民間企業経営からの叩き上げの実力派ブラックバーン

 2018年10月8日にポップスターのテイラー・スウィフトが自らのInstagramで公然とテネシー州・共和党の連邦上院議員候補者であるマーシャ・ブラックバーンを批判して、民主党のフィル・ブレデセンに投票するように表明した。LGBT問題や女性の権利に関するブラックバーンの議会での投票姿勢を問題視したものである。

 米国では洋菓子店がLGBTカップルへのウェディングケーキの提供を信仰上の理由から断ったことに対する訴訟が世論を二分する状況を作り出してきた。LGBTカップルが洋菓子店を差別を禁じる州法違反として州人権員会に訴えて勝訴、洋菓子店は閉店するほどの賠償金支払いを州に命じられたため、逆に洋菓子店が最高裁に訴え出て逆転無罪を勝ち取ることになった前代未聞の事件である。スウィフトはブラックバーンのような保守派勢力が洋菓子店を擁護したことを間接的に批判し、自らの民主党支持を表明する理由の一つとした。

 また、スウィフトが言うように、ブラックバーンは女性が雇用主に対して賃金差別訴訟を提起しやすくした法案である2009 Lilly Ledbetter Fair Pay Actに反対した。しかし、同法案について共和党側は、中小企業が社員を雇う際に女性を雇うリスクが突出して高くなるとそもそも女性の雇用自体が嫌厭されることを問題視した側面もあり、スウィフトらリベラル側の扇動者の一方的な理屈を垂れ流すメディアは最低だと思う。

 ハリウッドスターやセレブは格差是正を訴えると自らの暮らしと照らし合わせて白々しすぎるため、文化面(LGBTなど)でのリベラル性を理由として民主党を支持する風潮がある。スウィフト自身も約20億円もすると言われる別荘で豪華なパーティーを開いていることを知られており、今回のスウィフトの意見表明もその慣例に従ったものと言えるだろう。

 では、批判されたブラックバーンはどのような議員なのか。ブラックバーンは共和党保守派に属する女性下院議員であり、2016年大統領選挙ではその功績が認められてトランプ政権の政権移行チーム入りしたトランプ側近議員の一人だ。ブラックバーンは民間企業経営からのたたき上げであり、州上院議員を経験し、連邦下院議員に転出、連邦下院の副院内幹事を務めた実力派でもある。

 ブラックバーンらテネシー州の共和党関係者らはリベラルな州の法規制を嫌う企業を積極的に誘致し、テネシー州の経済活性化に貢献している。その結果として、テネシー州には日本企業の現地工場も多い。ブラックバーン自身もUS-Japan Caucusという日米友好議連に属しており、日産自動車らの進出を大いに歓迎する声明を出してきた。現在の駐日大使であるウィリアム・ハガティもテネシー州における対日誘致活動で活躍したビジネスマンであり、トランプ政権の移行チームの一員でもあった。つまり、ブラックバーンは日本企業にとっては対米交渉の命綱となるキーパーソンの一人と言って間違いない。

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渡瀬裕哉『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ―奇妙な権力基盤を読み解く』(産学社)

トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、その後も情勢分析の正確さから、日系・外資系ファンド30社以上の支持を得るアナリストが、2018年中間選挙、そして2020年米国大統領選までの未来を独自予測。日本への多大なる影響と、対応策について解析・提言。