ヘルシンキ観光はトラムが便利である。路線を乗り継げば、たいていの場所に行けるし、地元の人や観光客が交通手段に使っているわりには混み合わず、どの時間に乗っても座ることができる。

「デイチケット」を利用すれば、トラム、地下鉄、市バス、公共フェリー、すべて乗り放題。1日券~7日券まで選べるので、旅程と照らし合わせて購入するのがお得である。

 着いた日は徒歩圏内で済ませたし、二日目はポルヴォー。三日目からが本格的なヘルシンキ市内観光なので、朝のうちにデイチケットを買っておくことに。

 ホテルで朝食後、ヘルシンキ中央駅構内にあるキオスクで、残りの旅程分のデイチケット(5日券・約3500円)を購入する。

 さて、今日は動物園である。なんとヘルシンキには、海に浮かぶ動物園があるらしい。小さな島全体が動物園というのは、世界的にも大変珍しいのだとか。

 ヘルシンキ中央駅から、コルケアサーリ・ヘルシンキ動物園行きのバスもあるのだが、夏の間はマーケット広場から直行フェリーも出ている。せっかくなので、船で上陸しよう!

 さっそくトラムに乗り、港があるマーケット広場へ。デイチケットは、初乗りの際に入り口の機械にピッとすれば利用開始で、あとは携帯しておくだけでよい。

 マーケット広場には屋台が並び、観光客で賑わっていた。ささーっと見て、港のチケット売り場へ。さっき買ったデイチケットが使えるかを窓口で聞くと、動物園行きのフェリーは残念ながら別料金。

 港に「ZOO」と書かれたゲートがあり、ちょうど小さなフェリーが泊まっていた。歩いて向かっていると、係の女の人に「hurry! hurry!」と言われてダッシュする。わたしが最後の客だった。

 客室は一階と、屋根のない二階に分かれており、客は全員二階に座っていた。20人ほど乗っていただろうか。大半が子供連れの家族で、あとはカップル少々。ひとりなのはわたしだけだが、そりゃそうだわな、と思う。どこの動物園だって、こんな比率であろう。

 海の風が気持ちいい。さっきまでいたマーケット広場は遠ざかり、去年行ったスオメリンナ島も見える。ああ、旅って感じ~と思う暇もなく、10分で動物園の島に到着。ちか~。片道約500円。チケットは乗船後に買えた。

 船から降りるとすぐに入場券売り場があり、大人は2千円ほど。園内マップをもらい、のんびりと歩き始める。

 まずトラの檻がある。でっかいトラがたくさんいた。人懐っこいトラがいて、しゃがんでいるわたしの前に寄ってきて、ガラス越しに頭をスリスリ。かわいいなぁと見ていたら、地元の「イケてる風」の中学生グループが、スマホからの音楽を最大音量にして近づいてきて、トラをびびらせていた。

 ふと思う。ここが「ジュラシックワールド」の舞台なら、まっさきに恐竜に食べられてしまうのはこいつらに違いない。

 トラに別れをつげ、海が見える遊歩道を歩く。動物たちは決められた時間ごとに出てくるようで、空の檻もそこそこある。振り返ってみれば、どの動物の檻も広々しており、草がわさわさしげって自然な感じだった。自然な感じすぎて、姿が見えない、ということもあるのだが、動物たちにとってはストレスも少なかろう。

 静かだった。それでいい。どこの動物園にも音楽はいらない。動物たちは聴きたくないだろう。島だけど、森の中のようでもあり、波打ち際で家族がピクニックをしていた。

 ライオンもいた。トナカイもラクダもいた。クジャクは放し飼いだった。夜、小舟に乗って動物たちに悪さをしに来る人とかいないのだろうか。

 熊を見ながら食事ができるエリアがあるようなので行ってみる。熊の檻は、もはや小さな山だった。カフェのガラス越しから、熊がのしのし歩く様子が見られるというのに、フィンランドのファミリーたちは、みな外のオープンテラスで昼食を取っていた。熊より、太陽だよ! と、短い夏を味わっている。日本人のわたしは、熊ひとりじめの席でコーヒーブレイク。

 園内には本物の岩山もあり、人気がないところを通っていると、島は島でも無人島さながら。2時間近く見てまわり、再び船に乗りこむと、「無事脱出!」という文字が頭に浮かんだ。

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