Bojan89/iStock

 母がフェイスブックで活動しはじめて6年になる。昭和29年生まれ。現在64歳で、父と二人で田舎でつつましやかな年金暮らしをしながら、飼い犬を溺愛し、日々、EXILEと三代目J Soul Brothersの情報収集に燃えている。

 母がフェイスブックに登録したきっかけは、正月にしか会わない娘の私の投稿を覗こうとしたことだった。最初は自宅のパソコンから登録してみたものの、使い方もよくわからず「友達」は私だけ、アイコンもデフォルトのままで、自身がなにかを投稿することもなく、たまに私の記事に「いいね!」を押すのが精一杯。私はある意味で安心していた。ところがそのうちに、見ず知らずのはずの私の知人と勝手に「友達」になり、メッセージのやりとりをしていたことが発覚。相手の方はなにも悪くはないのだが、母が何をでしゃばり出すかわからないと思った私は、電話で懇々と「インターネットの恐怖」について説諭し、会話も「友達」もやめてもらった。しかし、これは序章に過ぎなかった――。

ニセの美女写真で友達800人つくった母

 ほどなく、会ってもいない他人をいちいち見なければならない世界に嫌気の差した私は、フェイスブックを退会し、母は取り残された。そしてアカウントはログインされないまま、ぽつねんと浮遊――するのかと思いきや、当時スマホを使いはじめた母は、暇にまかせてアプリというアプリを試しており、フェイスブックについても私がまったく知らないうちに使いこなすようになっていた。そしてある日のこと。母から果物が送られてきた。

『フェイスブックで知り合った農園の人からもらったから、おすそ分けするわ』

 え!? 驚いて、しばらくぶりに母のフェイスブックを探した私は、度肝を抜かれた。なんと「友達」が800人規模、フォロワーが400人規模に大増量しているではないか! ど、どういうこと? しかも、私がやってた時よりはるかに「友達」多いんですけど……。

 アイコンには、ネットで拾ったらしい身元不明の雰囲気ある30代ぐらいの美女の写真が堂々と掲げられていた。口元のところにハートマークをデコって、功名にニセ写真だと判明しづらいようになっている。職業は「販売業」。洋菓子店でスイーツを売っていることにしているようだった。なぜに! 若い頃、不二家のパートをやっていたことがあるからだろうか?

 とにかく、これが母のアカウントだと知らなければ、私だって「スイーツ屋さんで働く30代前半ぐらいの女子」と思っただろう。恐ろしいことだが、案の定、フェイスブック越しに母の「友達」になった男性たちは、完全に騙されて浮かれたコメントを書き込みまくっていた。

『むちゃかわいい!(´∀`艸)♡』『よっ、お姫様♪いつかお茶したいな (^ω^)』『美人ですね。どこのお店で働いているんだろう。お会いしたいなあ』

 やめてー! お会いしないでー! それはとてもキケンよーー!

 狼狽した私は、「でもちょっとオモロイ」と思ったのもあり、母には黙ったまま、日々母のフェイスブックを観察しはじめたのである。

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