て汗びっしょりで目が覚める。そして「ベトナム帰還兵かよ…」と呟く。
ここでベトナム帰還兵という喩えが出るのが、『BANANAFISH』をリアルタイムでペロペロしていた世代である。ちなみに私の推しはシンだった。

そんな名実ともに中年の私だが、フェイスブックを見ていると「めっちゃ中年ぽいな」と感じることが多い。

ユーザー比率を見てみると、インスタやツイッターは20代が一番多いが、フェイスブックは40代が中心で男性がやや多く、3大SNSの中で60代のユーザーが最も多いとのこと。

シニアに人気のフェイスブックでは「ぎっしり長文」の投稿をよく見かける。WEBじゃなく紙世代なので、改行が少なく行間が詰まっているのが特徴だ。
かつ、つねに何かに感謝してワクワクして気づきと刺激をもらって成長の機会にするのも特徴である。

別のコラムでも書いたが、広告会社時代の男の先輩が「元同僚と飲んだ」という話をぎっしり長文で投稿していた。

「かつての戦友たちと盃を交わす。みんないい面構えをしていて、当時の熱い記憶が甦る。それぞれが素敵に成長していて、多くの気づきと刺激をもらった。俺もまだまだ勝負できる。未来はもっとワクワクする景色を見てみたい、己のミッションにコミットメントしていきたい、そんな覚悟を強くした夜。いやぁ、酔っ払いました(笑) 成長の機会をくれたFacebookに感謝」みたいな感じで。

私はこういうのを読むと「よっ、待ってました!成駒屋!」とビッシャビシャになる。若者は「目が滑る」と読まずにイイネを押すのだろうが、私は「またこんなイキのいいイキったやつ、お願いしますよ!」とイイネしている。

しかし書いた本人は「やだ俺って臭いの?」と加齢臭を払拭したいかもしれない。であれば、若者のラップブームに合わせてライムを刻んでみてはどうか。

「かつての戦友たちと乾杯。みんないい面構え万歳。熱い記憶が甦って感慨。酔っ払っていい塩梅。飲み食いしすぎて散財。翌日ゲロと下痢で疲労困憊」とか投稿すれば「和気あいあい、素敵なOne Night!」と若者がコメントをくれるだろう。

中年にラップはハードルが高いが、御年60歳の速水奨さんもヒプマイで活躍されている。もともと日本人は都々逸(どどいつ)とか好きだし、やればできるはずだ。

ツイッターは「いま会社着いたけどもう帰りたい」系のツイートが多いが、フェイスブックは仕事人間としての充実ぶりをアピールする投稿が多く、そこにも中年ぽさを感じる。

中高年の男性は特に「ジャパニーズビジネスマンは24時間戦う戦士であるべき」と刷り込まれて、つらくても弱音を吐けないんじゃないか。うちの父がツイッターに「もぅ無理」「マジ病み」とか呟ける60代だったら、死なずにすんだのかもしれない。

父の死を無駄にしないために…とかは全然思ってないけど、みんな死なないためにどんどん弱音を吐こう。そして「もぅ無理」「マジ病み」と思ったら、さっさと会社を辞めよう。

短命のジョースター家で唯一長生きのジョセフも言っている。「たったひとつだけ策はある!とっておきのやつだ!逃げるんだよォォォーーーーーッ」

また、めっちゃ昔の中国の偉い人も言っている。「三十六計逃げるに如かず」と。これは「ヤベーと思ったらゴチャゴチャ考えず逃げろ」という意味だ。

「逃げちゃダメだ」「逃げたら負けだ」「逃げるは恥だ」「逃げてどうする?」とかゴチャゴチャ考えてる間に、人は逃げる気力すら奪われる。
学習性無力感(長期間ストレスにさらされ続けた人や動物が、そこから逃げようとする行動すら起こさなくなる状態)に陥って。

漫画『うつヌケ』には、仕事のストレスから鬱病を発症して、何年も苦しみ続けた人たちが登場する。彼ら彼女らは「過去に戻れたら、自分を拉致してでも仕事からひきはがす」「なんとか死なずにすんだ理由は、仕事から逃げたことだ」と振り返る。

JJ仲間たちの多くも、鬱や適応障害で休職した過去を持つ。その後、彼女らは転職や異動をして今は元気に働いている。そして「若い頃はヘタに体力があったからねえ」と振り返る。

体力があるから無理がきいてしまうため、限界ギリギリまで働いて心がぶっ壊れる。
20代の私もゴムパッチン教に洗脳されて、「ゴムが切れるぐらい限界まで頑張らないとダメだ」と罪悪感を刷り込まれていた。

当時は「大変だけど、やりたい仕事だから」と己に言い聞かせていたが、今思うと全然やりたくなかった。
そもそも本当にやりたいこととは、金を払ってでもやりたいことだろう。今の私は何千万もらっても広告会社には戻りたくない。

20代の私はバリキャリぶっていたが、やりがい搾取される社畜だったのである。JJの多くはそんなナイトメア時代を経験しているため「ヤベーと思ったら即ダッシュ」と逃げ足の速さだけは負けない。

なによりJJは体力がないため「24時間戦えま…」「無理!」と食い気味に答える。24時間どころか8時間働くだけでもクタクタで「なるべく残業はしないし、有給もめいっぱいとる」「出世にも興味ないし、ぼちぼち働ければいい」と声をそろえる。

そして「40過ぎると肩の力が抜けて楽になったわ~」と語るのだ。そんな楽ちんモードのJJになる前に、仕事に人生を奪われてはもったいない。

なのでぜひ、若いお嬢さん方は逃げ足を鍛えてほしい。ヤベーと思ったら「仕事続けるの限界だな、旅に出たい玄界灘、読むと強くなるああ播磨灘Yeah!」と辞表を提出しよう。

今回のタイトルもライムを刻んだつもりだが、やはり中年にラップは難しかった。しかし四十の手習いでお稽古していきたい。
そして老後はデンデラでババア同士ラップバトルしながら、素敵なOne Nightを過ごしたい。そんなふうに夢見るJJなのであった、Yeah!

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「愛液が出なければローションを使えばいいのに」「朝からフェラしてランチで口から陰毛が現われた! 」とヤリたい放題だった20代。「男なら黙ってトイレットペーパーを食え! 」「ヤリチンほどセックス下手」と男に活を入れていた30代。子宮全摘をしてセックスがどう変わるのか克明にレポートした40代。10年に及ぶエロ遍歴を綴った爆笑コラム集。

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