4月には南北首脳会談、6月には米朝首脳会談と、北朝鮮情勢が大きく動いた今年、初沢亜利さんは写真集『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)を刊行しました。
 非核化をめぐる米朝協議は行き詰まっていると伝えられてきましたが、9月18日からは今年3回目の南北首脳会談が開かれる予定、第2回米朝会談開催の可能性も急浮上してきました。
 私たちは38度線の北の隣人を、どう見たら、どう理解したらよいのか、初沢さんにお話をうかがいました。

平壌の女性の洋服はここ数年で驚くほどカラフルに

──前回までのお話をうかがうと、『隣人、それから。』の写真も見え方が変わってきます。前作の『隣人。38度線の北』は、「あんな暗黒国家みたいな北朝鮮でもふつうに生活をしている人がいるんだな」と感じた人が多かったと思いますが、今回は「抑圧されることもなく安心して未来に希望を持って生活を楽しんでいる」ように見えてきます。

初沢 さすがにそこまで言われると「そんなことはない」と反論したくなりますが(笑)、経済発展による変化は確実にありますね。女性の洋服はすごくカラフルになったし、男性でもピンクのシャツなんか着ています。2010年くらいはデパートで売られている衣類のほとんどは中国製でしたが、ここ数年国産の衣類が急増し、おしゃれを楽しむ若者が増えました。首都である平壌限定の変化とはいえ驚きです。経済制裁の影響は果たしてどうなっているのか?と目を疑いたくなる。

 人民の中に体制への不満を持つ者はいるでしょうが、日常生活は少しずつ良くなっているので、みんなが「耐えている」という感じではないですね。発言も、政治的なもの以外は自由ですし。

 ただ、地方はここ8年で7カ所回りましたが、やはり大きくは変わっていない。それでも中朝国境の都市・新義州なんかでは新型のタクシーを随分見かけました。少しずつ改善している、と言って差し支えないと思います。

──写真集のあとがきによると、ホテルのロビーが禁煙になっていたという変化もあったようですね。

初沢 外国人が利用する高級ホテルだからそうしたのかとも思ったんですが、北朝鮮人自身の健康志向も徐々に高まっているようです。ちょっと前までは、男は全員が喫煙者、女は人前では絶対にたばこを吸わないという昔の日本みたいな喫煙事情でしたが、最近は禁煙を始めた男性もいるようです。

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初沢亜利『隣人、それから。38度線の北』

北朝鮮の都市部や地方で普通に暮らす人々を撮った前作から5年。核実験、金正男暗殺と史上最悪の緊張から一転、北朝鮮と韓国は4月末に南北首脳会談、その先には米朝会談と宥和ムードが高まる大変化の時代に、写真家は再び訪朝を繰り返した。眼前には急増した交通量、富裕層の台頭など経済制裁の効力を疑う景色。男女は堂々と逢引し、同性同士も手を繋ぐなど一般市民にも穏やかな空気があった。報道では見えない日常からあの国を考える、必読の一冊。