「前例がないから」ビジネスパーソンなら誰しも一度は聞いた事があるこの言葉。確かにその企業や社会の伝統や文化、通例を尊重することは大事です。しかし「できるわけがない」「そんなの非常識だ」そんな思いにばかりとらわれていると、みすみすビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。数々の外資系企業を渡り歩いた交渉のプロが「常識」について論じます。

スタンダードは自分で作れ(写真:iStock / Ridofranz)

フランス人流「常識」のつくり方

 日本のマーケットを切り開きにくる外国人と仕事をしていると、彼らの多彩な交渉術に感心します。皆、日本人の文化に敬意を払い、尊重しようとする気持ちは持っていました。

 しかし、「新しいスタンダード」にすると決めたものに関しては、日本の常識がどうであろうと、決して曲げない強さを持っていました。

 簡単に周りに染まらないその姿勢は、結果的に彼らの存在を際立たせ、常識がひっくり返ったときに、多くの味方を引き寄せることになりました。

 むしろ、非常識な提案で目立つことを狙っていたと思えるほどです。

 とある開発案件で、行政の所有する土地を購入するために契約交渉をしていたときのことです。「購入代金を支払った後に土地が引き渡され、その後工事を始める」というごく普通の条件が行政側から提示されました。

 私も、妥当な提案だと思いました。

 ところが、上司のフランス人は、代金のほとんどを工事前どころか「店舗が開店して1週間経過後に支払う」という常識外の条件を提示したのです。

 これには、相手担当者だけでなく私もびっくりしました。これではまとまらない、と説明しましたが、まったく譲りません。相手が行政だけに柔軟な対応を望むべくもなく、話し合いは合意には至りませんでした。

 しかしその後のフランス人の日本人説得活動と、その集中力は見事なものでした。

この記事をシェア
この連載のすべての記事を見る

★がついた記事は無料会員限定

本谷浩一郎『フランスの悪魔に学んだ3秒仕事術
2018年8月24日、弊社刊、四六並製232頁、本体価格1300円+税。Amazonでのご購入はこちらから


5000億を動かす、悪魔の言葉術とは?
数々の外資系企業を渡り歩き学んだ
交渉・プレゼン・発想・会議メソッドを明かす究極の一冊!

(内容より抜粋)フランス人流「常識」のつくり方/絶対音感的コトバで人を操るズルい外国人/CA流「殺しの3秒」で相手を射抜け/5分前勝負メモからプレゼンを組み立てろ/トップに立ちたければ好き嫌いを優先しろ/壺を割るフレーズ/1万分の1の発想をつくるツボかけ算/ワン・コメントシートで小学生並みの発想スピードへ/ブラック質問で本音を引き出せ/MCが使うキラートーク/神チェックリストでズレを防げ