高校3年生になった僕に、初めて恋人ができた。

 その子とはそれまで、話したことなんてなかった。学校の中で見かけて、凄く可愛いなって思って、要は一目惚れというやつだ。高校デビューを果たし調子に乗っていた僕は、まわりの仲間の行ける行けるという声に乗せられて、ほぼ初対面なのに、体育館の裏にその子を呼び出して、告白することにした。

 彼女がやってきた。白い光が、体育館のコンクリートの壁をまぶしく照らしていた。僕の前に立つ彼女は、なんだか透き通っていて、僕とは違う世界に住んでいるひとのように思えた。

「あの・・・ずっと好きだったんだ」

 そう伝えたとき、すぐ心の中で、あっ俺いま嘘ついた、と思った。だって好きになったの最近だもん。ここ2、3ヶ月ぐらい。まっいいか。とにかく僕はこの子が好きなんだ。そして、恋人というものをつくることで、僕の高校デビューはひとつの完成形を見るんだ。

 彼女は静かに微笑んで、「ありがとう、少し、考えさせてくれないかな」と言った。僕はほんのちょっとだけがっかりしたけど(調子乗ってんな~)、「ぜんぜん待つよ」と答えた。

 あの頃は、期待に胸が溢れていたんだ。世界はどこまでも広がっていて、その先ではきっとたくさんのパレードが行われていて、その空はどこまでも、青く澄んでいたんだ。

 告白から一週間ぐらい経った放課後。教室で仲間とダベってたら、その子の親友の女の子が近づいて来て、僕にこう言った。OKらしいよ、って。

 てなことを現在37歳の俺が、当時を思い出しながら書いてんですけど。なんか、青いわ。いや、より正確に言うならば、蒼いわ。今の僕が暮らしている世界は、薄汚れていて、どの道も必ず行き止まりにたどり着くことが分かり切っていて、なんだこれ困ったな、ぜんぜんワクワクしねえ。でもね、バンドの機材車でいろんな街に移動するじゃんか、移動は高速道路を使うんだけど、途中の名前も知らない山とかトンネルを抜けた先の道の向こうに、突然、小さな街がふっと現れることがあって。一生、行くことはないであろう、誰かが暮らす、その街。僕はそんな街を見るたびに、ああ、ここにいつかの自分がいるんだな、と思う。輝く恋をして、何も知らない瞳で世界を見つめる、あの頃の自分が。つまり、変わったのは世界ではなく、僕なんだ。

 話は戻ります。晴れて恋人ができた僕は、初デートに挑戦するわけなんですが。これがもうね!地獄だった!!!!まあ初デートどころかそっから先も地獄なんだけどな!!!!!長くなってきたから次回書くわ。

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