今私の目の前に大量のグーグルプレイカードがある。
グーグルプレイカードとは、ソシャゲの課金などに使うカードだ。
3000円相当のグーグルプレイカードがあれば、ガチャを3000円分回すことができる。用途が局所的すぎるが立派な金券である。

何故そのグーグルプレイカードが大量にあるかというと、詳しいいきさつははぶくが「募グーグルプレイカード箱」で集めたものである。
募グーグルプレイカード箱とは、募金と同じくグーグルプレイカードを人々の善意によって集める箱のことである。
私はこれで自分のガチャに使うグーグルプレイカードを集めたのだ。

マザーテレサが「私(わたくし)を本気で怒らせましたね?」と「最終形態」に変身してしまうレベルの私利私欲である。
だが私も、批判は承知である、逆に言えば多少の批判など物ともしないぐらい、他人の金でガチャが回したいのだ

それに、募カード箱を首に下げた子どもをホストクラブの入り口状に並ばせて、誰とも目が合わないようにするのを難しくしたわけではない、箱は無人で設置した、ちなみに設置場所は「募カードしないと出れない部屋」ではない。
そんな技術があるなら推しカプがいるオタクの全員の夢「セックスしないと出れない部屋」を作るに決まっている。

逆に言えば、誰がそんな趣旨の箱に最低1500円はするグーグルプレイカードを入れるのだ、という話だが、結果は今私の前にある大量のグーグルプレイカードだ。

「何故」。募カードをした1人1人に聞いてみたい気持ちでいっぱいだが、それを聞くというのは「人の善意を疑う」という最もやってないけないことである。

集めたカードが自宅に届くまでは、それはもう楽しみで、メールの返事を出さないことに定評がある私が「それよりカードはまだか?」という要件のみのメールを担当に送ったほどだ。

そして今、そのカードが目の前にある。
おそらく、いくら集まったのかみんな気になっているだろう。
正確には数えてないし、数字を出すと税務署がカチコミに来るかもしれないので、明言はしないが、「Fate/Grand Order」(FGO)で最高レアのキャラを1人宝具5(最大レベル)に出来るぐらい集まった、といっておこう。
ただしこれは「標準的な運を持っていた場合に限る」である。
ちなみに私の宝具レベル5の土方さんは17万だが、これは「運が割と良い方」と言われているので参考にしてほしい。

大金である。
しかし逆に言えば、これだけ大量のカードかき集めても「1人レベルMAXに出来るかどうか」なのだ、改めてFGO、ソシャゲの恐ろしさを感じる
大きさを例える時東京ドーム何個分などと言われて正直ピンと来ないのだ、実際目の前に東京ドームを二つ三つ並べてもらって、はじめて「でけえな」と思うのである。

課金が止まらないのは、クレカ決済などでこの「物量」が見えないせいもある、現金でカードを買い、銀を剥がしてコードを入力して初めて課金ができるという、とても平成末期まで残っていて良いとは思えないシステムだが、むしろソシャゲに残された最後の良心がこの「グーグルプレイカード」だ。

試しに私は「土方さん相当」のグーグルプレイカードを重ねて見た。
グーグルプレイカードの最高額は5万なので、やろうと思えば4、5枚ぐらいで「土方さん」は表現できるのだが、今回集めた「みなさんの善意」で土方さん作ったところ、それは「100枚近くのグーグルプレイカードの山」となった。
「人の善意でできた土方さん」尊み大爆発とはこのことだろう。

だが、私はこの「尊み」を前に悩んでいる。
もちろん、この善意を大切に使わなければと思っているわけではない、そんなことを考える奴は最初から他人からグーグルプレイカードをせしめようと思わない。
気が大きくなって、股間反応が「半勃ち」程度のキャラでも回し、さらに中途半端に深追いするという典型的「尿漏れ残尿ガチャ」を繰り返した結果、いつの間にかなくなっているに決まっている。

だが募カードした方も「これで途上国に学校を作ってほしい」という気持ちで募カードしてないと思う、しているとしたら、入れる場所も入れる物も全部間違っている。
自分の金が「クシャミした時に出るやつ」になるのは覚悟の内だろう。

問題はこのみなさまの善意という名の残尿が出きった後である。間違いなく「生活水準」が上がってしまっていることだろう。

この「生活水準の上昇」こそがあぶく銭の一番の怖さである。
旅行が趣味と言う人間でも、週一で海外に言っているという人は少ないだろう

どんな趣味でも自分の金と時間が許す範囲でやらなければならず、それが人によって「月一でドバイ」だったり「年一で日光」だったりするのだ。

だが「年一日光」の人間が、たまたま「月一ドバイ」を1年やれる金を手に入れてしまった場合、それがなくなっても、日光に戻れない場合がある。

「生活水準を下げられなかった」と言うと、高い飯や良い服を買うのがやめられない贅沢病のように聞こえるが「推し」も生活水準の一つである。
今までAとBというキャラのグッズは全部買っていたが、諸事情でAしか買えなくなったとして、そう簡単にBのことが諦められるか、という話である。

これは最初からAしか買えなかったなら良い、だが一度でも「AとB両方買えていた時」があると、片方諦めるのが難しくなる。

こう考えると、ネガティブに聞こえる「諦める」という行為は、無理や周りに迷惑をかけること承知で「諦めない」よりずっと苦渋かつ大人の判断である
人は「諦める」という行為を、必要以上に恥じるべきではない。

簡単に言うと私はこの大量のカードにより「フル勃起の時だけ課金する」から「半勃ちでも課金する」という「股間がドバイ状態」になってしまう可能性が非常に高い。

「無職だけど股間がドバイ」というのは、字面だけ見てもヤバい。

あぶく銭による生活水準上昇を止める一番の方法は「1億当たったら1億の家をすぐ買う」という風に「生活水準が上がる間を与えず全部使い切る」ことである。

よって、この「みなさんの善意」が一瞬で消えるキャラを今すぐ出してほしい。

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